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Masaco、大人の社会科見学!

第4話 河内ワイン

金銅社長の哲学

河内ワインを案内している細長のパンフレットがある。全体が黒ベースで仕上げられており、表紙には河内ワインの家紋ともいうべきロゴだけが添えられ河内ワインの歴史を醸し出す。パンフレットを開くと4代目当主金銅重行氏のワイン造りに対する思いが記されている。「ワインとは”和飲”である」とは、ワイン造りに思いを馳せた凝縮の1行であるが、金銅氏は「ここでしか造れない葡萄酒をつくりたい」とも記されており、生まれ育った河内の歴史と風土をワインに託して瓶に詰めている感じがする。


左: 同社パンフレット”和飲”を、つくる。 右: 同社ホームページ「河内ワインのあゆみ」より引用

河内で生産されるワインの歴史

ここで河内ワインの由来についてすこし説明したい。「河内」は「かわち」とよむ。大阪平野には大きな川が二つ流れている。琵琶湖から京都を通って大阪湾へとうとうと流れる淀川と古代大和国(奈良県)から山間を通りながら大阪湾へと流れる南の大和川だ。河内とは地域の名称で、その名称は飛鳥時代にまでさかのぼる。大阪と奈良を隔てる生駒山地、その大阪側の北から北河内、中河内、そして南河内と呼ばれ、大和川の周辺あるいはそれより南側をその昔、河内国と呼んだ。今、地名として残っているのは南河内だけだ。「河内」とついたワインを製造している会社は数社あるようだが、今回訪問したワイナリーは、文字通り河内にあるワイナリー「河内ワイン」だ。

この地域で生産されるワインの歴史は古い。大阪南東部の羽曳野市、柏原市、太子町を中心としたこの地域でブドウの栽培が始まったのは、明治の中期ごろとされている。土地柄、平地では稲作が行われていたが、明治の初期に駒ヶ谷の農家が山梨県に行ったおり、甲州ブドウを持ち帰り、農家の庭先に植えたのが最初とされている。山手の大半が南から西向きの斜面を持った日当たりのよい肥よくな山地であることも功を奏し、昭和3年には近鉄南大阪線が開通し、河内一帯で収穫したブドウは全国津々浦々まで出荷できるようになった。その頃、河内一帯のブドウの生産高は全国で1位を占めたこともあったそうだ。

河内ワインの歴史

株式会社河内ワインとして新たにスタートを切ったのは平成8年(1996年)である。その河内ワインの前身は、屋号を金徳屋洋酒醸造元と称し、遡ること昭和9年(1934年)、初代金銅徳一氏が始めた。そして平成15年(2005年)、現社長の金銅重行氏は4代目当主を継ぐことになる。これまでの商品リスト、商品レンジを見直し、また河内ワインの持つ歴史をブランドに活かすブランディングも新たにスタートさせ、まさにこれまでのレガシーに新しい時代の考えを注ぎ込んだビジネスを展開していく。


ワインセラーの中に設けられたディスプレイ

河内ワインの未来

河内ワイン館の2階では、河内ワインの歴史ホールがある。初期のころのワインラベルやビンなど河内ワインが歩んできた歴史を知ることができる空間がある。歴史を知る歴史ホールにしては、何か趣が異なる。実はこの空間、食事もできる、イベントもできる、場合によっては会議もできる。写真には写っていないが音響装置やPAも完備されている。多目的ホールとして貸し出されている。そういえば、4代目当主金銅重行氏は”和飲をつくる”と言っていた。みんなと和みながら飲を共にし、そして楽しむ。河内ワインの未来は、ここに行くのか。何かわかったような気がした。


河内ワイン館2階の歴史ホール 右端: 当時の資料の一部

Masaco: 社長、いろいろなことを考えて事業をされておられるのですね。

社長: 15年前にこの会社に入った時は、まずちゃぶ台返しから始めました。周りの者は、何をするのか、と非難する者も多かったですが、ここに来て少しは落ち着いてきました。でもまだまだやりたいことはありますね。

Masaco: コロナ禍でたいへんでしょうね。

社長: たいへんですね。商品コンセプトなどアイデアは常に考えている。24時間考えて、やっと一滴のアイデアが絞り出せるかどうかといった感じです。15年ずっと考えてやっと一滴ですよ。若いスタッフにアイデアを出せといってもなかなか難しい。常に考えることが大事と思っています。

Masaco: 河内ワインのブランディングなどは、どのようにお考えなのでしょうか。

社長: ブランディングには、お金と時間がかかりますね。半世紀はかかると思っています。ブランディングだけをしていても、日々の売り上げがなければ続かないし、また反対にブランディングしようと思ってもお金だけで出来るものでもないと思っています。今の世の中、SNSで誰か有名人が紹介したら爆発的に売れたりする時代ですよ。

Masaco: なるほどね~。

社長: お高く留まるつもりはありませんが、スーパーには卸さないようにしています。売れることは分かってわかっていますが、値段勝負となると一時的なもので、あとが続かないですね。私が河内ワインに込めた思いが消えて行くようで、今、贔屓にして頂いているお客さんが離れていくように思います。方向性にブレがでるとダメですね。

Masaco: 今後はどのようにしたいとお考えですか。

社長: ワインのある生活を提案したいと考えています。ワインセラーごと買ってもらうようなビジネスをしたいですね。「この空間にワインがあったらかっこいいでしょ?」というような感じでディスプレイに使ってもらったりする。モデルハウスに持っていき、ノベルティにワインをご提供するアイデアを提案する。これ、どうですか。

Masaco: 新婚夫婦に、記念日や生まれた年のワインをプレゼントするというのはどうですか?

社長: それも考えています。プレゼントされた方々はその後、結婚式の引出物などに河内ワインを使ってもらえたりしますから。

Masaco: いいですね~、それ。

社長: 車のディーラーにも持っていきますよ。ディーラーで頂くキーホルダーもなかなかいかすデザインで人気です。手前味噌ですが、ワインもおしゃれでいいと思いますがね。(笑) 「キーホルダーの代わりに、ワインのご提供はいかがですか」とも提案したいですね。

Masaco: ワインをいただくと何かうれしい気持ちになります。本日は、取材のご協力ありがとうございました。


河内ワイン館にてスリーショット。中央: 金銅社長 右: ソムリエの北村様

河内ワイン
〒583-0841 大阪府羽曳野市駒ヶ谷1027
ホームページ: http://www.kawachi-wine.co.jp
電話: 072-956-0181

レポーター: Masaco 
シンガーソングライター。出身地は兵庫県明石市。NHK朝の連続ドラマ小説出演などを経て、ラジオ放送局のパーソナリティーや数々のイベントでも活躍。アマチュア無線(3アマ/JH1CBX)の資格を活かし、各方面でマルチに活動中。
ホームページ: http://www.19box.net/masaco

備考
※近畿地方の地図: 地図は、国土数値情報(行政区域データ/湖沼データ)をもとにMap-It(マップ・イット)が編集/加工したものを使用しました。

取材中は一時的にマスクを外したりしましたが、アルコール消毒、マスクの着用等、新型コロナウイルスの感染拡大防止には細心の注意を払い取材を行いました。

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