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特別寄稿

Q-Tech 2025 参加レポート
オーストラリア発・マイクロ波と次世代アマチュア無線の最前線

VK4/7M4MON 野村秀明

2026年1月5日掲載


会場となったKedron-Wavell RSL

2025年11月1日、2日の2日間、オーストラリアのブリスベンにて、Brisbane VHF Group主催のアマチュア無線技術カンファレンス「Q-Tech 2025」が開催されました。


Brisbane VHFグループのロゴ

Q-Techは2年に1回開催される、VHF/UHF/マイクロ波帯を中心とした技術志向のアマチュア無線カンファレンスです。

今回のテーマは
“Attention / Retention – The future of amateur radio is in your hands”(関心を惹きつけ、つなぎとめる ― アマチュア無線の未来はあなたの手に)となっており、次世代育成と技術継承を強く意識した内容となっていました。

プレゼンテーション会場は、正面に講演用スクリーンが設置され、円卓形式のテーブルが並ぶレイアウトとなっており、その会場入口の外はメーカーによる展示ブースや販売店の即売ブースが設けられ、講演の合間には多くの参加者が行き交う場となっていました。


プレゼンテーション会場内の様子


メーカーと販売店のブース

Day1: 若年層と未来を見据えた議論

・YOTA(Youngsters On The Air)の取り組み

ブリスベン在住の大学生Otto Pattemore(VK4OTZ)氏から、YOTA活動を通じて若年層がアマチュア無線に触れる実例が紹介されました。


講演をするVK4OTZ

「自分で通信系を作れる面白さ」「SNSに依存しない通信の魅力」といったポイントが、10代に強く響いているとのこと。特に印象的だったのは、「ベテランが親切に応答するかどうかが、継続率を大きく左右する」という言葉でした。

・WIA(Wireless Institute of Australia)アップデート

Scott Williams(VK3KJ)氏からは、WIAの最新動向が報告されました。
・VHF/UHF/マイクロ波バンドプラン改定の意見募集状況
・ライセンス制度見直し(大規模改定は延期)
・新Webサイトへの移行
・最大 5,000 AUDのクラブ助成制度
教育・社会貢献型の活動を後押しする姿勢が明確に示されました。

・パネルディスカッション「アマチュア無線の未来 ― どうすれば仲間を増やせるか?」

クラブ運営、SNS活用、教育機関との連携などが議論され、「クラブは“誰かがやる”ものではなく、“自分たち全員がクラブそのもの”」という言葉が会場の共感を集めていました。

・POTA(Parks On The Air)活動紹介

POTAはオーストラリアでも広がりを見せており、HFに限らずVHF/UHFへの展開も進みつつあります。HAMRS.APPやPOTA.appなどのログ・スポット共有ツールが紹介され、「フィールド運用の入口として優れた活動」である点が強調されました。

・高度なマイクロ波技術セッション

Day1後半は技術色の濃い内容が続きました。
・光通信(VK7MO)
   730nm LEDを用いた200km超通信や、雲・霧の影響解析
・241GHzサブミリ波通信(VK5KK)
   PLL・位相雑音対策による安定通信の実例
・深宇宙電波受信(VK4AFL)
   SDRを用いた探査機信号の個人受信事例
・欧州6mデジタルビーコン(OZ2M)
   PI4を用いた国際的伝搬監視ネットワーク構想
 「研究者レベルのアマチュア」が集うQ-Techらしい内容でした。


VK7MOによるテラヘルツ(遠赤色)トランシーバー

・ARISS スクールコンタクト(ISS交信)

Day1終了後には、Wavell State High Schoolの生徒によるARISS(国際宇宙ステーションとのアマチュア無線交信)が実施されました。


ARISSスクールコンタクトの様子

・ISS側: NASA宇宙飛行士 Jonny Kim(KJ5HKP/NA1SS)
・地上局: VK4ISS

約10分間にわたり、生徒たちが事前に準備した質問を直接投げかけ、宇宙飛行士が明瞭な音声で応答。無事交信を終えた後は、会場は大きな拍手に包まれました。アマチュア無線がSTEM(science, technology, engineering and mathematics)教育に直結する好事例として、強い印象を残しました。

Day2: マイクロ波の実践と最前線

・マイクロ波通信入門(VK3FS)

機材構成、アンテナ選択、周波数安定度の重要性など、入門者にも分かりやすい実践的な内容でした。「10GHz以上では数度のズレが致命的になる」という説明は、多くの参加者が深くうなずいていました。

・Lightning Scatter(落雷散乱)研究(VK7MO)

雷による一時的イオン化領域を利用した非常に珍しい伝搬モードの研究報告。300km級のQSO成功例も紹介され、アマチュアによる科学的貢献として注目されました。

・IC-905拡張・フィールド事例(VK2QJ)

IC-905を中心に、外部パワーアンプ・デュプレクサ・自作アンテナを組み合わせ、可搬局として構築した事例の発表でした。
・2.4/3.4/5.7GHz帯同時運用
・外部PA、デュプレクサ、自作アンテナ構成
・10GHz帯での317km QSO
といった実績が紹介され、オーストラリアのマイクロ波コミュニティでも大きな関心を集めました。

・10GHz帯 EME(月面反射通信)(VK7ZBX)

自作追尾装置と10GHz帯 EMEの最新成果を紹介。学生プロジェクトから発展した点も評価され、教育・実験・趣味の融合モデルとして印象的でした。

所感

Q-Tech 2025は、高度な技術探究、若年層育成、クラブ、国際連携、教育との融合を同時に実現する、非常に密度の高いイベントでした。一方で、日本と同様に「若年層にどう継続的に関心を持ってもらうか」という課題も共有されています。

Q-Techは単なるカンファレンスではなく、アマチュア無線の未来を“実際に形にする場”この言葉が、今回のイベントを最もよく表していると感じました。

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