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Short Break

シームレス電源切替器の製作
スイッチングにPチャネルMOSFETを使用


台風到来の季節になりました。台風が接近あるいは上陸しますと暴風雨の影響で停電が発生する可能性があります。今回は、停電になるとAC電源からDCバックアップ電源に自動的に切り替わる電源切替器を製作します。

電源の切替回路の仕様

図1に今回製作する電源切替器の回路図を示します。接続するトランシーバーはAC100Vの定電圧電源からDC13.8Vの供給を受け、最大パワー50Wで運用していることを想定します。運用中に予期せず停電となり、AC電源がシャットダウンしてもバックアップ電源に自動的に切り替わり、そのまま一定時間運用できることを目指します。

バックアップ電源用のバッテリーは、充電されたものを接続するようにします。AC電源で運用している間は、充電する仕様も考えられますが、鉛蓄電池の充電時にはガスも発生します。室内での充電は危険であるのでこの仕様は組み込みませんでした。50Wの最大パワーで運用する場合は、接続するトランシーバーにもよりますが、13.8V時、15A近く流れます。回路に使う部品や配線には大電流が流れる配慮が必要です。


図1 電源切替器の回路図

切替回路の説明

点線内が今回製作する電源切替器の回路です。回路にはバッテリーの12Vの電圧を13.8Vに昇圧するDC-DCコンバータを組み込んでいます。これは自作せず市販のユニットをそのまま使います。

(1) Q1
電源の切替には2SJ555、PチャネルMOSFETをスイッチングとして使います。オンしたときの抵抗値(RDS)は0.017Ωと低く、ドレイン電流(ID)は、最大で60Aも流せるスグレモノです。MOSFETの動作については前号のFBのトレビアを参考にしてください。


図2 2SJ555

(2) D1、D2、D3、D4
逆流防止用のダイオードです。回路ではショットキーバリアダイオードを使います。ショットキーバリアダイオードは、通常のスイッチング用のダイオードと比較して、順方向の電圧降下が低いことと、順方向に電流が流れている状態で急に逆方向の電圧が掛かったときの逆回復時間が短いことが特長です。このダイオードは、仕様では30Aを流せるもので、大手ネット通販で購入したものです。


図3 30Aショットキーバリアダイオード

(3) D5、D6
発光ダイオード(LED)です。AC電源で運用しているときにはPOWERインジケーターとして青色、バックアップ電源で運用しているときは、青/赤点滅のLEDを使い、点滅させることでバッテリー運用であることを促します。点滅LEDは、LEDの中にICチップが入ったものを使います。各LEDには直列に1.5kΩの抵抗を接続し、約10mAの電流を流すようにしています。

(4) BT1
バックアップバッテリーには、繰り返しの充放電に強い12Vのディープサイクルバッテリーがベストですが、手元に12V/6Ahのメンテナンスフリーのバッテリーがありましたのでそれを使います。鉛蓄電池のような大きな容量のバッテリーを使用する際は、充電は必ず屋外で行うようにしてください。充電時鉛蓄電池からガスが発生しますので危険です。バックアップバッテリーはそれぞれの仕様に応じたものをご使用ください。
<ご注意>バッテリーと電源切替器の接続に使うケーブルには、安全のため必ずヒューズを挿入してください。

(5) DC-DCコンバータ
トランシーバーの入力電圧の定格は13.8Vであることから、バックアップ電源の電圧を12Vから13.8Vに昇圧します。このDC-DC コンバータは、大手通販サイトにてユニットで購入したもので、電流は最大30Aと記載があります。

切替回路の説明

点線部が今回製作する切替器の回路です。定電圧電源から13.8Vが出力されているとき、Q1のゲートにはその13.8Vが加わりソースにはゲート電圧よりD4の接合電位差分だけ低い電圧が加わることで、Q1はオフの状態となります。Q1がオフのときは定電圧電源の電圧はD1を通してそのまま出力されます。一方、定電圧電源が停電等でオフになると、ソースに対してゲート電圧はゼロとなりQ1はオンとなります。バックアップバッテリーの電圧がソースからドレインを通してDC-DCコンバータの入力に供給され、12Vの電圧が13.8Vに昇圧されて出力されます。

電源切替器の製作

点線部の回路をユニバーサル基板に組み込み、購入したDC-DCコンバータと共にケースに組み込みます。定電圧電源とバックアップバッテリーを接続する入力端子はケースの後面パネルに取り付けたターミナルに接続します。


図4 電源切替器の接続

AC定電圧電源がシャットダウンし、Q1がオンするとDC-DCコンバータには電流が流れますので徐々に熱を持ち、DC-DCコンバータに取り付けられている小型ファンが自動的に始動します。連続運用を考え、ケースの中で空気の流れを作るようにケースには穴開きのものを使いました。


図5 内部写真

電源切替器の調整と設定

定電圧電源とあらかじめ充電したバックアップバッテリーを電源切替器に図4のように接続します。AC電源をオフにすると電源切替器から13.8Vが出力されます。回路にはショットキーバリアダイオードが電源ラインに挿入されていますので、接合電圧分だけ電圧降下します。DC-DCコンバータに出力調整ボリュームが付いているようであれば、13.8Vに調整します。

次にトランシーバーのDC電源コネクタを電源切替器に接続します。トランシーバーをオンにしてダミーロードを接続したトランシーバーをFMあるいはRTTYモード等にセットして送信状態にします。このとき送信出力はいきなり50Wとせず、数ワットの低い出力で送信状態にします。送信状態を保ったまま、AC電源をオフにします。途切れなくトランシーバーが送信状態となれば動作は問題ありません。

まとめ

今回の製作は、50Wのトランシーバーを動作させることを目的としたためMOSFETもショットキーダイオードも、またDC-DCコンバータも比較的大きな容量のものを使用しました。また、基板に部品を組み込む際も部品間の線材は太いものを使いました。2SJ555のオン抵抗は、0.017Ωと低いとの記述でしたので、それほど大きな放熱板は取り付けませんでした。実験では、SSB/50W運用では、5分ぐらいしゃべってもほんのり温かくなる程度でしたが、FM/50W運用では1分連続送信で結構熱くなります。図5に示したような小さな放熱板では不十分であるように思います。

電源切替器に使用する部品やDC-DCコンバータは、接続する機器によって部品を選択してください。

夜に停電となりますと無線をやっている場合ではありません。一瞬にして家中が暗闇となりますので慌てることになります。そんなとき電源切替器の出力端子に12Vで点灯するランプを接続しておけば、停電になってもランプが点灯しますので慌てることなく行動ができると思います。

CL

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