テクニカルコーナー
2023年9月15日掲載
今回は、専用の特殊治具を使わずに身近な道具でできるセミリジットケーブル加工の方法をご紹介します。
ハムフェア2023のIC-905展示に使われたセミリジットケーブルは、特殊治具を使わずに加工しました。
今回使用したケーブルとコネクタは、下記のとおりです。
・セミリジットケーブル: EXSR-141T-50-CU-CW(トーコネ)
波長短縮率: 69%(PTFEの誘電率2.1から換算)
長さ:530mm
・コネクタ: CON1400-BN(MKTタイセー)
0.141インチケーブル用プラグ
DC~18GHz
セミリジットケーブル: EXSR-141T-50-CU-CW
コネクタは4つのパーツに分かれています。
セミリジットケーブルは、特殊な治具は使わず、身近にある工具を使って加工しました。
・はんだごて
・はんだ
・ラジオペンチ
・精密やすり
・カッターナイフ
・ものさし
・パイプカッター
・ニッパー
加工に使った工具類。
カッターナイフでセミリジットの先端から3mmの部分に、目印となるようケガキを入れます。
~きれいにケガキを入れるコツ~
・カッターナイフをセミリジットケーブルに対してなるべく垂直になるように角度を調整します。
・角度が決まったらカッターナイフをセミリジットケーブルに押し付けながらセミリジットケーブルを転がします。
※カッターナイフに刃こぼれがあるときれいにケガキを入れにくくなるのでなるべく新しい部分の刃を使ってください。
セミリジットの先端から3mmの部分に、目印となるようケガキを入れます。
セミリジットにケガキが入った様子。
次に、カッターナイフでケガキを入れた部分に、パイプカッターで切り込みを入れます。切り込みは外側の銅パイプとその下の絶縁体部分だけにして、心線(内部導体)まで刃が届かないよう注意してください。
ケガキを入れた部分にパイプカッターで切り込みを入れます。
~パイプカッターの使い方のコツ~
・セミリジットケーブルを軸にしてパイプカッター本体を回転させて切り込みを入れます。
・パイプカッターを1回転するごとに少しずつ刃出します。
上記の手順を数回繰り返すと下の写真のようになります。
パイプカッターで刃が心線に届くギリギリのとこまで切り込みを入れます。
このあと、切り込みを入れた部分をラジオペンチで取り外します。
ラジオペンチで不要な部分をつかみ、セミリジットケーブルを回転させながら引っ張ると簡単に分離させることができます。
ラジオペンチで不要な部分を取り外します。
カッターを押し当てて余分な部分を切り落とします。このとき手を切らないよう注意して下さい。ラジオペンチで分離した部分はバリや余分な誘電体が残っているのでカッターナイフで切除して整えます。
※カッターナイフに刃こぼれがあるときれいに切れなくなるのでなるべく新しい刃の部分を使ってください。
カッターを押し当てて余分な部分を切り落とします。このとき手を切らないよう注意して下さい。
カッターナイフで整えた状態です。
次に、ニッパーで心線を2mmの長さにカットします。カッターナイフで整えた断面にものさしを当てながらカットすると誤差が小さく簡単にカットできます。
※短すぎたり長すぎたりすると心線とコネクタの接触が悪くなり特性悪化につながるので注意
ニッパーで心線を2mmの長さにカットした様子。左が加工前。右が加工後。
次に、精密やすりで心線の角を削り、コネクタに挿入しやすくします。
~加工のコツ~
精密やすりは弱い力ですこしずつ削るときれいに造形しやすくなります。
※削りすぎ、先端が中心から大きくずれると接触が悪くなり特性が悪化につながるので注意してください。
精密やすりで心線の角を削り、コネクタに挿入しやすくした様子。
この部分が面一(つらいち)になるよう調整します。
セミリジットケーブルとコネクタ部品をはんだ付けするのではんだごてを当てやすいようにします。
次はコネクタ部分にはんだ付けをします。
矢印の部分にはんだを流し込みコネクタの部品と接合させます。
セミリジットケーブルとコネクタ部品に十分熱が伝わるようにはんだを供給しながら両側にはんだごてを当てます。(はんだを供給することで接触面積が大きくなり熱が伝わりやすくなります)
両側に十分熱が伝わっているとコネクタ部品のへこみの部分にはんだが流れ込んでいきます。
コネクタ部分にはんだ付けをする様子。
はんだ付け後、はみ出た誘電体をカッターナイフで切り落とします。このとき、手を切らないよう注意して下さい。またセミリジットケーブルから完全に熱がなくなっているのを確認してから作業してください。
はみ出た誘電体をカッターナイフで切り落とす様子。
はみ出た誘電体をカッターナイフで切り落とした後の状態です。
コネクタ部品に付属部品のリングをはめ込みます。この時ラジオペンチを使うと簡単にはめ込むことができます。
付属のリングをはめ込んだ後、付属のガスケットをはめ込みます。
加工したセミリジットケーブルをコネクタに押し込み、リングをペンチで挟みながらセミリジットケーブルをコネクタ内部に押し込みます。
リングの欠けている部分を先に押し込むと比較的簡単にはめ込むことができます。
完成した状態。
曲げ加工を行う際にセミリジットケーブルを円柱に押し付けて変形させるときれいに加工することができます。加工にはある程度の径の大きさが必要になるので、今回は例として手すりで加工を行います。
直径25mm以上の円柱推奨。
※直径が小さすぎると加工後のセミリジットケーブルにシワができやすくなります。
手すりにセミリジットケーブルを押し付けて少しずつ曲げていきます。
一気に曲げてしまうと外部導体にシワができ特性が悪化する可能性があります。
シワができないように様子を見ながら少しずつ曲げていきます。
完成した状態。
この手法を使うと複雑な形状でも簡単に加工を行うことができます。
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