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無線をせんとや生まれけむ。

第五話 国内中波放送を楽しむ

無線(CQ)をせんとや生まれけむ。
短波(ラジオ)聞かんとや生まれけん。
呼ぶ、かの局の信号(こえ)聞けば
我が身さえこそゆるがるれ。

JF3SFU 永野正和

皆さま、いかがお過ごしですか? 桜花のシーズンがやって来て、あっという間に葉桜です。本当ならアクティブで良い季節が到来! のはずなのですが、日本、それから、世界中が、新型コロナウィルスで大変な状態です。悪疫の拡散を防ぐため、人と人の接触を最小限にしようとアナウンスがされています。

HFバンドをワッチしていますと、「STAYHOME」という文字をサフィックスに持つ長いコールサインの無線局がオンエアしています。私も何局かと交信しました。"You have to stay at home." つまり、お家にいよう。新型コロナウィルスをやっつけようということなんですね。ということで、今月は「お家でラジオを聴いて、安全に過ごそう。」をテーマに、国内中波放送にスポットを当ててみました。

国内中波放送の現状

日本における中波(Middle Wave: MW)放送は「526.5kHzから1605.5kHzまでの周波数の電波を使用して音声その他の音響を送る放送」と定義されています。しかしながら、この耳慣れた国内中波放送は、2023年より徐々に超短波帯(Very High Frequency: VHF)のFM放送に移行されるようです。既にFMによる補完放送は始まっています。FM放送設備は、中波放送設備に比べ、アンテナや設備のメンテナンスが低コストであることから今後益々移行が進むものと思われます。

中波放送の電波は、昼間に発生するD層を通過するときに大きく減衰し、そのまだ上空にあるE層での反射においても減衰し、その反射波は地表に戻ってきません。しかし夜間になりますと、D層は消滅し、またE層で反射する時の減衰が少なくなるため電離層からの反射波がより強く地表に戻ってきます。またこの傾向は夏季より冬季に顕著に現れます。


このような特性により、

① 特別な装備はいらない。
ラジオ放送と言えば、普通はこの中波放送です。普通の放送なわけですから、構えることなく、普通のラジオで、普通に聴くことができます。

② しかし、受信する日時や季節によってさまざまな地域の放送局が聞こえる。
前述のように、中波放送の電波伝搬は、一日のうちでも、日中と夜間、それから夕方から夜へ、また夜から朝へ変わる時間帯、或いは季節によって、聞こえる放送局が変わります。一日のうちでも、昼間は、ローカルや隣接県の放送が強力に聞こえますが、夕刻から夜に時が進むに従い、当地、京都でいえば、遥か北海道や九州の放送が聞こえ出します。

今回は、中波民放局について、今、拙宅では、何が聞こえているかのバンドサーチをしました。各放送局は、全国ネット番組の合間にローカルニュースや番組を放送しており、大変楽しいです。国内中波放送の受信とはいえ、遠距離受信ですので、その日のコンディションによっても聞こえたり、聞こえなかったりもしますので、なかなかスリルもあります。

③ そして奥が深い
短波放送受信同様、中波受信も楽しいです。受信は、ラジオがあれば良いのですが、アンテナや、受信場所など、すこし工夫をするだけで、国内中波だけではなく、アジア各国の放送をはじめ、北米、オーストラリアからの放送を自宅で聴くチャンスに巡り合えるかもしれません。BCLの中には、外房や離島に移動して、大型アンテナを張り、なかなか受信できない海外の珍局を狙うツワモノもおられます。

ところで、中波放送の魅力を語る時、FM放送のようにHi-Fiな「音」ではなく、短波放送の「音」とも違う中波放送ならではの「音」をあげたくなるのは、昭和生まれのせいでしょうか。私は、中波放送の「音」で聴くあの頃のヒットメドレーが大好きです。

今回の受信場所と装備について

受信場所: 京都の自宅
市街地中心部からやや離れていますが、中波的には、近くに20kW出力のKBS京都(1143kHz)があり、Sメータ読みで9+40dBをこえて入感する強電界地帯です。

普通のラジオだけでも大丈夫と申しましたがそれでは面白くありませんので、今回は2種類のセットを準備し、聴き比べました。

セットA
受信機: ICOM IC-7851
アンテナ: 先月建てた、6.5m長のモノポールアンテナ+カウンターポイズ。(但し、ATUなしの状態で使用。)
アンテナトップは15m高。

セットB
受信機: SONY ICF-SW7600GR
アンテナ: Wellbrook Communications Active Loop ALA-1530LN
地上高は17m。

〇受信機について

ICOM IC-7851…言うまでもなく、世界トップレベルの受信性能を備えたアマチュア無線用トランシーバです。

SONY ICF-SW7600GR…BCLラジオのベンチマークといえる優秀な受信性能をもつワールドバンドラジオです。上下の側波帯の選択が可能な同期検波を装備しています。この同期検波は大変優秀です。また、SSBを聴くことも出来ます。本当に良いラジオですが、残念なことに、現在は販売を終了しています。

〇アンテナについて

IC-7851には先月たてたばかりのモノポールアンテナを使いました。モノポールの長さは6.5mです。それに、5m長と10m長のカウンターポイズを合計7本バランに接続しています。かたやICF-SW7600GRには、ALA-1530LNを使いました。このアンテナは中波帯までカバーできるアクティブ型のループアンテナです。ALA-1530LNからの同軸ケーブルとICF-SW7600GRの接続は市販のアダプタを使用しました。このアダプタにはアッテネータが付いており、とても便利です。


SONY ICF-SW7600GR


短波ラジオに外部アンテナを接続するアダプタ(アッテネータ付)


モノポールアンテナとALA-1530LN

中波バンドを聴く

最初に、2種類のアンテナによる受信状況の違いをIC-7851のスペクトラムスコープを使って比べてみます。


上表は、左側がモノポールアンテナ、右側がALA-1530LNアクティブループアンテナです。また上から昼、夕刻、夜のバンドの状態です。バンドスペクトラムを見ますと、モノポールアンテナよりアクティブループの方にゲインがあることがわかります。また、昼より夕方、夕方より夜の方が多くの局がバンド内に見てとれます。

下表は、昼間から夜にかけて、受信できた放送局です。


受信できた放送局リスト

※表中の放送局の確認は、周波数、局名アナウンス、ネットアプリで聴く番組との照合、実際の放送内容(視聴者お便りの住所や番組中の話題)などによりおこないました。

考察

国内の中波放送局(民放)はおよそ50局あります。今回の受信ではその中の30局以上を受信することが出来ました。複数の異なる放送局が同じ周波数で放送を行っている場合もありますが、表では局名の確認ができた局のみを記載しました。

中波放送は、9kHz間隔の決められた周波数で放送が行われています。このため、受信機のIFフィルタは5kHzもあれば充分で、IC-7851が装備する、高機能なフィルタなどは、実際のところ、あまり必要ではありません。

自宅は前述のようにKBS京都放送(1143kHz)の強電界地帯であり、1143kHz±9kHzでは、盛大なかぶりこみがあり、1143kHzの下側の隣接チャンネルにある文化放送の受信で、ICF-SW7600GRの同期検波が威力を発揮し、IC-7851をしのぐ受信状態を得られたところなどは面白いです。

その他の受信においては、アマチュア無線機(IC-7851)+アマチュア無線のアンテナ(モノポールアンテナ)でも、ポータブル短波ラジオ(ICF-SW7600GR)+ALA1530LNでも、特筆すべき大きな差はなく、どちらでも昼間の近距離受信、夜間の長距離受信を楽しめることがわかりました。しかし、S/N比的にはアクティブループアンテナであるALA-1530LNが有利であるように感じました。

昨今の短波放送は、国際バンドの31mb(9250kHz~9900kHz)や25mb(11600kHz~12100kHz)のみならず、その他のバンドでも、放送内容が理解できる日本語や英語の放送が本当に少なくなりました。番組の内容がわからなくても珍しい放送が聞こえた! (受信できた!)という喜びはあるのですが、できれば、番組の内容を楽しみたいものです。

その点、国内中波は良いですね。標準語であれ、お国訛りであれ、番組のお話は、ほとんどわかります。中波放送は、ローカル情報を主軸にした番組も多くあり、その地域ならではのお話を聞くことができます。例えば、近くの植物園では、バラが咲き始めましたよとか、どこそこのお店で売っているお弁当が大人気で美味しいとか、ちょっと面白いお話をネットよりも早く知ることができたりします。

かつて、BCL華やかしころ(1970年代)「世界の情報をいち早くキャッチ。いながらにして、世界旅行の気分!」といったうたい文句がありましたが、今回の場合は、「国内の耳よりニュースをいち早くキャッチ。おうちで国内旅行の気分!」といったところでしょうか。この時節ですので、お部屋でのんびり国内中波放送を聴いているというのも良いことだなと思います。

さて、そろそろまとめにかかります。

ゼネカバ受信を備えたアマチュア無線機と交信に使うアンテナで沢山の国内中波局が良好に受信できるということがわかりました。近くの放送局であれ、彼方の放送局であれ、中波放送の番組はなかなか面白いものが多く、その魅力を再発見した2020年の春です。放送の内容を楽しみ、受信内容や受信状況、番組に対する感想などを受信報告書として放送局に送りますと放送局から受信確認証、あるいは綺麗なはがきでのお礼状が届いたりすることがあり、これもまた、楽しみの一つです。出来れば夜に中波放送を聴いてみませんか? 楽しいですよ。

日本では、非常事態宣言が発出され、大変厳しい状況が続いていますが、お互いに心身の健康に気を付け、負けずに頑張りましょう。拙文をお読みいただいている皆さんとご家族、お仲間のご健康と安全を祈念致します。

Very Best 73&88.

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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