新製品インプレッション
2024年5月1日掲載
アパマンハムのムセンと車の第18回で、第一電波工業から新発売になりました「CPATU」の事を書きました。製品が発売になったと聞き、さっそく入手してみました。
またCPATUを入手したのと同時に、前から欲しかったアイコム純正のATU「AH-730」も入手しました。今回はこれら2つを組み合わせて、実際に使ってみたレポートを書きたいと思います。
CPATUは宅配便にて送られてきました。
梱包された状態と中身を出した状態
まず箱を手にした感想は「軽い!」です。ちなみに取扱説明書には2.5kgと記載がありました。同社で形のよく似たHFマルチバンドGPと比較すると、ラジアルがありません。その分軽く出来ているようです。
次に特徴的なのが、本アンテナとマストを取り付ける「CP取付金具セット」です。同種のものはV/UHF用のGPで見ていますが、本アンテナのそれには、絶縁リングが付いていました。これはマストから電気的に浮かせるためのものです。
黒い部分が絶縁リング
本アンテナとATUとの接続には、付属の給電ケーブルを使用します。取扱説明書には、「付属の給電ケーブル以外は絶対に使用しないでください」と書いてあります。本アンテナは共振型なので、この給電ケーブルもアンテナの一部として各ハンドに同調させている訳です。
給電ケーブルは同軸の網線が、片側が浮いています。ということは、ファラデーシールドになっていると推測されます。
給電ケーブルの様子
給電ケーブルの構造はしっかり出来ていて好感が持てますが、少し長さが短いと感じました。ATUとアースは最短距離でつながないといけないことは、以前から書いてきましたが、私の設営場所ではATUを地面に水平に置くと、付属の給電ケーブルではギリギリATUまで届かず、苦肉の策で、ATUを壁面に立てかけて使用することで、なんとか接続できました。
壁面に立てかけたATU(AH-730)
現状、給電ケーブルの長さは1.2mですが、もし設計上可能ならば、出来ればエレメント側を調整できるようにしていただき、給電ケーブルの長さに自由度があればいいなと思いました。給電ケーブルの長さに合わせてエレメント側を調整するという具合です。給電ケーブルが長い分にはなんとかなりますが短いと、今回のようにスムーズに取付できないケースが出てくるからです。
では、実際に取り付けてみましょう。
私の設置環境は5階建てマンションの5階です。ルーフバルコニーがありますので、その柵にBS/CSアンテナの取付基台を流用して取り付けました。
実際に建てたCPATU
取付の様子。マスプロ電工のBSアンテナ用基台を流用して取り付けました
先ほども書きましたが、給電ケーブルが短いためAH-730は壁面に立てかけて使用することにしました。
アースには以前から使っている、アルミ板を短冊状(幅30cm全長3mを2本)にしたものに接続しました。ちょうどAH-730の下にあるアルミ板がアースになります。
もしこれからアースを設置するのであれば、10m程度のワイヤーを3本ほど、ATU設置面にはわせるのも良いと思います(本アンテナの説明書にも記載があります)。
アースについては、書き出すとこれまたキリがないのですが、私が今まで経験したポイントを述べさせていただくと、次のようになります。
なお、アースの効果は設置条件により異なるため、100%これでOKという決め手がありません。バーチカルアンテナをイメージしてSWRだけに捉われず電界を考えながら配置して頂くと良い結果が得られるかもしれません。効果の確認はFT8等でのS/Nレポートも参考になると思います。
世の中に出回っている情報を見ると、間違っていると思われるものも見受けられますので、注意したいものです。
CPATUの設置が完了し、まずはSWRを測定してみました。無線機はIC-7300、ATUはAH-730です。ATUの同調動作が完了した状態での各バンドのSWR値がこちらです。
仕様範囲外の1.8/1.9MHzでも十分使えるSWRを示しています。これはAH-730が短いワイヤーでも1.8/1.9MHzにオンエア出来る能力に助けられているのかも知れません。SWRが下がっても実用になるかどうかは、今後確かめていきたいと思います。
実際に使うことになった場合、気になるのは受けや飛びなどの実力です。この比較的短いアンテナで、実際にどの程度なのでしようか。まずは現用のロングワイヤー(全長22m+CG AntennaのCG-3000)と切り替えて、受信信号をSメーターで比較するという、原始的な方法(hi)でやってみました。
するとバンドによって多少の際はあるものの、7MHzではSメーター読みで1つ程度下がる程度でした。これならば、エレメントの展開スペースに限りがある場所での設置や、エレメントを釣り竿などでの仮設ではなくしっかりと設置したい場合などのメリットのほうが大きいと思えました。
実際に電波を出してQSOしてみました。7MHzにおいては、現用のロングワイヤーにヒケを取らないレポートが貰えました。国内の相手ならほぼ599が貰え、応答も一発でした。WARCバンドである10/18/24MHzでも問題なく同調が取れました。
また、ロングワイヤーよりもCPATUのほうが、偏波面の影響が強く出ているようです。特に電離層反射ではないグランドウェーブ圏内では、その傾向が強いようです。実際の運用でも、ロングワイヤーではカスカスの信号でもCPATUではハッキリと受信でき、先方からのレポートもCPATUのほうが良かったです。
今回は時間がなくて他のATUとの組み合わせでのテストが出来ませんでした。ですので、前述した1.8/1.9MHzでも同調した実力については、参考程度に考えておいてください。逆に50MHzのSWRが他のバンドと比較して良くないですが、良くないといっても使えないレベルではなく、私の立地条件での固有の結果と思っています。
組み立ててみて思ったのですが、コンパクトなので移動用に使っても面白いかな? と思っています。ただ部分的に改造したほうが使いやすい気がしました。さしあたってタッピングビスでの固定している部分をなんとかしてみたいと思います。
なお、固定での運用で使用する場合は将来撤去するまで分解しないので、パイプとパイプがつながる部分に、導電グリスを塗ったほうが良いかと思います。
導電グリスの例 (ナガラ電子工業のテナメイト)
私のところでは、22m長のロングワイヤーを現用しておりましたが、ハイバンド(特に21MHz)で、うまくマッチングが取れていませんでした。しかし、このCPATUでは、共振型のためかハイバンドでも問題なくマッチングが取れました。
今後、1つのATUでロングワイヤーとCPATUを使い分けてみようかと考えています。なお、この使い方はメーカーが推奨している使い方ではありませんので、実際に試される方は、あくまでも自己責任でお願いしますね。
これからハイバンドのコンディションが良くなってきますので、皆さんの運用のアイデアになれば幸いです。
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