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特別寄稿

V6ミクロネシアでのDXpedition - AH-730の活躍

JA2VBK 山村薫

2023年10月16日掲載

年初に、杉山峯一氏、小田裕司氏(コールサインは末尾で紹介)からDXpeditionのお誘いがあり、コロナが一段落したこともあって、9~10月の実施をめざし、杉山、小田両氏がこれまで遠征したオセアニア、インド洋の候補地の中から、現地までの所要時間、ライセンスの取りやすさ、QRVの少なさ等の観点から、ミクロネシア チューク州にあるWeno島を目的地としました。この島にあるBlue Lagoon Resortは、両氏の太平洋アイランドホッピングでQRVしたことがあり、グアムからも飛行機で約1時間少々と利便性も良く、アンテナ設置等の勝手がわかっており、ここに滞在することを決めました。


写真1

参加メンバーは、チームリーダーの小田氏以下、杉山氏、内山洋祐氏(9月18日から参加し、9月25日まで滞在、IC-705でQRV)、鈴木治氏、馬渕茂彦氏、大藤幸一氏、そして50年ぶりにカムバックしてから2年の私、山村薫の計7名を予定していましたが、大藤氏は、都合により、今回参加しませんでした。なお、鈴木氏と私は初めてのDXpeditionです。


写真2

期間は9月17日から9月22日。グアム経由の乗り継ぎに1日かかるので、実質的な運用時間は2日半足らず。持ち込んだ機材は、以下の通りです。


雨期のため現地の天候が不安定で、設置できないアンテナがあり、結果CWの運用はLow Bandのみとなりました。また、予定されていた最終日の運用も早めに切り上げ、撤収作業を余儀なくされました。

私が担当したFT8は、チーム全体の機材重量の制限から、リニアを持ち込むことができず、IC-7300(100W)+AH-730+13m LWという構成でした。ミクロネシアでのDXpeditionが決まってから、JTDX派の私はノーマルモードでの運用しか考えていなかったのですが、出発が近づくにつれて、日に日に不安が大きくなり、出発前日、とうとう耐えきれなくなってF/Hモードの運用を決心。あわててPCにWSJT-Xをインストール。自宅からのトライアルは許されないので、うまくいくかどうかは、現地に着いてから、2018年版のマニュアル(最新版のWSJT-Xのインターフェースと合っていない)を片手に確認するほかありません。

現地に着いてリグ、アンテナ、AH-730をセットし、運用しようとしたところ、ここでつまずきました。SWRが下がらないのです。どうしたんだろうとベランダのフェンスに固定したAH-730を眺めていると、先輩から二点注意を受けました(写真3)。


写真3

(1) 「給電点から伸びているアンテナワイヤーを、樹脂製のベルト使って、間接的にフェンスに固定しているが、これを外し、アンテナワイヤーをフェンスからできるだけ離すこと。」
私がアンテナワイヤーをフェンスに間接的に固定したのは、給電点の圧着端子に掛かるテンションを和らげようとして行ったことですが、アンテナが周りのもの(特に金属)に影響を受けるのは経験でわかっていたので、納得しました。

(2) 「AH-730のアース端子に取り付けた16本のカウンターポイズを地面に着くところで束ねてあるが、これを解いて広げること。」
これも束ねてしまっては、コンデンサーにならないので、考えてみればよくわかります。

結果、SWRは1.0~1.2に落ち着きました(6mは運用する予定がなかったので、SWRを計測していません)。再開局してから固定局の運用しかしてこなかったこともあり、機転が利かず、反省しました。

SWRも下がって、恐る恐る始めたFoxモードも何とか動くようになりましたが、正直言って、私の機器構成について、さほど大きな期待はしておりませんでした。ところが、終わってみると、2日半で約3,000局との交信、61のentitiesという驚くべき成果。IC-7300とAH-730の組み合わせの効率の良さに、メンバー全員がびっくり。AH-730を持ってきて本当に良かったと思いました。

WSJT-XのFoxモードですが、PCの時間は合っているのに、聞こえている信号をデコードできないという現象が度々起こり、どうもPC(CPU: i5-8250U)の能力に問題があるようです。多くの方に呼んでいただいたのに充分にお応えすることができず、申し訳なく思っております。ちなみに今回のチームとしての総交信局数は、約6,200局です。


写真4

今回滞在したBlue Lagoon Resortは、有名なダイビングスポットです。日本の連合艦隊の基地があったこの地(旧名トラック諸島)に、第二次世界大戦末期の空襲を受けて沈んだ多くの艦船が眠っており、それらを巡るダイビングツアーに参加するダイバーのチームが何組かおりました。

Blue Lagoon Resortでは、シャワーからお湯が出ない(故障中)、トイレのタンクに水がなかなか溜まらない(これは自分で直しました)等の問題が散見されました。とはいえ、現地の一般的な生活事情からすれば別世界です。良かった点は、客室が広く、室内でWi-Fiが使え、飲料水の小型タンクが各室にあり毎日補充されるので水には困りませんでした。スタッフをとりまとめているマネジャーに話を通し、他のゲストの邪魔にならなければ、アンテナを自由に設置でき、マネジャーに依頼すれば、スタッフがスルスルと椰子の木に登って(写真を撮るのを忘れました)、ダイポールアンテナを固定してもらえる等々、時々行われる芝刈りの時に同軸ケーブルへの注意が必要ですが、DXpeditionのロケーションとしてはお勧めです。


写真5

また、これはホテルの問題ではありませんが、火力発電所のジェネレーターを定期的に切り替えるようで、短時間の停電が発生します。物資を島外からの搬入に頼っているため、物価は高めで、レストランを利用する代わりに、ホテルに車を出して貰い、現地のスーパーマーケットで食料品を購入し、時間と食費を節約するという先輩の智恵を学びました。


写真6

ミクロネシアからの帰路、グアムで日本への乗り継ぎに時間があったので、KH2JU Dannyさんにお会いしたところ、5月にグアムを直撃した台風(2号)でタワー2本が倒れてしまったとのこと。それを聞いて、ミクロネシアで大活躍したAH-730をチームリーダーから同氏にお譲りしたので、もし彼のシグナルをお聞きになりましたら、コールしてあげて下さい。

もう一つ、今回のDXpeditionで大助かりだったのは、7L4WVUさんとJE3QDZさんの共同製作のアンテナ・アナライザーTE-2101です。チームリーダーが暫く前に発注していたものが出発前に届き、コンパクトで使い勝手が良く、移動運用には手放せません。


写真7

最後に、今回はDXpeditionには参加しませんでしたが、事前の準備を行うに当たって施設を提供してくださったJK2ITS大藤氏、また、応援して下さった浜松地区のDXerの皆さんに、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。


チームメンバーの紹介およびQSLインフォメーション(http://nh0aa.us/)

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