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特別寄稿

続カンボジアのアマチュア無線事情

JA3ULS 木村千良

2023年10月2日掲載


FCC試験合格者とVE達

カンボジアで資格試験実施

前回の記事の中で「今後は電気通信教育活動の一環としてFCCの試験をVE(VE: Volunteer Examiner、ボランティア試験員)の資格を持つNPICの教員とカンボジア在住のハムの協力によって定期的に実施し、カンボジア人アマチュア無線家の育成を図るとともに、アマチュア無線がカンボジアにおいても広く認知されるように活動していこうと考えています。」とお伝えしましたとおり、去る7月31日にNPIC(National Polytechnic Institute of Cambodia)に於いて、カンボジア、日本、アメリカの3か国4名からなるVEカンボジアチームによってFCCの試験が実施されました。


VECカンボジアチーム


FCC試験風景

当日はNPICの学生・教員の約20名の受験者があり、その結果学生14名と教員2名がまずはテクニシャンクラスに合格しました。アマチュア無線については全く下地となるものがない中、試験案内のアナウンスから短期間での受験準備となったにもかかわらず約8割の合格者が出たことはNPIC電子工学科電気通信コース主任のUn先生(XU7AKM)の熱心な指導のおかげとVE一同大変うれしく思っています。


Un先生(XU7AKM)

アメリカのコールサインを取得

早速アメリカのコールサインを申請し、ほどなくそれぞれ合格者全員にKFφN**のほぼ連続のサフィックスのコールサインが届きました。2022年からFCCの無線局免許申請には35ドル必要となりましたが、ここカンボジアのまだ収入のない学生にとってはこれが大変な負担となります(カンボジア労働者の平均月収は200ドルから300ドル程度といわれています)。幸い今回はKH0AS Mike Adams (XU7AJA)とそのグループから学生たちの費用についてドネーションの申し入れがあり、皆さん無事にアメリカのコールサインを手にすることができました。MNI TKS Mike!


合格に大喜びする学生

カンボジアの免許と費用

カンボジアではアマチュア無線の資格試験制度がないため、外国のアマチュア無線免許(日本の場合は局免許)をベースにカンボジアの免許を申請することになります。カンボジアの局免許はベースとなるライセンスのクラスに関係なく出力は一律100Wになります。

局免許を得るための費用として、申請手数料15ドル(免許更新時は不要)と免許費用25ドルの計40ドルが必要です。免許期間は1年(1月1日から12月末)で、毎年免許更新に際しては免許費用25ドルのみ必要です。ここでもカンボジア人学生の費用負担が重くのしかかります。

クラブ局での運用

XU7***の個人コールサインを取得できないとQRVできないのかというと、そうでもないようです。外国の局免許を持っていると一定の条件の下でアマチュア無線局操作資格があるとみなされ、カンボジアの無線局免許所有者の下でその無線局のコールサインでの運用ができます。ちょうど“外国の局免許=従事者免許”であり、これと“ゲストオペレータ制度の組み合わせ”といった感じでしょうか。そんなわけで、NPICでは資格取得した学生には、まずは個人コールでなくクラブ局XU7AMOで管理者のもと、無線の知識と技術を取得するとともに円滑なオペレートができるよう練習を進めることとし、その準備を進めています。

現在学生たちは目前に控えた学年末考査や各プロジェクト(卒業研究)の仕上げに追われています。これらが無事終了したらQRVを始めることとなります。


カンボジアYLハムの誕生

各局QRV再開!

免許制度の改変による影響でしばらくQRVのない状態が続いていましたが、カンボジア在住各局の努力によりようやくいくつかの問題もクリアーされ、順次再免許の交付がされるようになりました。XU7AKU(山本OM)、XU7AEY(Mr. Larry)、XU7AKG(Mr. Dave)らに続き、XU7AKM(Mr. Un)、XU7AKW(種村OM)、そしてXU7AKJ(木村:筆者)らが再免許を得てカンボジアからQRVしています。既に交信された方もいらっしゃることと思います。

ネイティブオペレータの育成

NPIC電子工学科では、アマチュア無線を教材として積極的に取り入れカリキュラムの改編を進めています。これにより技術者の育成とともに広くアマチュア無線の存在とその楽しさも知ってもらえればと考えています。現地カンボジアの人々によるアマチュア無線局の運用が増えることを期待しています。

日本のハムの皆さんのご協力とご支援をお願いいたします。

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