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Short Break

2本のケーブルでマイクとPTTを制御できる不思議

近頃のアイコムのハンドヘルドトランシーバー用のスピーカーマイクにはスピーカー用として2極、マイク用として3極のプラグが付いています。(図1) 1979年ごろに一世風靡したハンドヘルドトランシーバーにIC-2Nがありました。そのトランシーバーのスピーカーマイクとしてIC-HM9、通称「おにぎりマイク」がオプション設定されていましたが、そのスピーカー用プラグは2極、マイク用のプラグも2極です。

同社の製品開発の途中でスピーカーマイクのプラグが2極から3極に変わっているようです。ところがおもしろいことに、いずれのスピーカーマイクもプラグが2極であっても3極であっても問題なく使えるのです。


図1 (左)IC-HM9 (右)HM-131L

2本のケーブルでマイクとPTTを動作させる不思議

今回はこのメカニズムを解き明かしてみたいと思います。ちょっとここで考えてみました。先に掲載した2種類のスピーカーマイクには下記の3つの機能があります。

(1) スピーカー
(2) マイクロホン
(3) PTT (Push to Talk)

上記の内、(1)のスピーカーは3.5mmのプラグに独立した2本のケーブルが接続されていますのでここでは除外します。問題は(2)と(3)の2つの機能です。これら2つの機能は、2.5mmのプラグに接続されています。

通常、2つの機能を独立して機能させようとすると、各機能についてそれぞれの1本、プラス共通のGNDのケーブルの合計3本の独立したケーブルが必要になります。図で描けば下のような具合です。ところが、現実は2極のプラグ1個ですので、ケーブルは2本で十分ということになります。


図2 マイクとPTTを独立して動作させるためのシミュレーション回路

IC-HM9の中身を分解して回路図を描き下ろした

IC-HM9を分解して回路図を描き下ろしたものが図3です。上部に描いたスピーカーの部分は割愛するとして、マイク、PTTの部分はやはり2本のケーブルだけで動作しています。


図3 IC-HM9の回路図

マイクプラグの先の無線機側はどうなっているか


図4 IC-2NのPTTを制御する回路

図4の左端にEXT MICと印字されたジャック端子があります。ここにスピーカーマイクの2極のプラグを接続します。スピーカーマイクIC-HM9の回路を見ると分かりますが、PTTボタンを押しますと、Q23のベースは、R55とIC-HM9内部の33kΩの抵抗を通して、GNDに接続されます。するとQ23がONになり、それに応じてQ6とQ8もONとなり、Q6はT5V、Q8はSENDの信号をそれぞれ出力します。同時にIC-HM9で生じたマイク信号は、C58を経由してQ25のマイクアンプに導かれます。

まとめ

最近のアイコムのハンドヘルドトランシーバーは、MICプラグは3極となっており、その真ん中の端子には、機種によって異なりますが、3~4Vの電圧が出力されています。これは、トランシーバーの送信には関係のない信号で、あくまでも送信とマイクの信号は、これまでの説明でお分かりいただいたように2極のプラグで全く問題がありません。

CL

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