HW Lab
2025年1月15日掲載
0~30Vまでを0.01Vステップで可変でき、電流制限機能も付いたお手頃価格のスイッチング電源をネット通販で購入しました。その電源をAFアンプに接続し、音楽を鳴らすとスピーカーから何か「ヒューン」といった音が微かに聞こえます。電源の出力をオシロスコープで観測すると、なんとすごいノイズ。スイッチング電源なので多少のスイッチングノイズは理解していますが、そのレベルに驚きです。こんなものかと諦めていましたが、スイッチングノイズを抑制するDCラインフィルターを挿入することで解消しました。
図1は、2種類のスイッチング電源の出力をオシロスコープで観測したものです。両電源ともMade in Chinaの製品です。黄色で示すものは国内のアマチュアにはよく知られているメーカーのものです。水色は、今回大手ネット通販業者を通して購入したものです。画像は、オシロスコープのスクリーンキャプチャーです。両者とも同じようにスイッチングノイズを確認できますが、スクリーン下部に示されたVppの値を見ればそのレベルに大きな差があることが分かります。参考ですが、トランス式の定電圧電源の出力を同条件で観測してもノイズは確認できません。
図1 スイッチング電源のノイズレベルの比較。※出力電圧=10.0V、無負荷
上: 国内メーカー(Vpp=150mV)、下: 海外メーカー(Vpp=4.4V)
購入した電源の内部に手を加えたいところですが、内部を見ると対策に必要な電子部品を組み込む十分なスペースもないことから外付けのDCラインフィルターとしました。ノイズ対策の下調べのため「スイッチングノイズ対策」等の文字列をネット検索するとたくさんの記事がヒットします。どれだけ多くの方々がスイッチング電源のノイズに悩まされているのかよく分かります。
今回のDCラインフィルターの製作は筆者のオリジナル回路ではなく、諸先輩方が実験された結果をいただき、それを自分なりに変更して製作したものです。
図2のように被測定スイッチング電源と今回製作したDCラインフィルターを接続します。DCラインフィルターの入力端子と出力端子にそれぞれオシロスコープのプローブを接続し、DC電圧に重畳されたノイズのレベルを測定します。出力端子は無負荷状態です。
被測定スイッチング電源の出力電圧を10.0Vにセットします。DCラインフィルターの入力電圧に重畳されたスイッチングノイズのレベルを図2のスクリーンキャプチャーより確認することができます。入力側を黄色で示しています。Vpp=2.26Vと分かります。出力側は水色で示されています。Vpp=80mVです。スイッチングノイズのレベルは常時変化しているので、上に示した値はその瞬間のものですが、平均するとこれぐらいのレベルです。
両者のスクリーンキャプチャーの波形を見た結果、DCラインフィルターでノイズが大きく減衰していることが分かります。このDCラインフィルターを通してAFアンプに電源を接続して音楽を聴いたところ、冒頭に説明しました「ヒューン」といった音は耳では確認できませんでした。単純計算ですが、約29dBもの減衰です。
今回製作したDCラインフィルターの回路図を図3に示します。回路に使用したL1、L2、またL3、L4の作り方はそれぞれ図4、図5に示しました。今回コイルにはφ1.0mmのポリウレタン銅線を使用しました。
入力端子のすぐあとにD1を挿入しています。D1は6A6といった品番です。これは入力のプラスマイナスの逆接を防止するためのものです。逆接をしますと出力端子のすぐそばの電解コンデンサーC1が破損します。
ダイオードを挿入しているため出力端子に現れる電圧は、このダイオードの接合電位差分の約0.7Vが引かれた値となります。また、このダイオードに流せる電流はスペックシートによると6AがMAXですので、それ以上の電流を流す場合はダイオードのスペックにも注意が必要です。
図3 DCラインフィルターの回路図
空芯コイルでは十分なインダクタンスを得ることができないことからトロイダルコアを準備します。一概にトロイダルコアといってもいろいろな透磁率のものがあり、この製作にはどれを使用すれば最適か、十分な資料もないため手持ちのコアでトライしました。
手持ちの数種類のコアで適当にコイルを作りインダクタンスを測定したところ、同じ長さの銅線でもインダクタンスの変化は確かにありましたが、インダクタンスが極端に低いため使い物にならないといったものはありませんでした。トロイダルコアであれば、そこそこのインダクタンスを得ることができるように思います。
・L1、L2の作り方(キャンセル巻き)
図4 L1、L2の巻き方(キャンセル巻き)
・L3、L4の作り方
このコイルの製作は「3D無線クラブ」のサイトを参考にしました。少ない巻き数で、製作も簡単です。また効果もバツグンです。インダクタンスは、測定できていませんが、7~8回程度の巻き数で十分な効果を得ることができると思います。
図5 L3、L4の作り方
できあがったコイルを基板に取付けます。コイル間の結線にも大きな電流が流れるため、十分な太さの銅線が必要です。
図6 出来上がったコイルをガラスエポキシの基板に取付ける
基板をケーシングします。ケースは大きさや堅牢さを考慮しネット検索した結果、このフィルターにぴったりのTAKACHIのTWF7-5-13(W)としました。品番の末尾の(W)はホワイトの略で、同じ大きさのケースにダークグレー(D)もあるようです。図7は、そのケースに基板を組み込んだ状態です。
入出力のターミナルから基板に赤黒のワイヤーで配線を行っています。その線間に小さいフェライトビーズを挿入してノイズ対策? を行っていますが、特に効果はありませんでした。なくてもよいと思います。
図7 ケースに組み込んだ状態
スイッチング電源の出力を誤ってDCラインフィルターの出力端子にプラスマイナスを逆に接続すると電解コンデンサーが破損します。回路図には入っていませんが、入出力端子への逆接続防止のためにも、出力側にもダイオードを挿入した方が安全と思います。
図8は完成したDCラインフィルターです。回路的にコンデンサーの追加やインダクタンスの見直し等が必要な個所もあると思いますが、まずはスイッチング電源の出力に現れたスイッチングノイズを予想以上に抑制できました。(図9~11)
図8 タカチのケースに組み込んだDCラインフィルター
図9 対策前: 出力端子に接続してノイズレベルを観測 Vpp=2.28V
縦軸 1.00V/div
図10 対策後: 出力端子に接続してノイズレベルを観測 Vpp=120mV
縦軸 1.00V/div
図11 図10の縦軸を20mVで表示 Vpp=80mV
縦軸 20.0mV/div
3D無線クラブ No.59 DC電源ライン・ノイズフィルター DNF-30K 13.8V 30Aの作り方
CQ出版社 定本トロイダル・コア活用百科
Tech Web 設計のイロハを学べる技術情報サイト スイッチングノイズとは? スイッチング電源で発生するノイズと対策
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