2015年9月号
連載記事
残念ながらIC-7851の操作はできませんが、傍らに設置してあった受信機(IC-R75)で受信を行ってみることにしました。受信は誰でも可能です。
あ「このモニターはなんだろう。キュインキュイン鳴って面白いかも~」
あーちゃんはドキドキしながら受信機のダイヤルを回してHF帯の受信を体感しました。
外国人スタッフ「Hey, beautiful lady. You're a HAM too, aren't you?(やあ、お嬢さん。 キミもハムなのかい?)」
受信機をいじっていたあーちゃんは、不意に誰かから話しかけられました。それは、テントにいた外国人スタッフの男性でした。
外国人スタッフ「Nice to meet you. I'm Banda. What is your name?( 初めまして。僕はBandaと言います。キミの名前は?)」
あーちゃんは英語が得意ではありませんが、話しかけられたからには何か返事をしなくてはいけません。
あ「ハロー!ナイス・トゥー・ミーチュー。マイネーム・イズ・アーチャン!!アアチャン!!アー・ユー・オッケイ?」
外国人スタッフ「"Ah-chan"... great!(あーちゃんだね)」
あ「マイ・コール・サイン・イズJP3KGT。ディズ・イズ・マイ・コールサイン!」
片言の英語で説明するよりも紙を見せた方が早いだろうと、あーちゃんは自分の無線用名刺を彼に渡しました。すると、彼も雰囲気を察して自分の名刺をあーちゃんに返してくれました。
外国人スタッフ「OK, OK. Your call sign is "Juliet Papa Three Kilo Golf Tango," I got it. It's too bad that you can't operate the station.(ああ、わかったよ、キミのコールサインはJP3KGTなんだね。今回は運用できなくて残念だったね)」
あ「アーチャン!!アイ・アム・ハム!ウィー・アー・フレンド!!(^o^)丿」
外国人スタッフ「・・・」
初めての外国人とのアイボールに成功したあーちゃんは大満足です。
テント内には、スカウトの少年少女の科学実習のために用意された、さまざまな無線体験用の設備がありました。その中には、モールス符号を習得するための、縦ぶれ電鍵と低周波発振器も用意されていました。外国人スタッフの人に教えてもらいながら、あーちゃんはモールス符号を打つ練習をしました。
あ「SOSってどうするんですか?」
外国人スタッフ「Like this…"Dit Dit Dit Dah Dah Dah Dit Dit Dit.(トトトツーツーツートトトだね)」
あ「(キーを押すあーちゃん)ふむふむ。よし、これで万が一の時は、私だけでも生き残れるはずだ・・・」
注)「SOS」は船舶又は航空機が遭難通信を行う際に前置する符号で、アマチュア無線の非常通信で前置する符号は「OSO(無線電話の場合は「非常」)」です。あーちゃんの真似はしないでください。
今回、世界スカウトジャンボリーのために臨時レピータが設置されていました。あーちゃんは特別にレピータを見学させてもらうことができました。レピータはたくさんの機材が積まれたワゴン車の中にありました。
あ「へぇ、意外とレピータって小さいんですね。そうだ、せっかくID-51を持ってきたんだし、このレピータからCQを出してみようっと♪自分のトランシーバーなら運用できるしね」
何局かと交信を楽しんだあーちゃん。そうこうしていると、いつの間にか日が暮れ始めていました。全員に声がかかり、テントにいたスタッフが一ヵ所に集められました。どうやら重要なミーティングが始めるそうです。
スタッフ「Just a reminder for all of you that the ARISS School Contact is scheduled
tonight. I'm going to give you some information, so listen carefully and get
ready for the contact.(今晩行われるARISS school contactのスケジュールを確認します。みなさん、よく聞いて、今晩に備えましょう)」
あ(ヤッバ、英語だよ・・・)
正直ほとんど意味が分からなかったあーちゃんは、ミーティングが終わると、近くにいた日本人スタッフの人に尋ねました。
あ「すみません、さっきは何の話をしていたんですか?」
日本人スタッフ「あら、さっき一緒に聞いていなかったかしら?今日のARISS school contactの段取り確認よ」
あ「え?!ARISS school contactって・・・!」
その単語をあーちゃんは以前耳にしたことがあります。宙ガールであるエリーが、一時期しきりにその単語を喋っていたのをあーちゃんは思い出しました。(3人娘チャレンジ物語第3話をご覧ください)
あ「それって、宇宙飛行士と無線で交信できるやつですよね?」
日本人スタッフ「ええ、そうよ。世界中が注目する、科学プログラムの目玉イベントなの」
あ「私も交信できますか?!宇宙飛行士とっ!」
日本人スタッフ「残念だけど、これもスカウト対象のプログラムなのよ」
あ(あ゛~~~、ガールスカウトやっとくんだった~!)
あーちゃんはショックで膝から崩れ落ちそうな気持ちになりました。(本日二度目)
ですが、落ち着いて考え直してみると、エリーの目標である宇宙飛行士との交信を、先に自分が体験してしまうのは申し訳ないような気がします。
日本人スタッフ「ちょうど今から、ARISS school contactに使うクロス八木アンテナの建設を始めるところだから、見学してきたらどうかしら?」
あ「すごーい!行ってきます!!」
アンテナそのものは時々見かけますが、アンテナを組み立てる光景は今まで一度も見たことがありません。テントの仕切りの向こうでは、大小のアルミパイプがたくさん並べられ、その周りを男の人たちが囲んでいました。
日本人スタッフ「あーちゃんも組み立ててみるかい?」
あ「はい!ぜひぜひ、やらせてください!」
あ「この細いパイプをネジでとめればいいんですね?」
教えてもらいながら慎重にネジを回します。たった一つ取り付けるだけでも、「このアンテナが子供たちの夢を支えているんだなぁ」と思うと、とても緊張します。後はエキスパートの人たちにバトンタッチ。アンテナはテキパキと組み立てられていきました。
アンテナを設置中のスタッフ
School contactを行うスカウト20人を集めたリハーサル。夕方から何度も念入りに繰り返された
夜が近づき、とうとうARISS school contactのプログラムがスタートしました。あーちゃんはスカウトやスタッフの邪魔にならないよう、少し離れた場所からその様子を見守りました。
この日は満月。お月様が子供たちを静かに見守っています。
ISSが接近し、School contactが始まりました。スカウトが1人ずつIC-9100のマイクを握り、ISS乗組員の宇宙飛行士に質問を行い、宇宙飛行士からは質問への答えが明瞭に返ってきます。
School contactは順調に進み、20人のスカウト全員が宇宙飛行士との交信を達成しました。
あ「みんなの笑顔、いいなぁ。宇宙飛行士との交信。きっと一生忘れられない思い出になるね・・・」
心から感動したあーちゃんなのでした。
次回・・・
今年もハムフェア会場を3人娘が練り歩く!?