特別寄稿
2026年5月1日掲載
このラヂオの来歴は分かっていますが、付属したであろう取扱説明書は残っておらず、型名も銘板を見てわかったようなことです。ナス型真空管を5本使ったものであること以外、回路や仕様はまったくわかっていませんでした。そのため、ステップを進めるには、本体をよく観察して記録に留める、考える、想像する、調べる・・・ などが必要でした。
蓋をあけると3極管UX-201Aが5本と、3つのバリコン、トランス2つが見えました。2-V-2形式のTRF(Tuned Radio Frequency)ストレートラジオであると見当をつけました。電源はなく電池で動かすようで、5VのA電池、45Vや90VのB電池を直接つなぐBinding Postsがついていました。
真空管は固定ピンが付いた古いタイプであり、UVソケットに刺してあります。全体の配置からすると、写真右上が高周波増幅の初段、左上が2段目、左下が検波、さらに右下に向かって低周波2段増幅されるようです。検波管のソケットはクッション付きです。

上面
シャーシ下面には緑の絹巻き線で巻かれた空芯コイル3つと可変抵抗器2つ、ペーパーコンデンサと思われる2つの直方体の部品がありました。パネル面右下(裏面写真では右上)にはフィラメントのみを断続する電源スイッチがありました。また、パネル面左下のつまみは、アンテナコイルに挿入されているリンクコイルの角度を調整するつまみの様でした。
部品間の接続はすべてシャーシ裏面で行われていました。線材は、絶縁チューブをかぶせたすずメッキ銅線のような線が使われていました。真空管のソケットやバリコンの端子への配線はすべてビス止めで行われており、接続点では銅線の先端にアースラグのようなものが半田付けされていました。

裏面
ラヂオ全体を目で見る限り、ねじの頭の傷や不要なネジ穴などはなく、配線修正のために半田を溶かしたようなあとや余分な半田痕もありませんでした。全体に修理・部品交換や改造は行われていない、出荷時の状態を保った品物ではないかと感じました。
真空管はRCA製で、5本がすべて同じものでした。出荷時の状態そのままで、後年になって差し替えられることも無かったのだろうと想像できます。フィラメントは5本とも生きていました。バリコンの接触やコイルの断線もありませんでした。
ただ2つある低周波の段間トランスのうち、検波段と低周波増幅初段の間のトランスの2次側巻き線が断線していることがわかりました。なぜ断線したのかはわかりませんが、この故障がこのラヂオが使用を中止された原因かもしれません。しかし、トランスさえ修復できれば動く可能性がありそうと感じました。
まず、実物から回路図を起こしました。
図面を起こしていくと、まさに2-V-2であることがわかりました。部品点数は驚くほど少ないです。
2つある可変抵抗器は、フィラメントと、2段目コイルに接続されていることが分かりました。後者は2段目コイルのQダンプ用と思われます。高周波増幅段には中和回路は組まれていないので、これとフィラメント電圧を調整することで発振防止の調整をするのだろうと思えました。特許を避けた構造でしょうか。
また、検波段のグリッドにあるはずのグリッドリーク抵抗や並列コンデンサが見当たりませんでした。検波はこの時代の一般的なグリッド検波ではなく-Cを併用したプレート検波なのだろうと思えました。
ただ、-Cの結線は浮いていました。グランドとの間にパスコンが入っていましたから、外部から何らかの電圧をかけるのだろうと想像できる一方で、外部との-C接続用のBinding Postsはついておらず、オリジナル設計で-Cがどのように扱っていたのかよくわかりませんでした。
トランスは、Facebookを利用して調べました※6。英語圏の情報網は大したもので、すぐに、このトランスはThordarson社製であることを教えてもらえました。同じ外観のトランスがeBayに出品されていることも知りました。これを購入して修理しようかと迷いましたが、如何せん古いもので動く保証がなく断念しました。

そこで西崎電機さんに相談しましたら、すぐに新しいトランスを巻いてくださり、もとのトランスをこれに組み替えて、まったく同一の外観に仕上げることができました。いつもながら西崎電機さんにはお世話になりっぱなしです。

巻きなおしてもらったトランス
-Cの扱いが分からないのでどうしたものかと悩みましたが、この回路なら-C回路を直接アースすればフィラメント電圧の半分の電圧でグリッドバイアスがかかると気づき、思い切って実験してみることにしました。低周波段から順に前段に向かって動作確認する方針を立て、5VのDCアダプターなど適当な電源を用意して攻めます。まず低周波段は問題なし。低周波発振器をつなぐと、簡単にスピーカーを鳴らしてくれました。大きな音で鳴ります、立派です。

実験中の様子
次は高周波増幅段を含めた全体の動作です。中波帯のソースとして手元にAM帯のワイヤレスマイクを持っているので、それに低周波発振器で変調をかけてやってみることにしました。そうしたら、信号が十分強いせいか、バリコンを少し動かしてみただけであっけなく変調音が聞こえ、全体を通して一応動いていそうだということが分かりました。
しかし、実際に放送を受信して音を出すのは面倒でした。特に放送局の周波数へのダイヤル合わせです。大きなダイヤルが3つもあり、如何にもQが高そうなコイルですから、少しの離調でも聞こえなくなる可能性があるからです。
そこでまたワイヤレスマイクを登場させ、NHK第2放送の周波数でワイヤレスマイクが聞こえるようにダイヤルを合わせることにしました。そうしましたら、その過程でビート音が聞こえました。これは第2放送とワイヤレスマイクの周波数とのビートに違いないとワイヤレスマイクを止めると、何と第2放送の声が聞こえました。
しかし、高周波増幅段はピーピーギャーギャーと容赦なく発振します。わかっていてもこの発振はどうしようもなく、昔の人はどうやってこのラヂオのご機嫌をとったのだろうと思ってしまうぐらいでした。その後数日かかってフィラメントの電圧を微妙に調整したり、2段目コイルに並列に入っている可変抵抗を動かしたりして、どうにかこうにか安定に聞こえるようになりました。
適当なアンテナをつないで少しずつダイヤルを回してみると、周波数の低い方から、NHK第1放送、NHK第2放送、ABC、MBC、OBCと5局も受信できました。
周波数を変える時にはフィラメント電圧も同時に変える必要があります。高い周波数ではフィラメント電圧を幾分落とさないと発振します。一方、低い周波数ではその状態ではゲイン不足になり、音が小さくなってしまいます。そのためフィラメントの電圧を上げるわけですが、ゲイン低下はフィラメント電圧を上げただけではカバーし切れず、もう少しRFのゲインが欲しいとコイルへの並列抵抗を少し大きくせざるを得ませんでした。受信周波数が低い場合には並列抵抗を少し上げても発振はしないようでした。
そのようなことで、選局操作のためには3つのダイヤル操作に加えて、2つの調整つまみも同時に触らなければならないことが分かりました。再生式のラジオでも周波数が高い場合と低い場合では再生用バリコンを調整する必要がありますが、このラヂオはそれどころではなく、5つとも調整する必要があるのです。技術的なポイントを理解していても、操作は相当に面倒です。
それにしても、このラヂオから音が出たのは何年ぶりでしょうか・・・ これはもうAmazing!としか言いようないと非常に感動しました。
その後、専用電源機を作りました。最近は良い音で安定に鳴ってくれています。

専用電源機
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