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東京・大阪の子供たちが南極昭和基地とD-STARで交信

2025年5月15日掲載

南極の昭和基地に開設されているアマチュア無線局(8J1RL)は、今年も5月5日のこどもの日に、日本の18歳以下の子供たちと優先的に交信する「こどもの日特別運用」を実施。東京のJARL本部(JA1RL)に集まった11名、大阪・関西万博の特別記念局(8K3EXPO)に集まった5名と、D-STARのゲート越え通信で交信に成功した。


東京のJARL本部(JA1RL)で行われた交信の模様

東京都豊島区南大塚のJARL本部には、事前応募で選ばれた小学校4年生から高校3年生まで11名(うち無資格の体験運用者3名)が集まり、JARL中央局(JA1RL)の無線設備で8J1RLとの交信にチャレンジした。


11名の参加者を前に開会の挨拶をする森田JARL会長(JA5SUD)

最初に森田JARL会長(JA5SUD)が挨拶、続けて今回の交信イベントの運営と交信サポートを担当するJA1RL運用委員会の委員、JLRS(Japan Ladies Radio Society)と南極OB会アマチュア無線クラブのメンバー紹介があり、その後は集まった11名の子どもたちが自己紹介と南極との交信に臨む意気込みを表明した。


JA1RL運用委員会の委員を紹介


女性だけのアマチュア無線クラブ、JLRSのメンバーもサポートに加わった


南極OB会アマチュア無線クラブのメンバー。左が近藤さん(JG3PLH)、右が会長の小林さん(JR1FVH)

さらに今年4月まで第66次南極地域観測隊(夏隊)に参加するなど、南極での観測経験が豊富な近藤さん(JG3PLH)が、南極観測の目的と観測船「しらせ」についてや、昭和基地での生活を説明。続いてJA1RL運用委員の新谷さん(7K2GMJ)が、これから行う8J1RLとの交信についてと、交信方法や自分の名前の伝え方、QSLカード交換の仕組みなどをレクチャーした。


JA1RL運用委員の新谷さん(7K2GMJ)によるレクチャー

17時30分頃から、JA1RL運用委員が21MHz帯SSB(IC-7800、出力200W)で8J1RLの呼び出しを始めたが、この日は日本と南極の間の電波伝搬が思わしくなく(昭和基地上空には前夜から大規模なオーロラが発生していた)、応答が得られなかった。そこで昨年の「こどもの日特別運用」で交信に成功した28MHz帯にQSY、再び8J1RLをコールしたがやはり信号は確認できず、さらに14MHz帯へのQSYやアンテナをロングパス方向に向けてみたりと、1時間近く条件を変えながらトライするも、残念ながら双方とも信号の確認には至らなかった。


JA1RL運用委員がIC-7800(出力200W)で8J1RLの呼び出しを開始した

そのため、JARL本部(JA1RL)と昭和基地(8J1RL)の間を「こどもの日特別運用」では初めてとなる、D-STARのゲート越え通信で結ぶことを決定した。

JA1RL側はハンディ機のID-51を使って、約1km離れたD-STARレピータ局、文京430(JP1YKZ)へアクセス。昭和基地側はターミナルモードでインターネットに直接接続。数回の呼び掛けと交信テストを行った結果、双方がクリアな音声でつながることができ、会場内はホッとした雰囲気に包まれた。

18時30分頃から子供たちと昭和基地の交信が始まった。子供たちは1人ずつID-51を手に取って8J1RLを呼び出し、越冬隊員が信号リポートと運用者の氏名を伝えてくると、それを懸命に書き取りながら、信号リポートと自分の名前を伝える交信を行った。子供たちは緊張した顔つきだったが、無事にQSOを終えると、とたんに明るい笑顔になるのが印象的だった。


子供たちはID-51を使ってD-STARで交信を行った

昭和基地側は、この日の「こどもの日特別運用」のために越冬隊員31名のうち10名が無線機の前でスタンバイし(一部は無資格者で体験運用扱い)、JA1RLの子供たちが次々にマイクを交代するのに合わせ、8J1RLも1交信ごとにオペレーターが交代していった。

19時10分に有資格者8名の交信が終わり、続いて3名の無資格者が体験運用扱いで交信に臨み、19時18分に参加者全員の交信が無事に終了。会場内は大きな拍手に包まれた。


体験運用者も無事に昭和基地と交信できた

最後に森田JARL会長から一人ずつに交信記念証が手渡され、全員で記念写真を撮影して、すべてのプログラムを終了。子供たちは保護者とともに笑顔で会場を後にしていった。


森田JARL会長から一人ずつに交信記念証が手渡された


最後にスタッフや保護者も含めて全員で記念撮影を行った

大阪・関西万博の特別記念局(8K3EXPO)でも5名が交信

4月13日から10月13日まで、大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)で開かれている大阪・関西万博の会場には、JARLの特別記念局(8K3EXPO)の運用コーナーが設置されている(無線設備とアンテナは会場外に置かれ、運用コーナーからは遠隔操作でオペレートが可能)。


大阪・関西万博の会場内に設置されている、JARLの特別記念局(8K3EXPO)の運用コーナー

5月5日の夕方には「こどもの日特別運用」を行う南極昭和基地(8J1RL)との交信に挑戦するため、ボーイスカウト大阪連盟ほくせつ地区のスカウト5人(いずれも無資格者)がこの運用コーナーを訪れた。


運用スタッフが昭和基地についてや交信方法を説明した

集まった5人は、運用スタッフから昭和基地やアマチュア無線についてと、交信方法に関する説明を聞いたり、21MHz帯などで東京のJARL中央局(JA1RL)が8J1RLをコールする様子をモニターしていたが、やはり短波帯のコンディションが悪く、昭和基地側の信号を確認することはできなかった。

そのため、JA1RLと8J1RLのD-STAR交信が終了した19時30分頃から、大阪・関西万博の会場と昭和基地を結ぶ初めてのD-STAR交信を行い、5名全員が無事に体験運用を終えることができた。


D-STARで昭和基地との体験交信を行うスカウト。8K3EXPOの無線機は会場外のタワーブースに設置されているため、リモートコントロールソフトウェアのRS-BA1 Version2をインストールしたノートPCを使って交信した

この間、昭和基地にいる越冬隊員からは、基地上空に広がる美しいオーロラの画像が送られてきて(インターネットによる別送)、さっそく運用コーナーの大きなモニター画面で表示し、全員で観賞する一幕も見られた。


昭和基地にいる越冬隊員からインターネットで送られてきた、基地上空に発生したオーロラの画像

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