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ものづくりやろう!

第二十九回 レストアのような事に挑戦(2)

JH3RGD 葭谷安正

2023年10月2日掲載

前回の概要

前回はヤフオクで入手した9R-59Dを修復するために、事前調査をおこないました。

入手した9R-59Dはヤフオクの説明に記載されていたとおり中波帯の受信が可能でした。取扱説明書に記載されている局部発振器などコイルパックの中波帯バンド(Aバンド)に関わるコイル、トリマーコンデンサを調整した結果、AM放送が受信できることを確認しました。Aバンド(中波帯)以外のバンドではCバンド(3MHz~15MHz)をラフに調整してみましたところ、感度はよくありませんが海外のAM放送を受信できました。

取扱説明書の回路図には真空管のバイアス電圧が記載されていましたので、その電圧を確認しました。バイアス電圧測定値が取扱説明書に記載されている値と大きく異なっている箇所については、周辺の回路を調べて規格値と大きく異なる値になっている抵抗をいくつか発見しました。いったん作業を終了し抵抗を入手することにしました。

部品の入手

不良の部品は、まだ抵抗のみしか発見できていませんが、発見した不具合をゆっくりと直していくことにしました。手持ちの抵抗には2分の1ワットの物がありませんでしたので購入しました。このごろXYLからは、もう断捨離していく年齢であることを説かれているのですが「俺は90歳まで生きるぞ。20年もたてば抵抗なんて売っていないかもしれない」というわけで、不具合箇所の抵抗数点を購入するのではなく、「エイヤー」とセットを買ってしまいました。抵抗の種類はE12系列すべて+αの130種類、各値が10本ありますので、しめて1300本あります。使い切ることないだろうな。購入するときはうれしいですが、現物が手元に届くと「また無駄なものを買ってしまった」と我ながらあきれます。2500円ほどです。安いのか高いのか?

写真1が届いた品物です。


写真1 購入した抵抗セット(130種類、1300本)

部品交換

部品交換です。プリント基板と違って広々とした空間にはんだ付けされていますので、楽に交換できます。

前回の記事で記載しましたが、抵抗値が大きくなっている次の抵抗器を交換してしまいました(表2)。部品がたくさんあると気兼ねなく交換できます


表2 交換した抵抗器

まだまだ不良部品あるかもしれませんが、電源を投入して動作を確認したくて仕方がありません。抵抗の交換前に部品が燃えることもなかったので、誤配線がないか確認してスイッチをONにすることにしました。

バイアス電圧測定

スイッチをONにし、真空管が暖気した頃に各部位のバイアス電圧を測ってみました。

部品交換前と比較したものが図3です。交換前の電圧と併記してみました。緑色が交換後のバイアス電圧です。


図3 真空管各部のバイアス値

図が小さくて見辛いかもしれませんが、取扱説明書中に記載されているバイアス値に近い値になりました。ただ、局部発振器V3のグリッド電圧が取扱説明書の値の30分の1ほどしかありませんので、まだ不具合があるかもしれません。しかし、そこは置いておいて電源投入することにしました。

局部発振部の確認

局部発振部のグリッド電圧の値が取扱説明書に記載されている値と異なっているので不安がありますが、局部発振部の出力信号を見ることにしました。回路図の場所では、V3のグリッド出力です。これがV2の第1グリッドに入っていますので、V2の第1グリッドにオシロスコープのプローブを当てて確認しました。結果が写真4です。写真4の左上から順番にAバンドからDバンドの出力です。

各バンドの受信周波数帯は次の範囲でした。
 Aバンド: 550kHz ~ 1.6MHz
 Bバンド: 1.6MHz ~ 4.8MHz
 Cバンド: 4.8MHz ~ 14.5MHz
 Dバンド: 10.5MHz ~ 30MHz


写真4 局部発振部の出力

A、B、Cのバンドでは局部発振器は動作していますが、Dバンドは発振していません(あとで少しコイルとトリマーを回したところ姿をあらわしました)。また、Cバンドは信号レベルが低くなっています。ちょっと元気がありません。7MHz帯が入らないのはこれが関係しているかもしれないと思いました。

調整してみる

中波帯(Aバンド)はすでにAM変調波の受信できることを確認していましたが、もう一度コイルパックを調整してみました。若干入りがよくなったようです(アバウトですみません)。

次に再度7MHzの調整をすることにしました。信号発生器は持っていませんが、スペアナのtinySAを調べてみるとAM変調がかけられるようですので、変調をかけた信号を受信機に入力して調整することにしました。

変調をかけるためには(詳細は省略しますが)、tinySAを起動して、「LOW OUTPUT」にすることで、tinySAの左側にある2つのコネクタの下のコネクタから信号が出力されるようになります。

次に、変調をかけるために搬送波周波数(FREQ: 7.00MHz)、出力レベル(LEVEL: -8.0dBm)、信号波周波数、変調方式、そして変調率(MOD: 500Hz AM 30%)を設定し、一番上の「LOW OUTPUT ON」にしました(写真5)。


写真5 tinySAを信号源として使用

tinySAの出力と9R-59Dのアンテナ端子を同軸ケーブルで接続し、9R-59Dのメインダイヤルを回していきました。-8dBmも入力したので簡単に信号音を見分けることができました。この時の受信機ダイヤル指示値は7.4MHzを指していましたので、実入力周波数値と受信機の表示のズレは400kHzほどあります(写真6)。まだどこに不具合があるのかもわかりませんのでさわりません。本格調整の時までは400kHzのダイヤル指示誤差があることを頭に入れて次にすすみます。


写真6 7MHz信号投入時、同調点でのダイヤル表示値

この状態でメインダイヤルを回して行くと、中国や韓国のAM局が入ってきました。ここでFUNCTIONスイッチを「AM-ANL」にセットするとノイズリミッタが働きます(働いているのかは、ノイズが多いときにわかりますが、ノイズがないとわかりにくいです)。

また、FUNCTIONスイッチを「SSB-CW」にセットすると“何も聞こえてきません”。「うーん、BFOが発振しているのか確認しよう」とBFOに目を向けることにしました。

BFO

BFO(Beat Frequency Oscillator、うなり発振器)は、CW信号やSSB信号を復調するときに使われる電子回路です。AM(振幅変調)の復調には使用しませんが、SSB-CWでは必要な回路です。

入手した9R-59Dでは中波帯信号と7MHzのAM変調波は受信できますがSSB-CWが受信できません。そのため、SSB-CWにかかわるBFO付近の不具合の可能性があります。そこでFUNCTIONスイッチを「SSB-CW」に切り換えてBFOの出力をオシロスコープで観察してみました。発振回路に直接オシロスコープを接続すると発振動作に影響を与えるのでV7のグリッドではなく、V6の第3グリッドをオシロスコープで観察しましたが、発振出力が見えません。「発振していないのか」と思いながらこの近辺の回路を順番に見ていくとBFO周波数設定用のバリコン(VC)の白線とグランド端子が短絡していました。写真7の黄色の円内に見えるケーブルグランドが矢印先のはんだ位置に接続されていたため、BFO用のバリコンがショート状態になっていました。


写真7 BFO回路で短絡箇所

すぐにはんだごてを使ってこの誤配線と思しき箇所を取り外し、オシロスコープでBFOを見てみると発振しました! 万歳です。

中波帯(Aバンド)のFUNCTIONスイッチを「AM」にし、NHKの周波数にダイヤルを合わせました。その後FUNCTIONスイッチをSSB-CWにしてBFOピッチコントロールバリコンを回すとNHKの放送が聞こえてきました。

気をよくして7MHzでCW受信しようとしましたがまだ周波数設定がうまくできていないので、つかめませんでした。それでも、7MHzあたりをぐるっと回して行くと、RTTY信号のような音が聞こえてきました。7MHzで常時聞こえている信号かもしれません(我が家はリフォーム中のためIC-7300のアンテナもつながっていないので確かめるすべがありません)。

では調整してもっと聞こえるようにしようと思いましたが、今回は時間切れです。
(この先は無線と関係がありませんのでお忙しい方は仕事をお片付けください。例によって、バカ話に付き合っていただける方はお目通しください。)

体のレストア

レストアをウィキペディアでしらべてみると、「再び構築することという意味の言葉で、次のような様々な意味がある。「何かを以前の状態、場所、位置などに戻すこと。たとえば故障や劣化などしてしまった機器類、乗り物類などを、以前の状態に戻すこと。元の状態になるように、修理したりリノベートすること。」と記載されていました。

9R-59Dのレストア中ですが、ちょうどBFOが動き出した翌日に「体のレストア」となり、病院にお世話になりました。アマチュア無線家の多くは私と同じく高齢の方が多いと思います。皆さん気を付けてください。病院に緊急搬送されたわけではないのですが、持病の狭心症が悪化してきたようですのでカテーテルを入れることになりました。

3年前に狭心症と申しつけられたときに思ったことは「痛いのは肺で、心臓ではないのに何で心臓が悪いねん。おかしいやろ。」と自分の無知をさらしてしまいました。お医者さんから血管が3分の2ほどふさがっていると言われた時は「断面積にして9分の1になっている。細いな。血液ながれないな。心臓頑張っとるな」と他人事のように感心してました。

脈拍数にして130回/分を超えるくらいの運動を10分以上続けると激しく胸が痛みます。我が家のバカ犬が脱走したときには、そいつを探しに痛む胸を押さえながら50分ほど探しまわり、胸の痛みが最高潮に達しました。結局見つからず警察に電話をすると保護しているとのこと。急いで警察に迎えに行ったとき、件(くだん)のバカ柴犬君は「えへへへ」という笑顔のような顔をして私を迎えましたので、心底腹が立ち、また胸が痛くなりました。

今回の「体のレストア」ではステントなる管を入れて血管を拡張しました。私の心臓血管の入院Before-Afterが写真8です。写真左の黄色い矢印部分が細くなっています。ここが関所になっていました。確かに3分の1くらいの太さしかありません。右写真でその部分が太くなりました。以後、きわめて健康です。


(左)Before: つまってます  (右)After: 快調です
写真8 体のレストア: 心臓の血流Before-After

お酒を沢山飲む、たばこをひたすら吸う、胸が痛い、肩コリが治らない、こういう場合、狭心症かもしれませんよ。このような症状に該当する方はぜひ一度、循環器内科で受診してみてください。

因みにレストア期間ですが、私の場合次のような日程でした。
・1日目: 検査、点滴
・2日目: 施術(手首あたりからカテーテル。前回は股の動脈からカテーテルを入れました)
・3日目: カテーテル挿入箇所のバンド撤去
・4日目: 午前退院

私にとっては、9R-59Dのレストア期間より短期で終了しました。体のレストアが終わって家にかえってきたら、すぐに次は・・・

家のレストア(=リフォーム)

家のレストアと相成り9R-59Dのレストア現場は写真のようなありさまです。tinySAもNanoVNAもどこにしまったのかわからず、9R-59Dのレストアができません。無線も閉局状態です。


写真9 カオス状態の我が家と9R-59D
(9R-59Dもぶん投げたように見えますが、時間が無くていろんな物をエイヤーと移動させた結果です)

しかし、うれしいこともあります。それはXYLにアンテナの同軸ケーブルを通す穴をあけることに同意してもらえたことです。

今までは同軸ケーブルを通す穴がないため、ベランダの扉が少し開いていましたので、冬は隙間風で寒く、また虫さんと共存していましたが、これからは同軸が通る穴のおかげで隙間風と、そして虫さんとさようならができます。

10cm位の太い穴をあけてもらえるので、「アンテナを建てるぞ!」と夢をふくらませてみましたが、XYLとの約束でアンテナの増設は不可。

兼明親王の有名な一句(※)を参考(盗用?)に、アンテナ増設がかなわない悲しさをうたったJH3RGDの駄作を一句。

「7エレ8エレ 穴はあけれど アンテナの 竿のひとつだに 増せず悲しき」

それでは皆さん「家のレストア」終了後にお空でお会いしましょう!

(※)「七重八重 花は咲けども 山吹の みの(蓑)のひとつだに なきぞ悲しき」
   後拾遺和歌集

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