特集7
2023年2月1日掲載
ニュージーランドにはSHF帯を運用するアクティブなアマチュアグループがいます。だいぶ前の話になりますが、2005年頃は、ニュージーランドの首都ウェリントンのある北島のアクティビティがクライストチャーチのある南島よりアクティブでしたが、昨今は逆転して南島の方がよりアクティブになったようです。
運用している周波数帯は、33cmバンド(925MHz)、23cmバンド(1296MHz)、12cmバンド(2400MHz)、9cmバンド(3400MHz)、6cmバンド(5760MHz)、3cmバンド(10368MHz)、1.2cmバンド(24048MHz)、それに0.6cmバンド(47088MHz)で、最近では76GHzバンドと122GHzバンドでの運用も増加しています。
写真左: ウェイン・D・ノールズ氏(Wayne D Knowles, ZL2BKC 2022年12月29日サイレントキー)が同月に開催されたVHFコンテストにて144MHz/430MHz/24GHzを運用しているシーン。
写真右: グレッグ・ストルツ氏(Greg Stortz, ZL1GSG)が設計、製作した24GHzのパラボラアンテナ。写真の右端には、10GHzまでの運用可能なマルチバンドビバルディホーンフィードを搭載した直径1mのディッシュの一部が写っている。場所は、ルアペフ山のトゥロア側。遠くの山はタラナキ山(エグモント)。2022年12月のVHFコンテストでのシーン。
主にニュージーランド(ZL)とオーストラリア(VK)のアマチュア無線家は、23cmバンド以外は、ほとんどのバンドでトランスバータを使っています。そのトランスバータのIF(Intermediate Frequency; 中間周波数)に使われているリグはアイコムのIC-910HとIC-9700が多く、稀にケンウッドのTS-2000Xが見受けられます。
トランスバータは、VK5EME(オーストラリアのMini-Kits)のキットやSG Labs、Kuhne (DB6NT)の製品で、ほかには古いものですがDown east Microwaveのユニットなどが使われています。また、DMC/Stratex DXRシリーズ/MAS®機器などの元商用機器を再利用しているものもあります。ニュージーランドのアマチュア無線家の間ではこの無線機の内部構造は自作機のヒントになるようで人気があります。
ニュージーランドとオーストラリアの間では、Wayne(ZL2BKC)のZL PLLやVK3XDKの2.4GHzから10GHzまでのトランスバータキットなど、マイクロ波の分野での設計が進み、主流製品の代わりとして利用されています。
アンテナは、23cmと12cmでは、八木アンテナあるいはループ八木アンテナ、それ以上のバンドではディッシュとホーンが使用されています。
トランスバータのIFとして用いるリグはこれまでFT-817が用いられていましたが、最近ではIC-705の人気が高いようです。
IC-705をトランスバータのIFとして使用する際、例えば周波数のセット、相手局の方角やQSOのタイミングなどマイクロ波における独特の運用操作を減らすことができます。またIC-705のスクリーンに表示されるウォーターフォールは、周波数がずれている局を見つけるのにたいへん役立ちます。ニュージーランドにもIC-905が入ってくるとマイクロ波帯のバンドがもっとアクティブになると思います。
ニュージーランドのアマチュア無線家の中には、ニュージーランド(ZL)とオーストラリア(VK)間の通信距離に対して国内記録と国際記録の両方を保持している人がいます。
ニュージーランドの首都ウェリントンからオーストラリア大陸まで2000kmもある
ニュージーランドの北島から南島へ、いろいろな周波数帯を使って交信を達成したアマチュア無線家の中には、ZL1IU(23cmと12cmバンドでZL⇔VK間の交信)、ZL1TPH(12cmと9cmでZL⇔VK間の交信)、ZL1GSG(3cmバンドでEME)、ZL1SWW(23cmバンドでZL⇔VK間の交信)、ZL1AVZ(12cmでZL⇔VK間の交信)、それにZL3RC(3cmバンドでZL⇔VK間の交信)の人たちが含まれています。
ニュージーランド国内の記録としては、ZL1TBG(33 cmバンド - 620km)、ZL1TPH(1.2cmバンド - 240km)、ZL1SWW(6cmバンド - 622km、0.6cmバンド - 68km;筆者)、ZL1GSG(3cmバンド - 622km)、ZL2BKC(76GHz - 17km)などがあります。
ニュージーランド北島のロドニー岬(GL: RF73IR)にて運用中のシーン。前方左側がフランク・デュナトフ氏(Franc Dunatov, ZL1SLO)、テント内奥のラップトップPCの後ろがサイモン・ワット・ウィネス(Simon Watt-Wyness, ZL1SWW)。6mから24GHzまでの全バンドで運用中。
ニュージーランドは丘陵地帯が多いので、マイクロ波帯では有利にも不利にも働くことがあります。マイクロ波の伝搬は地上近くではいろいろな問題があるため、高い場所に住んでいる幸運なアマチュア無線家でない限り、ほとんどの運用は小高い丘の上などで行われます。
このため、ほとんどの運用はコンテストの週末に行われ、多くのマイクロウェーブ愛好者は見晴らしの良い小高い丘などから電波を発射します。
ロドニー岬でコンテスト局ZL1AA(クラブ局)がマークH ツインネーム氏(M H Twiname, ZL1BNO)とサイモン・ワット・ウィネス氏(Simon Watt-Wyness, ZL1SWW)が運用中。運用バンドは、6mから47GHzまで。標高375m(GL: RF73IR)。フェンスを支える杭がたくさんあり、そこにアンテナを取付けることができる。
これらのコンテストは2ヶ月ごとに開催されますが、あるコンテストはマイクロ波バンドを除外し、6m(50MHz)バンドから6cm(5760MHz)バンドに限定して開催されます。またコンテスト中は、7~11バンドを一人で運用する局もあり、その間たいへん忙しい時間を過ごすことになります。
時々、このマイクロ波バンドでアクティビティが低下するときがあります。このときを狙って次のコンテストのために無線機やシステムが正常に動作していることを確認します。
<参考資料>
NZART(New Zealand Association of Radio Transmitters Inc.)が公表するVHF/UHF/SHFにおける通信距離の記録は、下記サイトに「NZ VHF/UHF/SHF Records 2022」として掲載されています。
https://www.nzart.org.nz/info/vhf-records/2022-nz-records
筆者紹介
Simon Watt-Wyness, ZL1SWW
https://www.qrz.com/db/ZL1SWW
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