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SHFの電波は飛ぶのか。5.6GHz帯の通信実験を取材


SHFの電波は飛ぶのだろうか。アマチュア無線の運用に実用性はあるのだろうか。SHF帯の一番下にあるアマチュアバンドが5.6GHz帯である。この周波数帯はD-STARのレピータリンクにも使用されており、鋭い指向性をもったアンテナを向けあった固定間同士の通信であれば、すでに実験段階を超え実用化されている。

しかし、アマチュア無線でそのような特定の2局間の固定通信は一般的ではない。やはり不特定多数局との通信、たとえばCQを出して未知の局から呼ばれる、あるいはコンテストでCQを出して多数の局とQSOする。そのような楽しみ方が、アマチュア無線の一般的な楽しみ方といえるだろう。

一方、5.6GHz付近の周波数は、無線LANや移動体通信で使われており、近距離の通信であれば十分な実用性があることはすでに実証されている。しかし、アマチュア無線では、無指向性アンテナを使ってある程度の距離が通信できることが興味の的である。


実験準備中

3月のよく晴れた日、編集部は某所において実施された5.6GHz帯の通信実験を、二手に分かれて取材した。2局(A局、B局とする)はそれぞれ自作機を使用。それらはもちろん保証認定を受けて免許を得ているとのこと。2地点間の距離は10km強で見通し、100%のフレネルゾーンは確保されてはいないが、フレネルゾーンの欠けで通信品質に異常を来すといったロケーションではなさそうだ。現場で実験者に尋ねると送信出力は1Wで、アンテナは無指向性のコーリニアアンテナを使っているそうだ。5.6GHz帯ともなるとさすがにQRHも無視できない。よって実験はまず2点間の通信を確認することを念頭にFMモードで行われた。


A地点での交信の様子

まずは高所に移動したA局からB局をコール。B局は市街地でA地点が目視できるところから運用。するとB局ではメリット5でA局の信号が入感。スペクトラムスコープで確認するとFズレも無いようだ。市販品トランシーバーのSメーターとはおそらくスケールは異なると思われるが、本体に付いているSメーターでS8まで振っているのが確認できた。通信するのに十分な信号強度である。B局がA局に応答すると、A局側でもB局の信号がS8で入感、簡単に交信が成立した。SHF帯というのは、飛びにくいだろうといった先入観があったが、いとも簡単に交信ができるものだと驚いた。これで、お互いに実効長約30cmのコーリニアアンテナで必要十分な信号強度で交信でき、5.6GHz帯でも十分にアマチュア無線を楽しめることが解った。


A地点からB地点を、双眼鏡を使って目視確認中

次は、万一コーリニアアンテナ同士で通信できないときのために、と用意しておいた直径40cmのパラボラアンテナに取り替えて、再度通信テストが実施された。コーリニアアンテナでは信号強度がメーター読みでS8であったが、パラボラアンテナではピークでS9+20dBまで上昇した。このくらいの強度の入感であれば、パラボラアンテナの向きがズレていても受信可能なので、Sメーターを見ながら相手局の信号を、パラボラアンテナの方位角と俯角でピークに調整でき、ピンポイントで相手局にアンテナを向けることが容易にできた。最後にSSBモードでも実験が行われ、問題なく通信できることが確認された後、この日の実験は終了した。


アンテナを40cmパラボラに変更 (A地点)

過去はもちろん、現在ですら市販品のアマチュア無線用トランシーバーが存在しないSHF帯であるが、昨今5Gが叫ばれるようになり、このSHFの周波数帯が脚光を浴びている。HF帯のような電離層伝搬ではないものの、SHF帯特有の電波伝搬が楽しめ、かつ通常QSOはもちろん、その広い帯域を利用して各種通信実験も行えるため、完成品のアマチュア無線用トランシーバーが発売されることを、楽しみに待つことにしよう。


B地点からA地点を望む

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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