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5.6GHz帯の長距離通信実験を取材


前回3月に続き、再度5.6GHz帯の通信実験が7月最終週に実施されるという情報を入手した編集部は、当日現場に駆けつけた。前回は2点間距離が10kmほどの通信実験であったが、今回は80km超とのことで、これは相手局が肉眼では確認できない長距離である。果たしてこの周波数でこの距離は飛ぶのだろうか。さらに、つながった場合でも安定した通信は可能だろうか、興味津々の取材となった。

前回の記事でも書いたように5.6GHz付近の周波数は、無線LANや移動体通信で実使用されており、近距離の通信であれば十分な実用性があることはすでに実証されている。またアマチュアバンドの5.6GHz帯は近年ドローンでも使用されており、その方面ではポピュラーなバンドとなっている。しかし、50kmを超えるような長距離の通信で使用されることは例が少なく、結果が楽しみであった。

今回実験が行われた2つの通信拠点は、大阪府と奈良県の境にある生駒山(以下、生駒サイト)と、淡路島南部にある柏原山(以下、淡路サイト)で、地図上で測った2点間距離は83kmであった。アンテナは前回の実験と同様に、無指向性のコーリニアアンテナ(以下、コーリニア)と40cmのパラボラアンテナ(以下、パラボラ)の2種類が用意され、無線機も前回と同じ自作機が使用されたが、今回は送信出力を1W/500mW/100mW/50mWの4段階に設定できる様にしてあるとのことだった。



生駒サイト


淡路サイト

アンテナ設置後、まずは、両局とも無線機の出力を1Wに設定し、先に(ビーム方向を考慮する必要のない)コーリニアアンテナを接続して、FMモードでの音声通信がトライされた。すると、RS55-53(淡路送信→生駒受信が55、生駒送信→淡路受信が53、以下同様)でいとも簡単につながった。83kmの距離をものともせず、一定以上の信号強度だったためFMモードにおいてノイズが交じることもなく常時クリアな音声でQSOが進み、実験者一同から驚きの声が上がった。


実験に使用されたコーリニアアンテナとパラボラアンテナ (生駒サイト)

予想外にコーリニアアンテナ同士であっけなくつながってしまったため、次は減力テストに移行。双方の出力が500mWに設定された。FMモードで音声通信を行うと出力1Wと比べて、耳で聞く感じもSメーターも信号強度に変化なく、RS55-53でつながった。そこでさらに減力され、双方の出力が100mWに設定された。その結果RS53-51に信号強度がダウンしたものの、了解度は依然5のままで、通信にはなんら問題は生じなかった。5.6GHzで100mW出力、無指向性のアンテナで80km超の距離が了解度5で問題なく通信できたわけである。


まずはコーリニアアンテナで通信実験 (淡路サイト)

最後に双方の出力が50mWまで減力された。結果はRS53-41となり、生駒サイトから届く電波の了解度が、淡路サイトで4に下がった。それでも相手が喋っていることはひととおり理解でき、アマチュア無線の通信を行う上では問題のないレベルであった。その日用意された無線機ではそれ以下の減力はできなかったため、次の実験へと移行した。

次はアンテナをパラボラに交換してどの程度信号強度がアップするかが実験された。同軸ケーブルをコーリニアから外してパラボラに接続。お互いに、相手局はだいたいこの辺かという方向にアンテナを向け、まずは1Wでトライされたところ、ビーム方向を正確に合わせていないのに関わらず簡単につながった。その状態で、一方が長めに送信している間にもう一方がビームをベストな方向に設定し、その次にはその逆を行って、双方共ピンポイントで方向合わせが完了した。するとレポートはRS59-58にアップした。


アンテナをパラボラに交換 (淡路サイト)

2地点間に障害物がない状況で、一定以上の信号強度があれば、Sメーターの振れを見ながらビーム方向を合わせることができるので、方位磁石に頼ることなく、労せずにビーム合わせが完了していた。特にRS59を送った生駒サイトではSメーターがS9+15dBを示していた。コーリニアの時と同様に500mW/100mW/50mWと順次、出力が減力されたが、パラボラの場合は、50mWまで減力されてもRS59-58のレポートに変化はなく、実験参加者からは「パラボラアンテナなら200kmくらいは行けるんじゃないか」という声が出る状況だった。


無線機背面のクローズアップ (淡路サイト)

次は、通信モードをDVに変えて、DVシンプレックスでの実験が行われた。アンテナにはコーリニアが使われ、出力もFMモードと同様4段階に変化されたが、結果的にはFMモードとほぼ同じレポートとなり、1W/500mW/100mWではメリット5、50mWでは、淡路サイトで受信する生駒サイトの電波のデコードが途切れ途切れとなったが、通信内容は了解でき、アマチュア無線であれば、問題のないレベルであった。一方、生駒サイトでは50mW時もメリット5のままだった。結果として、5.6GHz帯においても、ポピュラーな430MHz帯同様にFMモードもDVモードも飛びに関しては同様の感覚で交信できることが確認された。


RSレポート

今回の実験を通して、SHFである5.6GHz帯では小電力でも十分に飛ぶことが確認された。とくに無指向性アンテナのコーリニアに出力50mWで80km超の通信がFMおよびDVモードできた意義は大きかったようだ。今回の実験参加者は、「次回は画像通信、またさらなる長距離の通信実験を行ってみたい」、と話をしていた。

現時点で市販のアマチュア無線用トランシーバーが存在しないこの周波数帯を楽しんでいるアマチュア無線局はまだまだ少数だが、その広い帯域を利用して様々な通信実験も行えるため、近い将来に完成品のアマチュア無線用トランシーバーが発売されることが大いに望まれると感じた。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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