日本全国・移動運用記
2024年5月1日掲載
鹿児島県鹿児島郡は、離島にある郡で、三島村と十島村の2つの村があります。交通手段はフェリーに限られます。鹿児島郡で運用するため、本土に近い三島村での運用を計画しました。
鹿児島港からフェリーで移動する場合、鹿児島郡の最も近い島は、三島村の竹島です(図1)。フェリーは運航日が限られており、土曜日に鹿児島港から出港、日曜日に鹿児島港に入港する日程を利用して、1泊2日で移動しました(写真1)。自分の車で車両航送を利用し、食料も持参して車中泊しました。
図1 鹿児島郡三島村(竹島)の位置
写真1 利用したフェリーみしま
自宅から鹿児島港までは、自力で運転して移動しました。鹿児島まで14時間ほどかかるので、3月29日(木)の夜に出発して、途中で仮眠してから運転を続けました。
夜は激しい雨でしたが、朝からは天気が回復し、順調に移動できて予定より早く到着する見込みでした。そこで、南九州西回り自動車道を通って、これまでHF帯の運用実績が無かった熊本県葦北郡(あしきたぐん)芦北町(あしきたまち)と津奈木町(つなぎまち)で運用しました(写真2)。この日は伝搬のコンディションが良く、F層の臨界周波数が14MHz以上になっていて、7~28MHz帯まで多くのQSOができました。ただし、1.9MHz帯はQSOできませんでした。
写真2 津奈木町での運用場所の様子
3月30日の朝は天気が良く、鹿児島港からフェリーに乗船して、予定通り竹島に到着しました。
竹島は面積4.22km2、人口58人の小さな島で、その名の通り、島全体が竹に覆われています。空き地が少なく、周囲には車高よりも高い竹が生えているため、広い場所の確保は難しいです。島内のいくつかの場所を選定して、北側が少し開けた場所で運用することにしました(写真3)。
この場所は、以前は芝生の広場だったところが、草が成長し過ぎて木になっており、車が乗り入れられる場所は限られていました。敷地の制約から、全長が80mの1.9MHz帯ダイポールアンテナを設置するには、通路の上を通過させる必要がありました。
ここから60kmほど離れた種子島では、7mの釣竿アンテナでも1日1,000QSO以上できたことを思い出し(2020年9月号)、ダイポールアンテナにこだわらず、ロングワイヤーアンテナでも十分と考えました。敷地いっぱいに全長30mほどの逆L型ロングワイヤーを設置し(2013年10月号)、1.9~50MHz帯の全バンドで、オートアンテナチューナーAH-4でチューニングして使用しました。QSYは無線機(IC-7300)本体のTUNERボタンを押すだけです。1.9MHz帯でも十分な性能を得ることができ、その他のバンドも問題なく運用できました。
利用者が来た場合に備え、スペースを取らない釣竿アンテナに変更できるように準備していました。結局、人が来ることはありませんでした。
写真3 三島村での運用場所の様子
運用を始めると、昼間の7MHz帯は聞こえるエリアが限られているものの、10MHz帯や14MHz帯は大盛況で、夕方になると7MHz帯でも長時間のパイルアップが続きました。
筆者は通常の移動運用ではCWを主に運用していますが、RTTYで三島村と交信すれば全市町村との交信が完成するという局がいらっしゃったので、短時間ながらも7MHz帯と10MHz帯のRTTYを運用しました。RTTYは慣れていれば1回の交信は30秒以内で済み、周波数もそれほど混雑していないため、移動運用でデジタルモードをサービスする場合にはよく利用しています。
前日は交信できなかった1.9MHz帯は、夜になるとほぼ通常通りの交信ができるようになりました。翌朝は既に多くの局と交信済みになっていたため、パイルアップは少なくなりました。乗船の直前にちょうどサテライトのRS-44が来るため、乗船券を購入した後に、港で短時間運用してから乗船しました。
帰りはパーキングエリアやサービスエリアで、モービルアンテナ基台に直結するタイプの自作ホイップアンテナを使用して運用しました。熊本県球磨郡山江村の1.9MHz帯で11QSOできるなど、伝搬の状態は良さそうでした。ところが、運用途中で風雨が強くなってきて、熊本県八代郡氷川町では1.9MHz帯を運用中に突風を受けてアンテナが破損し、運用を終了しました。
QTH別、バンド別のQSO数を表1に示します。三島村では、ロングワイヤーアンテナでも1.9~28MHz帯の各バンドで多くのQSOができて、アンテナとして十分に機能しました。50MHz帯は電離層反射が無く、鹿児島県本土との1QSOだけでした。
表1 QTH・バンド別のQSO数。1.9~50MHzは、三島村以外はCW。
三島村はCW/RTTY(RTTYでは7MHz 29, 10MHz 28QSO)、サテライトはCW/SSB。
日本全国・移動運用記 バックナンバー
アマチュア無線関連機関/団体
各総合通信局/総合通信事務所
アマチュア無線機器メーカー(JAIA会員)
©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.