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特別寄稿

IC-905XGがつないだ日本最西端と台湾 -SHF交信実験-

JA1SJS・JS6UVV 鈴木みなと

2026年7月1日掲載

4. 交信実験

日本側の実験開始から終了までの天気は、曇時々小雨で気温は28.5℃、湿度は85%でした。台湾方向にあたる西側は雲に覆われ、海上の一部には雨が降っているところもあるようでした。また風速7~8mの西北西から北西の風が常に吹いていました。この天候の影響で実験開始に1時間程度の遅れが出てしまいました。

交信実験は2.4GHz帯から始めることとしました。おおよその方向を狙い、双方からFMで呼び出しを行いましたが交信には至りませんでした。タローさんからKenさんへ連絡をしてもらい、偏波面の確認をした後にCWで送信し合い方向合わせを行いました。2.4GHz帯において、4時25分UTCに台湾側の信号が受信でき、BV2A-JS6UVV間とBV2A-JS6UVT間でCWの交信が成立しました。この際、台湾側の信号はRST529で日本側に入感し、日本側の信号はRST559で台湾側に入感しました。すぐにSSBへ切り替えて呼出を行い交信が成立しました。SSBでは、台湾側の信号はRS51で日本側に入感し、日本側の信号はRS53で台湾側に入感しました。

5.6GHz帯での交信も一筋縄には行きませんでした。2.4GHzでの交信後に10分ほど呼び出しを続けましたが、双方とも信号がわずかに聞こえる程度で交信に至ることはできませんでした。再びタローさんからKenさんへ連絡をしてもらい、CWで送信し合い方向合わせをしながら交信の機会を伺うこととしました。しばらく継続したところ、台湾側の信号が若干強く聞こえる方角があったため、すかさずこちらからもコールしたところ応答があり、4時49分UTCにBV2A-JS6UVV間とBV2A-JS6UVT間でCWの交信が成立しました。台湾側信号はRST439で日本側に入感し、日本側の信号はRST559で台湾側へ入感しました。

10.1GHz帯についても2.4GHz帯や5.6GHz帯と同様に方向合わせをしながら交信を試みましたが、結局相手の信号を受信することはできず、交信は成立しませんでした。

5. 考察

今回の実験で、筆者らのチームは日本-台湾間の2.4GHz帯と5.6GHz帯での直接交信に成功することができました。マイクロ波を用いて海外と直接交信することは、周囲を海に囲まれた島国である日本や台湾のHAMにとっては大変困難で希少な経験だと考えられます。筆者らや台湾側のメンバーが調べた範囲では、日本-台湾間での2.4GHz帯や5.6GHz帯を用いて直接交信した文献・記録を確認することはできませんでした。日本と台湾以外の海外とのGWによる交信記録も僅少で、韓国の59HAMTVクラブと日本のマイクロウェーブ北九州が10GHzを用いて日本-韓国間でATVによる交信した記録を見つけたのみでした。

日本側の運用地と台湾側の運用地は伝搬的に見通し範囲内です。また、JARLの交信距離認定では異常伝搬を含むと思いますが、今回の双方間よりも遥かに長い距離が認定されています。そのため、マイクロ波でも比較的容易に交信できるものと考えていました。しかし、今年の実験では10.1GHz帯での交信を行うことはできず、2.4GHz帯と5.6GHz帯でもCWやSSBでの交信実績にとどまってしまいました。2025年の1.2GHz帯の実験では、運用地を設置場所としているため、出力10W、利得16.6dBiのアンテナを用いて、すべてのモードでRS59+20dB/RS59+20dBでした。また、前述の日本-韓国間の10GHzでの記録では、双方の距離が235km(見通し範囲内)で、送信機の出力は0.5~1W、使用したBCS-45DHV パラボラアンテナと思われるアンテナの利得は33.8dBiですが、ATVで十分交信することができたようです。これらから今回の実験で筆者らが交信に難渋したことやできなかったことは、周波数上昇に伴い自由空間損失が10~20dB増加することを考慮しても説明することはできず、他に何らかの要因があったはずだと考えました。

原因として、まず、今回は常に強風に見舞われアンテナの固定が困難だったことが影響したと考えています。特に受風面積の大きく指向性がシャープなパラボラアンテナを用いる5.6GHz帯や10.1GHz帯に及ぼす影響は大きいと思われます。また、短いケーブルが用意できずアンテナとRFユニットの間を長いケーブルでつないだため、減衰が大きかった可能性もあります。さらに、与那国島沖の台湾方向の海上で雨が降っていたため、特に10.1GHz帯は降雨減衰を受けた可能性があります。そのうえ2025年と今回では運用場所が若干異なっていたことも交信に難渋した原因の一つと考えています。人手不足と強風のため、2025年の運用地のやや手前を選択することになりました。この場所は高台ではあるものの水平線ギリギリのところに丘や藪がありこれらが伝送路のフレネルゾーンに干渉したのではと考えています。今後、地形図や衛星画像を用いて詳細に検証する予定です。

次回は回線設計を入念に行い、天候に恵まれることを祈りつつ、メンバーを十分に集め、2025年の運用地である西崎先端の展望台まで行き、残された10.1GHz帯や今回交信できなかったFM・DV・DV-Fast Data・DDなどのモードでも交信成立を目指したいと今から既に息巻いています。

アイコムが発売したIC-905XGの影響は壮大で、マイクロ波の世界に大きなブレークスルーをもたらしたと考えています。マイクロ波は広帯域幅・鋭い指向性・コンパクトなアンテナという特徴で、大容量かつ高速な通信を時と場所を問わず可能としています。これに限らず、工業・送電・化学・医療などの様々な分野でもすでに活用され、さらなる応用も期待され研究開発が進められています。

マイクロ波の技術は、国や財界が中心となって育成・確保を急ぐワイヤレス人材にとって、中核となるものです。しかし、目に見えないものであるため実態を掴むことは容易ではなく、挑戦しようにも全てを自作しなければならないため、いままでは高価な測定機や高い技術力や膨大な時間が要求されました。筆者らを含む一般のHAMや科学技術に興味がある若年者にとっては大変難解で崇高な分野であったと思います。IC-905XGは参入障壁を大きく下げ、誰でもマイクロ波に触れることができるようにしました。この報告も、マイクロ波をはじめとするアマチュア無線の世界の活性化に一石を投じることができれば幸いです。

6. 与那国島での運用ポイント 〜教訓の共有〜

与那国島の気候は熱帯雨林気候であるため、1年を通じて温暖かつ多湿です。特に夏季には高温となることも多々あるため、旅行者は熱中症対策が必要です。紫外線も強いため、日焼けへの対策も怠ってはいけません。また、時折いわゆるスコールに見舞われることもありますし、強い風が吹いていることもあります。運用中に急に激しい風雨に襲われることもあると思われます。雨具の用意のみならず機材の浸水やアンテナの転倒には十分注意してください。

島へは石垣島もしくは那覇からの航空機か、石垣島からのフェリーで訪れることができます(Fig.10、Fig.11)。航空機を使う場合は荷物に制限が出ることに注意し、予め宿泊先へゆうパックなどで送付するなどの対応を検討しましょう。バッテリーなど航空機に搭載できないものもあるため、余裕をもって発送するようにしましょう。フェリーは週に2便のみの運行ですし、悪天候で欠航することもあります。日程が大幅に乱れてしまう可能性に注意してください。島内には無料の生活路線バス(Fig.12)がありますが、小型のバスで本数も限られているため、移動運用にはレンタカーなどをおすすめします。


Fig.10 空の玄関口 与那国空港


Fig.11 海の玄関口 久部良港



Fig.12 生活路線バス



せっかくなので現地のグルメ(Fig.13)も楽しんでください。島内には24時間営業のコンビニやスーパーはなく、集落ごとに商店がいくつかあります。開店時間は早いところで6時30分ごろ、閉店時間は遅いところで21時頃です。食料は早めに調達するか、持ち込むことをおすすめします。食堂や居酒屋のような飲食店もいくらかありますが、営業終了も早く臨時休業となることもあります。特に日曜日の夕方以降に営業しているところは限定的です。前もって予約をしておくことを強くおすすめします。Webには一切情報の出てこない飲食店もあります。アマチュア無線に疲れたら散策して探してみるのも楽しいはずです。


Fig.13 はてぃぬちま寿司(カジキを使った寿司で、からしをつけて食べる与那国の郷土料理)

アマチュア無線家が素晴らしいロケーションだと考える場所は大抵が観光スポットか地元の住民にとっての大切な場所です。運用時間はできるだけ短くして、景観や安全へ配慮し、求めがあった際は素早く撤収できるように設備は最小限にするよう努めましょう。

与那国島はリゾートではありません。地元の住民が平穏な日常生活を送っている場所へお邪魔しているという意識を忘れないようにしましょう。挨拶の励行、ゴミの持ち帰り、地元住民や観光のお客様を優先にする、泥酔したり、騒がない・・・。今後のためにもこれらのマナーや常識を守って行動することが求められています。

7. 謝辞

今回の実験は多くの人の支援のもとで行われました。交信実験にご協力いただいた台湾のBV2Aの関係者の皆さん、移動運用のノウハウを惜しみなく提供してくださったJH5JKH 久保輝訓さん、技術的な助言と計画推進の機会をくださったJA1WYX 河野諒太さん、昨年は実験に同行し、今年は赴任先のインドネシアから応援してくださったJH1LHD/JS6UVS 稲垣悦樹さん、今回の運用をご容認くださった与那国島の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

8. 参考文献

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