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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その39 山岳移動運用電源について

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

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皆さま、明けましておめでとうございます。昨年は新型コロナウィルスの影響で行動の自由が奪われ、アマチュア無線の移動運用や各種イベントも自由にできない日々が続きました。今年はなんとかコロナ禍を克服し素晴らしい一年にしたいものです。

さて、今回は山岳移動用として使っている電源を紹介してみたいと思います。山岳移動では可能な限りの軽量化が必要です。荷物の中に占める電源の重量は相当大きなものです。このためこのバッテリーの重量を軽減することは大きなメリットになります。そうは言っても、持っていくリグの最大電力で、できるだけ長時間運用をするためにも小さすぎるバッテリーでは意味がありません。このバランスをとることがとても重要になります。また最近は携帯端末の高機能化により、バッテリーそのものも大きく進化しています。そのような観点で私のバッテリーを今後数回に渡って紹介してみようと思います。

まずは最新のUSB PDバッテリーを紹介します。これは最近、SOTAで山岳移動運用を行う局の間で話題沸騰中の電源です。一見すると単なる携帯用のモバイルバッテリーのようです。


この電池にはUSB-CのPower Delivery (PD)のポートがあり、ここを通じて充電と供給を行います。


USB-Cの規格は最大DC20V、100Wとなっています。実際、このUSB PDバッテリーは最大60Wです。

通常、携帯端末などを充電する場合には、このUSB PDポートにUSB-Cケーブルを接続しスマホなどに接続して充電しますが、その充電速度が早いことが売りになっています。

これは接続するスマホなどの携帯端末とこのUSB PDバッテリーが直接USB-Cケーブルを通し通信し、電圧を決めているようで最大20Vまで電池から取り出せます。今までのUSBケーブルでは規定の5Vしか取り出せませんので、これはとても画期的な規格だと思います。ちなみに私の持っているアンドロイドのスマホをこの電池につなぐと9Vで充電していました。このため5Vで充電するよりも早くスマホが充電できるということになります。


このようにUSB PDバッテリーを使って充電する機器が通信機能を持っている場合に使用するケーブルには両端USB-Cのケーブルが使われます。しかしその他にも、下の写真のような片端USB-Cのプラグで反対側は丸型の端子(5.5/2.5mm)がついているものもあります。これをトリガーケーブルというようで、このケーブル自体がUSB PDバッテリーと通信する機能を持っています。このケーブルを取り換えることで出力電圧が変えられます。なおこの丸型コネクターだとIC-705にちょうど合っていますので、そのまま使うことができます。


USB PDバッテリーやUSB PD充電器と通信を行って電圧を決定し供給していますので電圧ごとに専用のケーブルがあります。


私がトリガーケーブルとして購入したのは12V用と15V用です。

それでは少し動作を見てみましょう。まず単にUSB-C端子で出力電圧を計ってみると5Vが出力されています。通常のUSB端子と同じです。


ここに12Vのトリガーケーブルを接続してみます。


するとこのように、USB PD電源からの出力は12Vになりました。出力端をテスターで見てみるとちゃんと12Vとなっています。


同様に15Vも試してみました。電池からの出力電圧は15Vになっています。


テスターで電圧を計っても15Vが出力されています。


IC-705の場合は先ほども説明したようにトリガーケーブルの丸型端子が2.5/5.5型ですのでそのまま使うことができます。IC-705の場合は12Vでも出力10Wで連続運用ができます。

またこのUSB PDバッテリーには通常のモバイルバッテリー用の充電器も使えますが時間がかかります。専用のUSB PD充電器だと短時間で充電できます。


この理由も先ほど同様にUSB PDバッテリーと専用の充電器の間で充電電圧を取り決めて最適の20Vになっているためです。


さて、ここまでくると多くの方は電圧を変えているならどこかにインバータがありノイズが出るのではないかと思われる方もいると思います。これは電池の機種、ケーブルの規格、使用しているリグの種類にも依存すると思いますが、私の実験してみた結果ではIC-705へのノイズの影響はほとんどありませんでした。144MHzでは若干ノイズフロアが上がる程度のノイズが出ているようですが他のバンドでは全く影響はありませんでした。ノイズについての実験はこちらをご覧ください。寒さで活舌が悪いビデオ映像ですが(笑)

https://youtu.be/YJoAoU9e1ms

HF~430MHzまでIC-705との組み合わせで、CW, SSB, FMを取り交ぜて5時間運用しても最後まで12Vを保ち、連続10Wで運用できました。重量は370グラム、素晴らしい電池が出てきたものです。なお、今回私の購入したUSB PDバッテリーは最大電圧20Vのものですが、取り出せる最大電圧はバッテリーによって異なりますので購入の際は希望の電圧まで出せるものか確認が必要です。

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