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2025年5月1日掲載
3月29日(土)、30日(日)の2日間、奈良県奈良市にあるアイコム株式会社ならやま研究所で3回目となるラジオスカウティングinアイコムならやま研究所が開催された。
今年の目的は、日本最大級のタワーやアンテナなどを用いた海外交信の機会を通じ、上級資格に挑戦する意欲向上と、機器操作および運用技術の訓練を行う事により、毎年10月に開催しているJOTA(Jamboree On The Air)に参加するスカウトと指導者の育成のために開催された。
参加者はスカウト26名(有資格者17名)と、指導者、支援者等スタッフが50名の合計76名で、近隣各府県はもとより、東京都、栃木県、山口県などから集った。
参加したスカウト達は参加目的や無線従事者免許の有無によりいくつかの班に分かれて、以下のようなプログラムに参加し、実際の無線交信や体験、見学を行った。無線従事者免許を持っていないスカウト達は体験運用や特定小電力無線機を用いたプログラムに積極的に参加した。
昨年のプログラムに加え、新しいプログラムが追加され、電波や無線に親しみを持って興味を深めることができたようだ。
ここからは、スカウトが体験したプログラムを紹介していく。
①DX交信
参加したスカウトのうち有資格者は、ならやま研究所に設置されている巨大アンテナを使用し、この期間中に開催されていたCQ World Wide WPXコンテスト SSBにJA1YSSのコールサインで参加した。
参加に先立ち、英語交信講義が行われた。指導者から「世界共通の趣味ですから、相手もフレンドリーに対応してくれます。気楽に楽しむことが大事です。」と聞き、スカウト達も次第に緊張がほぐれたのか、講義の後半に行われた特定小電力無線機を使った交信練習では時おり笑顔も見られた。
英語交信講義
特定小電力無線機を使い英語の交信練習
(別室の指導者が交信相手として英語で応答)
またCQ World Wide WPXコンテストに参加するためにコンテスト中の交信内容の講義も行われた。
英語でコンテスト交信の練習
(無線を使わず対面で指導者が交信相手となった)
実際のDX交信は、別棟のログハウスのシャックで行われた。スカウト達は耳を凝らして海外局の電波を聴き、コールサインやコンテストナンバーをメモしていた。ログハウスにはJA1YSSの移動する局の無線機を設置し、ならやま研究所常設のビックアンテナを使用したことから、21MHz帯や28MHz帯で50Wにもかかわらず良好に聞こえている局とは確実に交信をしていた。しかし受信しているうちにコンディションが変わっていき聞こえなくなった局もあった。
CQを出している海外局とコンテスト交信を行った
海外局と交信できたスカウト達は「コンテストQSOの短時間であったが英語で交信できてよかった」「いつもは小さいアンテナしか使ったことがなかったが大きなアンテナを使用することができ、割と簡単に電波が届いて感動した」と話した。
HF帯運用に使用された、ならやま研究所のアンテナ群
②国内交信、③交信体験
別室ではVHF、UHF、D-STARでの交信用にIC-705を設置し、DRモードで全国のスカウト関係者やリフレクタ―により海外局との交信にチャレンジした。
主に430MHz帯で交信が行われた
④CW体験
JOTA-JOTIでも行われている欧文モールス符号の体験も行われた。指導者の送信した符号をまねて縦振り電鍵やパドルでモールス符号を送出する練習をしたり、縦振り電鍵で打った符号をPCで採点するソフトでスカウト仲間と楽しんだ。
縦振り電鍵の打ち方を習う
パドルでの打ち方を習う
縦振り電鍵で打った符号を採点するソフトに挑戦!
⑤電波探査
FM電波で宝探し(フォックスハンティング)や144MHz帯でのARDF体験で、ならやま研究所敷地内に隠されたチェックポイントを探し回った。
FM電波で宝探しでは、ポータブルFMラジオを手にFMラジオの周波数で8か所(にわとり、救急車、あ~あああ~ターザン、うぐいす、パトカー、つくつくぼうし、からす、いぬ)をそれぞれ微弱電波で送信している場所を探し出し、置いてあるスタンプを8つ集めると宝探しが完了というプログラムだった。スカウト達は同じ周波数で送信されている各ポイントを指導者のアドバイスでアンテナの向きを変えたり、長さを短くして感度を落としたりして探した。
どこにあるんだろう・・・
チェックポイントを見つけてスタンプを押す
8か所見つけたら、最後に裏面(写真左)にゴールのスタンプを押して無事ゴール!
ARDFは今回144MHz帯で行われた。スタッフの用意した専用受信機やアンテナを手にFM電波で宝探しと同様、敷地内に隠された各TX探しに走り、アンテナをいろいろな方向に向け楽しんだ。
まもなくスタート
TXを探すコツをレクチャー中
方向の探査中
TXを発見!
スカウト達は、起伏の影や木の陰などに隠されたTXをうまく見つけ、見つけた証しのパンチ(探査証明)を行った。
⑥ドローン操作体験
屋外が強風であったため屋内で操作体験が行われた。屋内のためあまり離れたところまで飛ばすことはできなかったが、真剣なまなざしで指導者に教えられながらドローンを飛ばした。
真剣なまなざしでドローン操作体験をした
⑦衛星通信解説とデモ運用見学
アマチュア衛星での通信方法の解説や、ISS(国際宇宙ステーション)の飛来時間帯に受信が行われ、スカウト達は事前に組立てた八木アンテナで上空約400kmから届いてくる電波の向きを探しつつ衛星通信への興味を深めた。また一緒に参加していた指導者達も自身のハンディ機とその付属アンテナなどで受信を行い、参加者全員で無事受信できた喜びを分かち合った。
アンテナ組立て
ISSの場所は向こうだ!
ISSからの電波の受信体験に参加したスカウトと指導者達
また本プログラムに向け、八木アンテナと各々のハンディ機を接続するためのコネクタはんだ付け体験も行われ、自身で製作したケーブルで受信できたことはなによりうれしかったようだ。
衛星通信プログラムの前のはんだ付け体験
⑨ビーバースカウト/カブスカウト向け(アポロ13号)
JOTA-JOTI 2024よりはじめられたプログラムで、1対1の無線交信でのやり取りと創造力だけで目的のものを製作する内容だ。このプログラムは月探査船アポロ13号で実際に発生した事象を模したもので、ストーリーは宇宙船のアクシデントにより深刻なエネルギー不足となり、使用できる電力は無線だけとなった中、AI司令官(指導者)とのやり取りで、スカウトが再生可能エネルギーを利用した信号灯(オリジナルソーラーランタン)の製作にチャレンジした。
スカウトの側には、ダミーも含む様々な材料や道具が用意されていて、AI司令官からの指示に適した材料を選んだり、また加工方法を試したりして、無線交信の会話だけで理解したり、またAI司令官に伝えたりする難しさも試されるものだった。
必要な材料を探す
指示を受け創造力を働かせる
AI司令官の指示でカメラに笑顔
同じ指示を受けても同じ完成品はなかった
⑪アイコム提供
会場を提供したアイコム株式会社からは、アイコム若手エンジニアであるスカウトの先輩2人によるトークセッション「教えて先輩! ムセンのセカイ」や「Airバンド受信講座」「すこしでいいから1kW体験」のプログラム提供があった。
・教えて先輩! ムセンのセカイ
若手エンジニアでスカウトの先輩の2人がスカウト時代や仕事上のエピソードなどの発表を行い、スカウト活動でみんなと協力していくことなどを学んだと語った。また今回のイベントの代表者であるJO3TND足立さんと2人の初めての出会いなど楽しい話もあり、スカウトを含め参加者の笑いも誘った。
・Airバンド受信講座
JK3AZL高岡さんが、アマチュア無線の免許がなくても聞くことができるAirバンド(航空無線)の仕組みや種類、楽しみ方など無線について魅力を語り、スカウト達からは「実際に聞いてみたくなった」などの声もあがったという。
・すこしでいいから1kW体験
ならやま研究所に設置されているJK3ZNBを利用し、クラブ構成員の立会の下、指導者による1kW出力での交信体験が行われ、1kW+ビックアンテナの効果にスカウトたちが驚いた。
参加したスカウト達は、今回のラジオスカウティングでこの秋に開催されるJOTAへの参加の意欲がさらに高まり、無線への興味も深まったであろう。
参加したスカウトと関係者一同
アマチュア無線関連機関/団体
各総合通信局/総合通信事務所
アマチュア無線機器メーカー(JAIA会員)
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