Masacoのうたのせかい／第十回あなたとともに咲かせましょう｜2025年3月号

Masacoのうたのせかい

第十回あなたとともに咲かせましょう

JH1CBX Masaco

2025年3月17日掲載

コートの出番は終わった! って思うほどのポカポカ陽気から、一気に真冬に戻り、この原稿を書いている今、窓の外は雪が舞う東京。季節の変わり目、まさに三寒四温･･･。雪の下で春の準備をしている木々、足元で咲く小さな花、忙しない日常で、自然の営みに気づいた時、心が呼び起こされます。春は必ず来る･･･きっと必ず来る･･･そう自分に言い聞かせ過ごした日々が、映画の1シーンのようにいつも浮かびます。冬から春への移ろいを楽しみながら歌える今の環境に幸せをかみしめています。

3月になるといつも思い出します

公務員という仕事を辞めてでも挑戦したかった歌の世界。「歌うなら東京で勝負!」その思いの強さだけは誰よりも一番だったのですが、何のあてもなく上京したので、当たり前ですが、生活をする･･･ということからスタートし、気づけば4つのアルバイトを掛け持ちしていました。歌いたい! という夢でココにきたのに、家賃を払うためだけにココにいる･･･本末転倒の毎日が何年も･･･本当に長く続きました。誰とも会いたくないし、故郷に帰ることもできなかったです。やっぱり、故郷へは大きなニュースというお土産を持って帰りたかったから･･･。私と故郷の距離が大きな大きな溝になり、ため息が流れていた時期です。親にどれだけ心配をかけたことか･･･電話すら掛けたくない私を悟ったかのように、何も言わずに毎月宅配便で食品を送り続けてくれたこと、その中には毎回、走り書きのメモが添えてあり、心が震え、頑張らな! と何度何度も思いました･･･。でも3月が来るたびに、また1年アルバイトで終わってしまった･･･心が苦しかったです。

井の頭公園

東京は、ビルに囲まれていても、突然、緑豊かな場所が現れ都会と自然がうまく融合しています。モヤモヤした時は自然の中を走ることで心のバランスをとっていました♪ ダラダラした日も走ると、今日1日をやり遂げた達成感みたいなものが沸いてスカッとするんです(笑)。ある日、井の頭公園を走っていると、満開の桜に出会いました。ふと立ち止まりその場から動くことができなくなってしまいました。高校でお世話になった陸上部の恩師が試合で結果が出ない私にかけてくれた言葉が聞こえて来たんです。「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ･･･。人それぞれ花開くタイミングは違っても必ずどこかでちゃんと見てくれている人はいる! 貫く精神と積み重ねは裏切らないから･･･」

見事な桜の花は、今の私に気づきのチャンスを与えてくれたかのようで、一気に溜め込んでいた感情があふれ、人目も気にせず涙が止まりませんでした。桜は人に見向きもされない暑い夏も、寒い冬もじっとじっと耐え抜いて、揺るがない根を張って、春とともに芽吹き花を咲かせる。それも10日ほどの儚い期間で大きな大きな夢のような時間を与えてくれる･･･。私はこの日から初心に戻り、アルバイトと歌の両立ができるようにしました。そして溢れる思いで、言葉を紡ぎ「私の花を咲かせましょう」という歌詞が完成しました。

東日本大震災

がむしゃらに歌い始めたタイミングで、ご縁をいただき、茨城放送(現Lucky FM茨城放送)のラジオパーソナリティーを担当させていただきました。2011年3月11日、あの日ちょうど局へ向かおうとした時に、東日本大震災が起こりました。交通手段を一時失い、定時放送の全てが震災報道に変わり、何もできないもどかしさに立ち往生していました。その時、一通のメールが届いたんです。「じっとしていないで、一人のためでも歌えばいい! 茨城に歌いに来てほしい･･･」その言葉に我に返り、翌日から北茨城の被災地や、お世話になった県内を小さなアンプを手に訪ねました。それまでは一人でも多くの人を集めて、liveがしたい! そんなことばかり考えていましたが、思いが変わった一瞬でした。欲張らずすぐ近くの人に思いを伝え、その輪を広げていくことの大切さに気づきました。歌の時間だけでも心がほぐれて、一人じゃないよ!仲間がここにいるよ♪ という思いが届けばと願っていたのですが、迎え入れてくれる優しさと、懸命に生き抜く力に、私の方がたくさんの勇気や希望をいただき、深くつながる時間になりました。言葉にならない思いは歌で伝え続けよう、そう誓った経験でした。

あなたとともに･･･

井の頭公園の満開の桜を見て、出来上がった「私の花を咲かせましょう」という曲。その後、東日本大震災で出会った人々の思い、そして、ともに生きてがんばりましょう♪ と託されたように交わした握手が心にずっと残っていて、自分だけの花を咲かせるのではなくて、私の夢は、応援してくれているあなたと一緒に咲かせたい･･･と強く思うようになり、最後は「あなたとともに咲かせましょう」というタイトルに変えて、リリースという形になりました♪ 色々な経験をして、次は何が起こるかわからないけど、一つづつ上っていく階段は自分を信じた数かもしれません。そして今があるのは、過去の私もひっくるめて出会って下さった全ての人のおかげなんだと思います。心の豊かさを深め、色あせることなく、私らしいカラフルな花へと成長できるよう、磨き続けますね。ちなみに、この曲は「むせんのせかい」のCDに入っているので聞いてくださった方も多いかと思います♪ 特にこの時期は、受験の息子さんへの応援歌としてこの曲を贈ったんです! という嬉しいお声も頂きました。ぜひ下記で視聴もできますのでチェックしてくださいね♪