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車内シャックの構築と運用

その6 車内シャックでの運用

月刊FB NEWS編集長 JS3CTQ 稲葉浩之

これまでの記事では車内シャックの構築について説明しました。今回は最終回として、運用例をご紹介いたします。一言で運用とは言っても、その内容は多岐にわたり、全てのジャンルを説明できるものではありませんので、筆者が移動で主に運用しているHF帯でのCWとRTTYモードでの運用例となります事、あらかじめご了承をお願いします。

アンテナの準備

本年のいわゆるシルバーウィークの最終日となった9月22日(祝)、この日は天気が良くなかったものの、空き時間があったため、空海が開いたことで有名な高野山方面に移動運用に出かけました。具体的な運用市町村は和歌山県伊都郡高野町です。


標高約1000mの地点。天気が良ければ絶景です。


HF用のモービルホイップアンテナをバンパーの基台に設置。

今回の運用場所は傾斜地であったため、レベル調整器具を使用して、車両の水平を保ちました。車体が斜めの状態で車内で長時間運用すると、体を水平にしようとして力が入るため、座り心地も良くない上に疲労が増大するからです。タイヤで踏むモノはコンクリートブロックでも、枕木でも、車体の重量で変形しないものならば有効ですが、市販のレベル調整器具を使用すると、乗り上げるのが容易ですし、さらにかさ上げする高さを数段階で調整できるため非常に便利です。


市販のレベル調整器具をタイヤで踏んで車体の水平を保つ。

車内シャックの準備

今回持ってきたリグはIC-705です。ローパワー機ですが、コンパクトなので置き場所に悩みません。テーブル(ちゃぶ台)の上にIC-705を据え置きし、さらにCWパドル、ワイヤレスキーボード、マウスなども置きました。

つぎに、IC-705には下記の4本のラインを接続しました。
1. DC電源ケーブル(10W運用のための外部DC電源供給用) (その4参照)
2. 同軸ケーブル(アンテナ接続用)
3. USBケーブル(リグコントロールとCW/RTTY打鍵のためのパソコンとの接続用)
4. CWキーイングケーブル(エレキーユニット※を介して、手打ちのためのCWパドルとの接続用) ※WinKeyer


DC-DC昇圧コンバーター周りの様子 (入力12.0V、出力13.7V)

IC-705の電源を入れた後、パソコンの電源も投入して、ログとして使用するCTESTWINを立ち上げました。このときの時間は14:15でした。

運用

まずは10MHzから運用すべく、10125kHz付近でSWRを測定したところ、1.5以下に落ちていましたので準備完了です。バンド内をワッチすると7エリアの局が1局だけ聞こえましたので、バンドはオープンしていると判断して、空き周波数でCWでのCQを数回出しました。しかし応答がありません。手持ちのスマートフォンでテザリングを行い、パソコンをインターネットに接続して運用掲示板を確認しながら、その後10分間ほどCQを出してみましたが、全く応答がありません。10W出力に1m長ほどのモービルホイップでは厳しいコンディションだったと思われます。さらに唯一聞こえていた7エリアの局も消えてしまいましたので、10MHzの運用を諦めました。


10MHz CWで、CTEWTWINからCQ送信中

そこで、一旦車外に出て、アンテナを7MHz用のホイップに取り替えました。7MHzのCWバンドをワッチすると数局の信号が聞こえましたので、期待が持てそうです。SWRに問題のないことを確認後、14:30に7013kHz付近でCQを出すと1エリアの局から応答がありました。これが、この日の移動運用でのファーストQSOとなりました。その後10分間で3局とQSOができましたが、ここで途切れてしまいましたので、次はRTTYモードを運用することにしました。

空いていた7035kHz付近でCQを出したところ、先にCWでQSOできた7エリアの局と繋がりましたが、その後が続かず20分間くらい粘りましたがダメでした。RTTYモードは年々運用する局が減りつつあり、さらにCWモードよりも飛ばない(QSOするにはCWよりも高いS/Nが必要なため)ので、その時のコンディションでは厳しかったようです。


RTTYモード運用中 (使用ソフトはCTESTWIN+MMTTY)

15:10に再びCWモードに戻り、15:30までの20分間で5局とQSOできました。CWならば10Wでも交信できるコンディションのようです。15:30に再びRTTYモードにスイッチしたところ、今度は3局とQSOできました。16時も近づき、そろそろ3.5MHzが使える頃かなと考えて、アンテナを3.5MHz用のホイップに取り替え、何度かCQを出したところ3エリアの局から応答がありました。しかしその後のCQには全く応答がなく、さらにCWバンド内に他の信号は確認できなかったため、3.5MHzを運用するには時間が少し早いと判断して16:00に運用を終了しました。

結果として、2時間弱の運用で2バンド(7MHz、3.5MHz)、2モード(CW、RTTY)の合計14QSOでした。できればもう少しQSOしたい気持ちはありましたが、コンディションアップも望めそうになく、一応、2桁のQSO数ができたので、良しとしました。


和歌山県伊都郡高野町移動運用結果

まずはアンテナを取り外し、無線機を片付け、最後にレベル調整器具を撤収して帰路につきました。これまでの連載でご紹介したように車内シャックが構築されているので、撤収時間は5分強程度でした。短時間で設営、撤収ができることが最大のメリットだと思います。道中、高野山からの下山途中にある「やどり温泉」に浸かり、リフレッシュして帰宅しました。

これにて、本連載は終了となります。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。次回はぜひお空でお会いしましょう。

(完)

車内シャックの構築と運用 バックナンバー

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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