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特別寄稿

SU(エジプト)からオンエア

JH6HZH 木原敏也

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はじめまして。SUからオンエアができましたので、何かのお役に立てればと思いこの記事を書きました。読んでいただけるだけでも嬉しいです。

出国前

今から3年ほど前にさかのぼります。私はエジプトに滞在することになりました。できれば無線もやりたいと思い、情報を集めようとしましたが、あまり集まりません。これまでの海外運用は、アメリカ、オーストラリア、ミクロネシア、シンガポールなどがありますが、どこも事前にまたは現地についた時には無線の免許が取得できていました。情報もそれだけ多くありました。ところが、今回はエジプトのアマチュア無線の免許取得方法の情報が分からない状態でした。そこで、とりあえず日本のアマチュア無線の従事者免許証と無線局免許状の英文証明だけを持って行きました。

手がかり

エジプトに着いて数か月後、何とか生活ができるようになり、(水が合わずにおなかをこわし、げっそりなりましたが)、少し余裕が出てきました。ずっと無線のことは頭にありましたので、ネットで調べたところERASD(The Egyptian Radio Amateurs Society For Development)(日本アマチュア無線連盟のようなものでしょうか)のホームページを見つけました。そこへE-mailを出したりFacebookに飛びメッセンジャーを使ったりして、「見学したい」と連絡を取りました。


ERASDのホームページ

初無線クラブ訪問

ERASDの会長サイードさんからすぐに返事がきて、たいへん好意的に「見学OK」をいただきました。後日の金曜日、自宅から地下鉄を乗りつぎ約1時間、目的のイルマイヤの街へ行きました。約束の時間より早く着いたので街をぶらぶらしていたら、見知らぬ人から名前を呼ばれました。なんとクラブのメンバーのアハマドさん。お互いに面識はありません。私はとっても驚き、「写真も送っていないのになぜ私だと分かったのか」と聞いたところ、「ここには東洋人が少ない。日本人が見学に来ることを知っていたので東洋人の顔をしているのですぐわかる。」と。なるほどたしかに東洋人はほとんどいない。


Omar SU1OK、Ahmed SU1AS

エジプトの言語はアラビア語の方言であるアンミャーですが彼を含めてクラブのメンバーは英語が分かるので助かりました。近くのカフェでお茶をしてクラブのある建物へ。クラブは大きなビルの一室にありました。会長のサイードさんが迎えていただきました。見学の後、私がエジプトで無線の運用ができるかどうか尋ねてみました。すると、手続きをすればこのクラブ室から運用ができるということでした。しばらく見学をし、クラブを後にしました。

入会

その手続きとは、クラブに入会すること。それによりクラブのメンバーとしてオペレートできるそうです。数週間後、①パスポートのコピー、②ビザのコピー、③日本の従事者免許証の英文証明のコピー、④日本の無線局免許状の英文証明のコピー、⑤800エジプトポンド(約5000円)をクラブへ提出し、入会のお願いをしました。その後クラブのコールサイン「SU0ERA」及び、「SU/JH6HZH」のコールサインでオペレートが許されました。

初交信

ただ、運用はクラブの場所でクラブの施設に限定されます。自分で無線機やアンテナを持ち込んだ運用はできません。さらにクラブのメンバーが横にいる必要があります。それでもエジプトから運用できることはとても嬉しかったですね。さて、クラブの設備ですが、無線機はIC-718FRA、アンテナはビルの屋上にダイポール、出力は100Wでした。

カイロから少し離れてはいるものの、運用場所はビルが立ち並ぶ街の一角、おまけにTV、携帯電話その他いろいろな電波が飛び交っています。ほとんどのビルの屋上は大小のパラボラアンテナが10個以上はありました。テレビは1000チャンネルほどありこれには驚かされました。国内ばかりではなく近隣の国のテレビ局の電波が入り、日本のテレビ局はNHKワールドを見ることができました。

運用はほとんど14MHz。他には7MHzも運用できるが交信できる可能性は低い。14MHzですら受信時のノイズレベルだけでシグナルは8ほどあります。これより強い局でなければ受信できません。SSBでCQを出すこと数回、ヨーロッパの局が応えてくれました。ついにエジプトで交信成功、とても嬉しかったですね。立て続けに数局と交信できましたが、ノイズに埋もれて厳しい状況もあり、あまり続きません。CQを出してもなかなか聞こえてきません。この部屋はビルの中にあることもあり、ネット状況があまりよくありません。自宅に戻りクラスターを調べてみると、ヨーロッパの局が上げてくれていてありがたかった。

その後の交信

日本は土日が休みですが、エジプトは金土が休みです。クラブのミーティングは毎週金曜日午後2時から2時間ほど。基本的にここから運用できるのはこの時間帯のみになります。でも、時々会長のサイードさんは私の希望に合わせて土曜日にも部屋を開けていただきました。ありがたい。その後、平均すると月に1度1時間ほどSSBとCWを運用させていただきました。ヨーロッパの強い局と交信でき、ほとんどクラスターに上がっていました。エジプトはサッカーが盛んです。男の子は学校でも路地裏でもサッカーボールやペットボトルなどを蹴って遊んでいます。2018年、エジプトはサッカーのワールドカップに出場しました。それを記念してクラブではSU18FWCの特別コールで交信をし、私も参加することができました。


SU18FWCを運用する筆者

個人コールの取得

赴任して半年ほどが経ち、個人コールの取得手続きを行いました。まず、ERASDの会長サイードさんからNTRA(National Telecom Regulatory Authority: 日本の総合通信局に近い)へ、①セカンドオペレーター承認書類、②その他申請書4種類を送っていただきました。数週間後私本人がNTRAへ出向き、①クラブからもらった書類に必要事項を記入、②アパートの契約書のコピー及び原本、③アパートの電気料金領収書のコピー及び原本、④パスポートのコピー及び原本、⑤日本の従事者免許証の英文証明のコピー及び原本、⑥日本の無線局免許状の英文証明のコピー及び原本、⑦210エジプトポンド(約1300円)を提出し、質問を受けました。そして帰る際には原本はすべて返却していただきました。アパートの契約書や電気料金の領収書まで提出するのには驚きました。日本でもOMの方から、「戦後は無線局の免許を取るためにたくさんの種類の書類を出さなければならなかった」と聞いたことを思い出しました。


NTRAの建物

審査され免許が下りるまでに3カ月ほどかかり、免許状は郵送されると聞いていたのでのんびりと待つことにしました。ところが、4カ月たっても郵便で送ってこないので、サイードさんを通じてNTRAへ問い合わせていただいたところ、すでに許可が下り、郵送されていることが分かりました。今度は郵便局へ行き、問い合わせをしたのですが、結局わからずじまいでした。その後、NTRAは免許状を再発行していただけることになり、再び同じ書類を提出し、今度は手渡しでいただくことができました。コールサインはSU9TKです。コールサインの希望はできません。SUはエジプト、9は外国人用、TKは私のイニシャルという粋な計らいです。

後でわかったことですが、ほとんどの人のコールサインのサフィックスはイニシャルになっていました。条件としてクラブのセカンドオペレーターであることです。つまりクラブの設備を使ってのみ交信が許されたわけです。それでも自分のコールをいただいたのですから、たいへん嬉しくCQを出しました。やがて自分のコールで初めて日本の局と交信ができたきは思わずガッツポーズが出て、サイードさんと喜びを分かち合いました。後で聞いた話ですが、私の信号は日本に届いているそうですが、エジプトにいる私が日本の信号を聞き取れなかったようです。ノイズが高く受信は大変厳しい状況でした。私を呼んでいただいたみなさん、申し訳ありませんでした。


Said SU1SK、筆者SU9TK

FT8

いまではFT8のモードは主流になっていますが、当時はまだほんのちらほら、主流はやはりCWやSSBの時代でした。FT8のかなり低いレベルでも受信できる特徴を生かせないかと考えました。サイードさんは自宅からFT8をやり始めましたので、クラブの設備にFT8を加えることには賛成でした。ただ、インターフェースがありません。私は日本へ一時帰国をしたときに自宅に持っていたUSBIF4CWを持参し、クラブに寄付をしました。そして何とかセットはしたものの回り込んでいたのか、なかなか連続した交信ができない状況が続きました。私にとってはFT8は初体験。ネットで調べながら細々とFT8の運用をしました。日本ともスケジュールを組んでみたものの、残念ながら交信には至りませんでした。


FT8の運用

クラブに訪れる外国人無線家

エジプトはアフリカの中心となる都市でヨーロッパからも近く、特にカイロはヨーロッパからの外国人がいます。その中にはアマチュア無線をしている人もいて、このクラブにも時々外国のアマチュア無線家が訪れます。中にはHST(High Speed Telegraphy=高速電信術)で世界でも有名なTomが半年に1度ほど来ていました。後に聞いた話ですが、彼はインターフェースに詳しくクラブ局からFT8がスムーズにできるようにセットしたそうです。


Jose SU9JG、Tom SU9TH

ジャンボリー大会 (ボーイスカウト、ガールスカウト)

カイロでは毎年1回、ジャンボリー大会が2泊3日で行われています。クラブとしてこの大会に多くの人的援助をしているようでした。その中にアマチュア無線の体験や電子回路の体験などもありました。急ではありましたが、私も「災害時における日本のアマチュア無線の活動」についてネットで集めた映像をもとに話してみました。大変興味を持っていただき熱心に聞いてくれました。エジプトは不安定ながらもネットがかなり浸透しています。Facebookをしている子供もいますが、ネットに完全に依存しないことも大切であることを理解し、アマチュア無線の免許を取ろうと思ってくれたら嬉しいと思いました。


災害時の活動を話す筆者


ジャンボリー大会

自宅からオンエアを目指して

次の望みは、自宅に無線機を置きファーストオペレーターとして交信することです。必要な書類は、①申請書類4種類、②セカンドオペレーターの免許状、それにセカンドオペレーター申請の際に提出した書類と同じものです。簡単にできるかと思ったのですが、大きな問題がありました。最初にファーストオペレーターを申請する時には、セカンドオペレーターの時に使用した無線機と同じものでなければいけなかったのです。つまり、IC-718FRAを所持する必要がありました。

ネットで調べたり、日本の無線の仲間に調べてもらったりしましたが、このFRAは手に入りそうにありません。フランスまで行って購入することも考えました。うまく購入できたとしてエジプト国内へ運ぶことができるかという問題もあります。以前、日本から荷物を送った時には、荷物がエジプトに着いてから税関検査で1カ月ほどかかりました。持参して持ち込んでもおそらく同じくらいの日数がかかって検査されるだろうということでした。税関から無線機を引き取る際はNTRAからの許可証を持参する必要があることも分かりました。この時点でエジプトに滞在するのは残り10カ月ほど。随分悩みましたが、この申請は諦めることにしました。ちなみにかなりの年月を要するものの、他の無線機やUVも段階的に免許が下りるようです。ただ、そのためには実績と信頼が必要なようです。残念!


IC-718FRA

その後のSU

2021年、世界中でCOVID-19が猛威を振るっています。私は日本に戻っていますが、エジプトも同じように感染者が増加し、マスクを付ける文化がないエジプトでもマスクをしているそうで、場合によってはマスクをしていないと罰金だと聞きました。おそらく無線の運用にも支障があるかと思いますが、サイードさんはFT8によく出ています。私も日本へ帰ってから彼と交信ができました。クラスターにもよく上がっていますのでSU1SKで検索してみてください。たくさんの方がエジプトと交信できることを願っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。なお、この記事で説明した手続き方法などは2018年ころのものです。よく変更がありますのでご了承ください。

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次号は 10月 1日(金) に公開予定

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