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今月のハム

JA3JLB 中楠實さん

2024年5月1日掲載



電気、電波との出会い

大阪府大阪狭山市在住の中楠實(なかくす みのる)さん。1946(昭和21)年に世界遺産の熊野古道中辺路が通る、和歌山県西牟婁郡中辺路町(現 田辺市中辺路町)で生まれ、小学校6年生の時に4歳上の兄より「初歩のラジオ」を参考に鉱石ラジオの作り方を教わったのが、電気や電波のことに興味を持ち、触れた最初であった。その後中学校の理科倉庫にあった教材の真空管並三ラジオキットを夏休みに組み立てたが、山奥であったため10mくらいの電線をつないでようやくNHKラジオを受信できたという。

1962年に和歌山県立田辺高校普通科へ進学し、アマチュア無線クラブ(JA3YAZ)に入った。クラブの部屋にあった「無線と実験」などで真空管の事などを学んだという。またクラブの部屋にはTX-88Aや9R-59が並んでおり、中楠さんはまずは受信をしていたそうだ。

電話級アマチュア無線技士を取得したのは、1964年7月の高校3年生の時で、同級生2人と田辺市から試験会場のある和歌山市まで蒸気機関車に乗って受験に向かった。無事に合格して、翌年1965年にJA3JLBを開局した。


電話級アマチュア無線従事者免許と開局申請書の写し


送信機系統図と送信空中線の略図
常置場所用と移動用とそれぞれ記載されていた


無線局の周辺の概略地図

転勤・転職はしても無線は続ける

就職した翌年の1966年には転勤のため福岡県に転居。コールサインをJA3JLBからJA6GLOに変更し転勤先でも無線を楽しんでいた。しかし寮で50MHzを送信した時にTVIが発生したため、別のところに無線をするための小さな小屋を借り休みの日にはそちらで無線を楽しんだ。また職場では無線同好会(JA6YNV)を開局し、職場でも無線を楽しんだ。


福岡県での変更申請書と送信空中線の略図
空中線の略図も新旧の記載が必要だった

1972年には転職に伴って大阪へ移った。海外の超音波探傷機器の日本法人でメンテナンス業務を担当するようになり、コールサインをJA6GLOからJH3WQWに変更したが、仕事一辺倒となり局免許を切らせてしまい、その後、元々のコールサインのJA3JLBで再開局した。このころはマイカーに2mくらいのモービルホイップを取り付けて通勤中にモービル運用を楽しんでいた。

1989年には、電信級アマチュア無線技士にステップアップし、同時期に奥様と長男が電話級アマチュア無線技士を取得し、50MHz~144MHz~430MHz~1200MHzと運用バンドを上げていった。2000年ころには、カメラ付き携帯電話が流行したことにより、携帯電話を使用することが多くなっていきモービル運用の頻度が下がっていった。

1998年に現在の大阪狭山市へ転居したが、しばらくアマチュア無線は行っていなかった。その後2012年にJA3JLBを再開局し、せっかくだからと第2級アマチュア無線技士を取得した。この頃たまたま聞いていた430MHzで大阪狭山ラジオクラブのロールコールを見つけ、交信したところ同クラブへの入会を誘われてメンバーとなった。

現在は、3Dプリンタなどでのものづくりがメインの趣味となり、自宅にはHF~V/UHF帯のアンテナを建てているが、電波を出すよりもワッチしていることが多いと話す。


V-DPやGP、ディスコーンのアンテナをベランダなどに設置

3Dプリンタとの出会い

中楠さんは2018年に1台目の3Dプリンタを購入し、コイルの巻き線機を自作した。これは当時業務で担当していたコイルを製作しようと思い、手で巻くのではなく巻き数などをセットすると自動で巻いてくれるものであった。巻き線機本体部品のプーリーやジグなど必要なものを3D CADで製図しそれを3Dプリンタで印刷して、プログラムも作り完成させた。その後も仕事で必要な部品や治具などを都度作るようになり、製作の腕を磨いていきハマっていったと話す。


自作のコイル巻き線機

縦振りの電鍵やアンテナの給電部なども製作した。


どちらも3Dプリンタによる製作品

2021年にIC-705を購入した頃、その3D外観データがアイコム株式会社のウェブサイト内IC-705製品ページで公開された。そこで早速、持ち運ぶ際の傷などを防止しながら、ハンドル付きで持ち運びしやすい保護カバーを作ってみようとチャレンジしたが、印刷精度が良くなかったためなのか、当初はなかなかうまくいかず、ノギスを片手にCADデータの微調整を繰り返し試行錯誤した。昨年(2023年)に2台目の3Dプリンタを購入し作ってみたところ、ようやく思うように出来上がったという。


IC-705の3Dデータ公開を紹介するページ(アイコム株式会社ウェブサイトIC-705製品ページ)


左: どちらも3Dデータからの製作品 右: 初めに使っていた3Dプリンタ


たくさんの試作品


作っては寸法を測り直し0.1mm単位での微調整



3DCADで作図したものと出来あったパーツ(手前)



IC-705専用のマルチバックLC-192の側面にアンテナを立てられるようなパーツも製作した。


左: アンテナベース 中、右: LC-192にIC-705を収納

遂に完成


ハンドル部分を印刷中

お話を伺っている最中にキャリングハンドバックセットのハンドル部分を印刷していただいたが、1時間ちょっとで出来上がった。なお1セット全てを印刷するには、印刷時間だけで12時間程度かかるそうだ。

試行錯誤してようやく思うようなものが完成したことで、同じ思いの方にもぜひ使っていただきたいと、現在はX(旧Twitter)Facebookで頒布されている。

・キャリングハンドバックセット「アイコミック705/905」
 Carrying handbag set “i.comic 705・905”
 ハンドバックフレーム+フェイスカバーセット(ディスプレイ部窓あり/なし)

また、オプションとしてBNC型やM型のL型変換コネクタを介してホイップアンテナを直付けした際に、アンテナがくるくる回らないようにする保持キャップも用意されている。

対応している無線機はIC-705の他に、組み込む箇所が同サイズであるIC-905のコントローラ部にも取り付けが可能だそうだ。







詳細はこちらをクリックしてご確認頂きたい。

・問い合わせ先
興味を持たれた方は、以下の中楠さんのPCメールアドレスへ直接連絡をお願いします。
PCメールアドレス i.comic705アットマークoutlook.jp

今後の活動

車にアンテナを取り付けるための基台のパーツも3Dプリンタで製作し、キャリングハンドバックセットを取り付けたIC-705を携えて、車で色々なところへ出かけ移動運用を楽しみたい、そしてD-STARの通信にもチャレンジしたいと中楠さんは話す。

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