新・エレクトロニクス工作室
2025年1月15日掲載
ここでのDBMは、内部にダイオードを使った写真1のようなものです。4ピンもありましたが、8ピンが主流だったようです。この他にも円筒型や正方形のものもありました。現在でも入手できますが、時代の流れで今は表面実装が主流です。周波数の範囲が広く、自作する事も可能です。
写真1 このようなダイオードを使ったDBMがチェッカの対象
DBMチェッカは第7回で紹介し、これはこれで上手く動いています。目的であったDBMが正常に使えるかの確認ができました。また、DCから使えるかの確認もできました。しかし、欠点としてはスプリアスの状態が確認できません。それは当然で、使った発振器の出力がスプリアスだらけでしたので、何が何だか分かりませんでした。
そこで、今度は逆の使い方を目的にしました。つまり、スプリアスの少ない信号を2つ作り、それをDBMに入れて出力を確認しようとするものです。このような発振回路を2つ持つ、写真2のようなDBMチェッカ2を作製しました。もちろん動作チェックには使えますが、今度は逆にIFポートがDCから使えるかのテストができません。これは第7回を使うか、あるいは今回のチェッカにSGを併用するのが良さそうです。ただ、正常に使えるかのチェックは第7回よりもシビアにできるかと思います。ただ、これだけでは使い難いので、接続先としてスペアナがあると便利です。出力の特性を画面で観測する事ができます。tinySAで良いと思います。
写真2 作製したDBMチェッカ2
このようなものを考えた時、まず2つの周波数をどのように選択するかが問題です。スプリアスが少なく広い周波数という事では、高性能のSGを2台作る必要があります。もちろんそれは理想なのですが、簡易的なチェッカにはなりません。そこで周波数は固定にする事とします。まず、水晶を使って7.8~12MHzを発振させる回路です。この幅を可変するという意味でなく、この範囲の固定周波数という意味になります。周波数としてはクリスタルフィルタの出力をイメージすると、レベル的には-5dBm程度となります。
もう一方はローカル発振器をイメージして30~45MHzを出力しています。これも周波数の可変ではなく、この範囲の固定周波数です。狙いはが50MHzにある事は明白でしょう。中心は39MHz程度になります。出力はDBMのLOポートに接続しますので+5~10dBm程度が必要になります。
いろいろと考えた結果、図1のような構成としました。もちろん、この周波数にする必要はありません。私がチェッカの目的を考慮しただけですので、他の考え方も当然あります。
水晶を交換してコイルの調整を行う事で、この7.8~12MHzと30~45MHzの周波数をカバーするのが理想です。多少外れる程度は、コンデンサをパラに追加するのもありです。コイルの交換をせずに、周波数範囲をある程度絞るのが現実的と思います。当然オールバンドは無理ですが、これで確認すればDBMが正常に動作しているのか解るでしょう。
回路を図2に示します。簡単な構造ですが、3つの基板に分けています。相互に影響する事を避けるためですが、シールドはしていません。それ程神経を使ったわけではありません。7.8~12MHzを発振させる基板では、中心の周波数を使って10MHz出力としています。30~45MHzは40MHz出力としています。しかし、実際にこの周波数では10MHzの4倍が40MHzになり、スプリアス的にまずい事になります。その程度のザックリとした表示と考えて下さい。
10MHz発振回路は出力にT型BPFを付けて、周波数の変化に対応できるようにしています。出力レベルが高過ぎたため、6dBのアッテネータを入れました。これはインピーダンスのマッチング用でもあります。
40MHz発振回路は出力が+10dBm程度のため、アンプを付けた2段としました。中間にある1kΩの半固定VRがレベル調整用になります。これで-5~+10dBm程度の可変をする事ができます。DBMが必要なレベルに合わせる事ができます。あるいはLOレベルが多少低い時の動作状況も確認可能でしょう。
まず、12Vの電源分配基板から作製しました。秋月電子の一般的なD基板を使っています。別基板にする必要はないのですが、この方が作りやすいと思ったためです。この実装図を図3に示します。基板を作製したところが写真3になります。
図3 12Vの電源分配基板の実装図
写真3 12Vの電源分配基板を作製
このハンダ面を図4に示します。これは部品面から見た透視図ですので、ハンダ面からみた図を図5に示します。実際のハンダ面が写真4になりますので比較できます。
図4 ハンダ面(部品面からの透視図)
図5 ハンダ面(裏面から)
写真4 ハンダ面(図5と比較できる)
10MHzの発振回路は、秋月電子のシールドメッシュ付きのD基板を使いました。実装図を図6に示します。いつものように緑点がシールドメッシュにアースする位置になります。基板を作製したところが写真5になります。
図6 10MHz発振回路の実装図
写真5 10MHz発振回路を作製
この回路は水晶の交換ができるようにしました。写真6のように丸ピンIC用ソケットの1列タイプを使い、水晶を差し込んでいます。もちろん中央のピンは未使用です。次の40MHzも同様です。
写真6 水晶の交換ができるようにICソケットを利用
このハンダ面を図7に示します。ハンダ面からみた様子を図8に示します。実際のハンダ面が写真7になりますので比較できます。
図7 ハンダ面(部品面からの透視図)
図8 ハンダ面(裏面から)
写真7 ハンダ面(図8と比較できる)
40MHzの発振回路は秋月電子のシールドメッシュ付きのC基板を使っています。実装図を図9に示します。基板を作製したところが写真8になります。
写真8 40MHz発振回路を作製
このハンダ面を図10に示します。ハンダ面からみた様子を図11に示します。実際のハンダ面が写真9になりますので比較できます。
写真9 ハンダ面(図11と比較できる)
まず10MHz出力として、実際には11.275MHzを測定したのが測定結果1になります。T型BPFによって高調波も-58dBc程度に抑えられています。本当にトランシーバを作ろうとするとUSBになる11.272MHzを使いますが、LSB用の11.275MHzが余っているという事情があります。目的からすれば、この近辺の周波数であれば充分でしょう。
測定結果1 10MHz出力として実際には11.275MHzを測定
40MHz出力として、実際には13MHzを3逓倍した39MHzの出力を測定したのが測定結果2になります。出力に複同調のBPFがありますので、スプリアス的には-68dBc程度です。
本機を使ってR&KのM-1を写真10のように測りました。これは11.275MHzをDBMのIFへ、39MHzをLOに入れてRFを出力として測ったものです。接続としては一番オーソドックスになるのでしょう。DBMの接続には第7回の時に作った基板を使っています。
写真10 R&KのM-1を測定する様子
オーソドックスな接続をして測った結果が、測定結果3になりました。50MHzと27.7MHzの出力が中心になっています。11.275MHzと39MHzの漏れも見えます。この他にかなりスプリアスが見られますが、このような出力が一般的なのでしょう。50MHzで出力が1W以上の場合、スプリアスを-60dBc以下に抑える必要があります。この後にBPFを入れるのですが、何とかなりそうです。1W以下では50µW以下になりますので、-43dBc以上取れれば良い事になります。これは簡単にクリアできるでしょう。
測定結果3 R&KのM-1を測定(11.275MHz→IF、39MHz→LO、RF→出力)
少々DBMの端子を入れ替えてみました。11.275MHzをDBMのRFへ、39MHzをLOに入れてIFを出力として測ったものが測定結果4です。理由は解りませんが、45MHz付近のスプリアスが多少下がっています。このようにDBMの端子は入れ替えて使う事も可能で、少しでも有利な使い方を探すことが可能です。但し、ポートによって使える周波数が異なる場合があります。特に音声のような低い周波数は、IF端子しか使えません。これはDBMによりますので使えるとは限りませんが・・・。
測定結果4 R&KのM-1を測定(11.275MHz→RF、39MHz→LO、IF→出力)
次に11.275MHzをDBMのIFへ、39MHzをRFに入れてLOを出力として測ったものが測定結果5です。我々が一般的にDBMを自作すると、RFとLOは回路的に全く同じものになります。ところが測定結果3と比べると取り出したい出力は同じ感じですが、スプリアスの発生はかなり異なっています。1W以上の送信機を作る場合、56MHz付近のスプリアスは除去が大変そうに見えます。測定結果3の方が近接スプリアスの除去には良さそうです。どちらが有利かは判断しにくいのですが、僅かな事で変化します。
測定結果5 R&KのM-1を測定(11.275MHz→IF、39MHz→RF、LO→出力)
結論的には良く解らない・・・ なのでしょう。もちろんスプリアス対策としては、もう少し検討する必要があります。その先に付けるBPFも考えておくべきなのでしょう。
使ってみて、DBMには意外なほどクセがある事に気が付きました。同じ型番でも不一致があるのかもしれません。また、自作するとコイルによって、あるいはダイオードによって微妙に変わります。これからは、この冶具で一度試さないとトランシーバ等には使えません。
本機では周波数がほぼ決まっていますので、確認できる範囲は限定的です。しかし、簡易的に作れて、それなりに特性を確認する事ができました。
後から考えて失敗したと思ったのが、40MHzを3逓倍で作った事です。トランシーバの場合はVXOにするので仕方ないのですが、ここでVXOにする必要も3逓倍にする必要もありません。ここはオーバートーンで発振させれば、スプリアスは2倍の80MHz、3倍の120MHz・・・ となります。その方がDBMのチェッカとして良かったのではと思います。オーバートーン用の基板を作り、入れ替えて使えるようにするのも今後の課題です。
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