特別寄稿
2026年7月1日掲載
「日本の端へ行けば、UHF帯やマイクロ波でもDXができるのでは?」と、誰かが言い出したことがすべての発端でした。2024年の年末から筆者らは日本最西端の地である与那国島-台湾間の交信を計画し準備を進めました。2025年6月の実験では、1.2GHz帯を用いて日本-台湾間で直接交信することに成功しました。この実験では、CW・FM・SSBのみならず、DV・DV-Fast Dataでの音声・画像の伝送も行うことができました。
この成果とIC-905XGを入手したことを受けて、2026年は2.4GHz帯・5.6GHz帯・10.1GHz帯を用いて日本-台湾間で直接交信することを目標に与那国島へ赴き実験を行いました。結果として、2.4GHz帯ではSSB・CWで、5.6GHz帯ではCWで交信することに成功しました。
与那国島(沖縄県八重山郡与那国町、JCG#47005)は、沖縄県の八重山諸島(IOTA AS-024)に属する日本最西端の島です。台湾まで最短で110km程度であり、条件が良い日には島の西側から台湾が見えることもあるようです。島の自然はとても豊かで、熱帯性の植物が繁り、ヨナグニウマ(Fig.1)・ヨナグニカラスバト・ヨナグニサン・ヤシガニなどの珍しい生き物と出会うことも稀ではありません。

Fig.1 東崎(あがりざき)のヨナグニウマと筆者
ヨナグニウマは与那国島に生息する日本在来馬の一種です。小型で栗毛色の体毛が特徴の馬で、かつては農耕馬として活用されていたようです。人懐こい性格であるため現在は観光用として島内の牧場で放牧されています。
崖の多い地形であるため、海岸線からは透明度の高いコバルトブルーの海とはるか遠くの地平線を見下ろすことができ(Fig.2)、晴れていれば南十字星の観測もできます。

Fig.2 西崎(いりざき)展望台から西側を臨む
上の写真中央に写る岩はトゥイシと呼ばれる与那国島の沖合にある岩で真の日本最西端の地(ただし自由に到達することはできません)です。島の周囲は一部の砂浜を除き多くが写真のように断崖絶壁で、遥か彼方に水平線を臨み、目下に青い海を見下ろすことができます。条件に恵まれればこの先に台湾が見えるそうです。
2003年に放映されたドラマ「Dr. コトー診療所」のロケ地となり知名度を上げたことは記憶に新しく、島内には撮影に使用した診療所のセット(Fig.3)が残っており、内部を見学できるようになっています。

Fig.3 Dr. コトー診療所とタローさん
診療所セットの前で白衣(このためだけに筆者が持参)を羽織り、ドラマのポスターと同じ構図の写真を撮るJO3TND/JS6UVT 足立太郎さん(タローさん)の気持ちはすっかり「Dr. タロー診療所」です。比川地区に残るこの診療所は、撮影当時の雰囲気をそのまま残しており、内部には撮影に使用した小物などが展示されています。見学は有料ですが、院内の券売機で支払いすると診察券を模した記念の入場券がもらえます。ぜひ足を運んでみてください。
主なアクティビティとしてカジキ釣り・ダイビング・海底遺跡散策・乗馬・サイクリングなどがあります。名産品は泡盛・織物・カジキ・パイナップルなどです。特にカジキの刺身(Fig.4)とパイナップルは絶品なのでぜひご賞味ください。詳細は与那国観光WEBをご確認ください。

Fig.4 新鮮な刺身
今回の実験のためにタローさんと筆者が与那国島へ赴きました。台湾側との交渉・機会設定や沖縄総合通信事務所とのやり取りは、JE1XUZ/JS6UVU 加藤聖也さんに担当してもらいました。台湾側では、BV1EL 鈴木 “Ken” 健太郎さん(Kenさん)とBV2OL 蔡耀斌さんをはじめとするBV2Aのメンバー(Fig.5)にご協力をいただきました。

Fig.5 台湾側のメンバー
渭水之丘で記念撮影をするBV2Aのメンバーの皆さんです。後述しますが、背後にはアンテナとこの運用地の絶景が伺われます。
日本側の運用地は、2025年と同様に与那国島の最西端である西崎(いりざき)展望台(Fig.6 中央黒矢印)を検討しました。しかし、メンバーが2名と少数であることや当日強風が吹いていたことを考慮して、頂上までは上がらず岬の付け根あたりにある高台(Fig.6 左白矢印、標高約40m)から運用することとしました。この場所からでも台湾方向の水平線を見通すことはできますが・・・。この選択が仇になってしまった可能性もあります。

Fig.6 日本側の運用地
台湾側の運用地は、宜蘭県にある櫻花陵園の絶景スポットとしても有名な渭水之丘(Fig.7、標高約800m)です。東側には一切遮るものなく太平洋を見渡すことができます。写真中央が与那国島方面、左側の海上にある島が亀山島です。双方の距離は132km離れていますが、台湾側で高さを稼いでいただいたおかげで伝搬的には見通し範囲内でした。

Fig.7 渭水之丘からの絶景
交信実験は台北市アマチュア無線促進会が主催するVHF QSO party(VQP)の開催期間中の2026年6月6日(土) 3時00分UTC頃より行うこととしました。VQPでは多くの台湾のHAMがVHF以上のDX通信や周辺国・地域間の交流を深める事を目指し移動運用をするため、その機会に合わせたものです。
無線機は日本側・台湾側いずれもIC-905XG(アイコム製)を使用し、出力は2.4GHz帯・5.6GHz帯で2W、10.1GHz帯は0.5Wとしました。
2.4GHz帯のアンテナは、日本側はX2427 ロングジョンアンテナ(クリエート・デザイン製、27エレメント、利得:21dBi)を、台湾側はグリッドパラボラアンテナ(Wi-Fi用・製造元不明、利得:24dBi)を水平偏波で使用しました。5.6GHz帯には日本側はANT-5158-30DBI グリッドパラボラアンテナ(Premiertek社製、利得:30dBi)を、台湾側はグリッドパラボラアンテナ(Wi-Fi用・製造元不明、利得:24dBi)を使用しました。10.1GHz帯には日本側も台湾側ともにAH-109PB パラボラアンテナ(アイコム製、利得:31dBi)を使用しました。いずれのアンテナも三脚とポールを用いて1~3mの高さに設置しました(Fig.8、Fig.9)。

Fig.8 日本側のアンテナ
上から5.6GHz帯、10.1GHz帯、1.2GHz帯、2.4GHz帯のアンテナです。短いケーブルが用意できなかったことや時間が押していたこともあり、RFユニットや10GHzトランバーターをマストに取り付けずに運用しました。

Fig.9 台湾側のアンテナ
左上が2.4GHz帯、右上が10.1GHz帯、右下が5.6GHz帯のアンテナです。日本側とは違い、RFユニットや10GHzトランスバータ―をマストに取り付け、アンテナとはできるだけ短いケーブルで接続されています。写真中央は今回の実験で台湾側の取りまとめをしてくれたKenさんです。
なお、急遽機材が手に入ったという事情のため、回線設計の余裕はなく「ぶっつけ本番」の挑戦になってしまいました。
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