2015年6月号
連載記事
第3話 鉄道無線にチャレンジしてみた
第2話「ミリタリーエアバンドを聞いてみた」で、ブルーインパルスの交信を聞いたあーちゃん。その際IC-R6という受信機を手に入れたことで、あーちゃんの中でさらに無線の世界が広がりました。
そんなあーちゃんは「せっかくIC-R6を買ったのだから、他に受信を楽しめる機会はないかなぁ」と日頃からアンテナをたてていました。(お家に建てる無線用のアンテナではありません)
そんな折、ある日の会社でのランチタイムでのこと。
アン 「あーちゃんって、ネコ好きだったよね?」
あーちゃんの職場の先輩で、鉄道ファンのアン先輩があーちゃんにそう尋ねてきました。
あ 「? はい。ネコに限らず動物は全般大好きですけど・・・」
アン 「うんうん。あのね、最近私の知り合いの子が『たまでん』って言う電車に乗ってきたんだって。たまでんって、ネコをモチーフにしてあるらしくて、『めちゃくちゃ可愛い!』って大絶賛してたよ。あーちゃん、ネコ好きなら乗ってみたらどうかな」
あーちゃんのアンテナが何か楽しげな予感をキャッチしました。
あ 「『たまでん』ですね! ちょっと一回調べてみます♪」
あーちゃんはデスクに戻るとPCで『たまでん』を検索してみました。
アン (ふっふっふ。これであーちゃんも鉄子の仲間入りじゃぁ・・・)
背後で先輩が悪い笑みを浮かべているとも知らずに・・・。
「たまでん」とは、和歌山県の北西部にある和歌山電鐵貴志川線を走る「たま電車」のことです。
参考:和歌山電鐵株式会社 http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/index.html
たま電車の「たま」とは、和歌山電鐵貴志川線の貴志駅で、なんと「ウルトラ駅長」に任命されたネコの名前からきています。たま電車は、そんなネコのたまをモチーフにデザインされています。
あ 「キャー♥ めっちゃかわいい~♥」
インターネット上に掲載されている画像をみて、がぜん興味がそそられたあーちゃん。
エリーとサミーに一緒にたま電車に乗らないかお誘いしたところ、
エ 「ごめん、私ネコアレルギーで、ネコを見るだけで鳥肌が・・・」
サ 「電車? 電車よりクルージングっしょ♪」
と、取りつく島もありませんでした。
エ 「でも、電車ときたら、鉄道無線があるね。貴志川線の無線通信なんて普段は絶対聞けないし、その時何か聞けるといいね(^o^)」
断られてしょんぼりしていたあーちゃんでしたが、
あ (鉄道無線?!)
新たな無線の世界の予感に胸が躍りました。せっかく買った2台目のレイディオ、使わにゃ損というやつです。
こうしてあーちゃんは、相棒IC-R6(と一緒にID-51も)を持ってたま電車へと向かったのです!
大阪府と和歌山県を結ぶJR阪和線の特急くろしおに乗って、まず目指すのはJR和歌山駅です。JR和歌山駅と和歌山電鐵貴志川線和歌山駅は直結しており、駅構内の床に描かれたネコの足あとマークが貴志川線までの道しるべとなっています。
ネコのたま駅長が勤務しているのは、和歌山電鐵貴志川線の終点貴志駅です。あーちゃんは、一日乗車券を購入することにしました。和歌山駅と貴志駅を往復するなら、一日乗車券を買うとちょっとお得なのです。
貴志川線和歌山駅のホームでは、たま電車がお客さんたちを待っていてくれました。
あ 「きゃ~!たまがいっぱい!!\(^o^)/」
ホームに着いたあーちゃんのテンションは急上昇!
周囲には撮り鉄(電車の写真を撮ることを趣味とする人)と思しき日本人や、わざわざたま電車に乗りにやって来たのであろう外国人もいました。
あ 「内装も可愛いな~♪ おもちゃ箱みたい♥」
2両編成のたま電車ですが、それぞれの車両でデザインが異なります。
あ 「電車の中に本棚がッ?! あ、この絵本懐かしいなぁ」
本棚の中にはこども向けの絵本や、ネコをテーマにした雑誌などがありました。
ちなみに、貴志川線の運賃の支払い方法は、路線バスとよく似ています。乗車の際に整理券を取って、降車の時には、先頭車両の運転手さんのところまで行って、運賃箱に運賃を投入します。一日乗車券の場合は、運転手さんに見せるだけでOKです。
貴志川線和歌山駅での停車時間を満喫したあーちゃん。
あ 「それでは鉄道無線にLet’s try!!」
IC-R6を事前に調べてあった貴志川線の周波数に合わせて、今回の本題「鉄道無線」を聞いてみます。
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
「・・・」
無音です。
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
「・・・」
やっぱり無音です。
アナウンス 「終点、貴志駅です」
あ 「・・・ふむ」
結論から言うと、その日あーちゃんの愛機IC-R6に、たま電車の無線が入ることはありませんでした―――。
あ 「・・・仕方ないかぁ」
というのも、ある意味それが鉄道無線の特徴でもあるのです。
ここからは、風情豊かな貴志駅の景色と、鉄道無線をあきらめてまったりと駅を満喫することにしたあーちゃんの写真を交えながら、鉄道無線について簡単に解説していきたいと思います。
貴志駅に到着。駅の屋根にはネコ耳と「TAMA」の文字が。
鉄道無線を分類すると、列車の運行に関する列車無線と、車両や線路で作業をする際に使う保線用無線がありますが、鉄道無線というと概ね列車無線のことを指します。
受信はFMモード。各鉄道会社によって周波数は異なり、一部の地下鉄などを除くとMHzが単位のUHF帯とVHF帯が使われています。ID-51では聞けませんが、IC-R6なら鉄道無線を受信することができます。
※ただし、首都圏のJR列車無線のように、デジタル方式の通信システムに移行した路線は残念ながら受信できません。
制服が自由にレンタル可能。駅員さんになりきって記念撮影もできちゃいます。
平時の鉄道無線は、前回・前々回にご紹介したエアバンドとは違い、「トラブルがあった時」にしか交信がありません。(例えば悪天候によるダイヤの乱れや事故など)
※鉄道会社によってはその日その列車が車庫を出発する時に、無線のチェックを兼ねて基地局(運転司令)と通話試験を行うところもあります。
ワッチしていても無音が続いたということは、その日の貴志川線はとっても平和だったということです。
駅長室でおやすみ中のたま駅長を発見!
たま駅長がお休みの日は「ニタマ駅長」がお客様をお出迎えしてくれるそう。
ニタマ駅長は伊太祈曽駅でスーパー駅長を務めるネコのことです。
鉄道無線には、通信のない時、以下の3つのパターンがあります。
①「電波がでないタイプ(単信方式に多い)」
②「キャリアだけ出ている(複信方式)」
③「ピーという『空線信号』が出ている(一部の複信方式)」
※単信方式・・・簡単にいうと、片方が喋っている間、もう片方は喋ることができない交信方法
※複信方式・・・電話のようにお互いが同時に喋ることができる交信方法
※キャリア・・・声を搬送するための電波
JRや首都圏の私鉄の鉄道無線の一部では、交信が行われていない間は「ピー」という空線信号が鳴り続けます。交信が入るまでの間、この空線信号を聞き続けるのは、想像するだけでも「ちょっと・・・(>_<)」ですよね。
駅舎の中にはおしゃれなカフェが併設されています。
空線信号の音を無音にしてくれる「空線キャンセラー」機能がIC-R6には搭載されています。この空線キャンセラー機能のおかげで、交信のない時には余計な音を聞かなくてもすむのです。
おやつタイム。「たまカラーのジェラート」と「とびつきたまシュー」とアイスコーヒー。
・・・食べ過ぎ?
鉄道無線の予備知識を、予めハムショップの店長から聞いていたあーちゃんは、「もしかしたら何も聞けないかもしれない」ということも半ば覚悟していました。
あーちゃんは、今日は聞けないものと割り切って、たま電車を満喫することにしたのでした。
赤色部分が和歌山電鐵貴志川線。
帰宅してから、ID-51で記録していたGPS情報をGoogle Mapでプロットしてみると、この通り。今日の自分の旅路をマップ上に描画できました。「1日でこんなにも移動したのか!」と思うと、なんだか感慨深いですね。
あ 「エリー、鉄道無線聞けなかったよ・・・」
エリーに電話をして、今日のことを報告します。
エ 「そうなんだ・・・。仕方ないね。またチャレンジすればいいよ^^ 鉄道は日本全国で毎日走ってるんだから!」
エリーに優しく励まされ、あーちゃんは再チャレンジを胸に誓いました。
そしてまたまた会社のランチタイム。
あ 「先輩!またオススメの電車教えてください!」
あーちゃんはアン先輩に突撃!先輩は持っていた鉄道雑誌を落としそうになりました。
アン 「わぁ、ビックリした。なになに、たま電車そんなに気に入った?」
あ 「はい、たま電車はそりゃぁもう、可愛くて最高でした♥ じゃなくて、また電車乗りに行きたいんです!できたらテンションあがる感じの電車に」
アン 「いいねぇ・・・。んじゃぁ今度は別の電車に一緒に乗りにいこっかぁ♪」
あ 「わーい! 行きます行きます! 次こそ鉄道無線聞くぞぉ!」
アン (よしよし、いい調子だぁ・・・)
あーちゃん、今度こそ鉄道無線が聞けるといいね!
次回・・・
無線の世界を広げつつあるあーちゃん。次は交信にチャレンジ!