新・エレクトロニクス工作室
2025年10月15日掲載
第39回で初めて基板を外注し10dB×3のアッテネータを作りました。その後も基板を発注し、異種の基板を組み合わせる事も行いました。その中で作った基板が、今回の2台のアッテネータです。
スペアナは低いレベルから測れる高感度な測定器です。逆に言えば、高いレベルまでは測れません。機種にもよりますが、写真1のように+20dBmと表示があります。これは壊れないというレベルであって、測れるという意味ではありません。従って、送信機の出力を測定する時にはアッテネータが必須です。保護という事でも、常時入れておくのが安全なのでしょう。ちなみにTinySAの入力は+10dBmと言われていますので、当然ですがアッテネータが必要です。1Wを測るには20dB以上のアッテネータを入れる必要があります。また、ある程度の耐電力も必要で、これは前回のアッテネータと異なる部分です。
写真1 スペアナの入力にある+20dBmは壊れないという意味
一般的な方法になりますが、このような測定や実験は減衰量が大きめのアッテネータを入れてから始めます。そして状況を確認しながらアッテネータの減衰量を徐々に減らし、最適な値に合わせます。これが安全な方法で、逆に増やすような作業は危険です。もちろん、調整には外部アッテネータの他に、スペアナ内部のアッテネータも使用します。
そこで作ったのが、写真2のような10+10dBアッテネータです。つまり、10dBの固定とON/OFFのできる10dBを組み合わせました。合計20dBのアッテネータになります。1段目のアッテネータは1Wの抵抗を使っていますので、計算上の最大入力は1.9Wになります。トグルスイッチでON/OFFするようにした2段目は1/6Wの抵抗ですので、こちらの方は余裕があります。基板にMAX 2Wと表示しているのですが、2Wは短時間と考えて下さい。基板に表示がありますが、写真2の左側が入力側になります。INとOUTを反対にしてもアッテネータは同じですが、耐電力は極端に少なくなります。1W程度の送信機の自作をしていると、このアッテネータだけで概ね済むはずです。TinySAでは10dBを一段追加するのが良いかもしれません。
写真2 スペアナの入力用として作った10+10dBアッテネータ
くどいようですが、この程度のアッテネータが10Wや100Wに耐えられるはずがありません。また、20dB程度の減衰量ではスペアナも過大入力になります。抵抗は燃えるしスペアナも壊れる可能性があります。このようなミスは、自己責任です。
基板を組み合わせた中で、写真3のような固定値用も作りました。このようなアッテネータも作りたかったのです。一応10dBの固定値としています。ここには、1/2Wの抵抗を使っています。10dBとする場合は0.95Wのアッテネータになります。1Wの連続は避ける方が良いでしょう。但し、入力側と出力側のインピーダンスのズレによって、消費電力は変わります。絶対に大丈夫という計算ではありません。基板としては、どちらを入力側にしても同じです。
写真3 基板で作った10dB固定値のアッテネータ
このようなアッテネータは、様々な実験や測定に便利です。いろいろな値を使いたくなる事もあると思います。
10+10dBのアッテネータが図1で、10dB固定値のアッテネータが図2の回路となります。どちらも10dBのアッテネータとして考えていますが、この値でなくても基板は使えます。値を変える時は第39回の表1を参考にして下さい。ただ、スペアナ等の測定関係に使うのであれば、10dBが一番使いやすいと思います。ただ、この抵抗値は減衰量的には概ね合うのですが、リターンロス的には今一つです。つまりインピーダンスに若干のズレがあります。第39回の表1のとおりです。
図2 10dB固定値のアッテネータの回路図
図1の回路では150Ωを並列にしています。これはカーボン抵抗で1Wの75Ωが秋月電子に無かったためです。そのため1/2Wの150Ωの並列としました。この方がサイズ的にはしっくりします。最近は購入のできる抵抗値も少しずつ減っているようです。
10+10dBの切り替えスイッチには、秋月電子で購入した基板用のトグルスイッチを使いました。秋月電子のWEB上で104028と入れて検索するとすぐに出て来ます。これが在庫僅少になっている事に気が付きました。固定用の足がありませんが100301でも同様に使えるはずです。特性の相違は確認していません。
入出力には基板用のBNCコネクタ117466か、基板用のSMAコネクタ113195を使用します。どちらのコネクタも秋月電子で購入したもので、番号で検索できます。
10+10dBの基板が写真4になります。部品面とハンダ面になります。コネクタはSMAと共用できるように作っていますが、スペアナの入力用に使うのであればBNCなのでしょう。TinySAであれば、入力側をBNCにして出力側はSMAにする方法もあります。前回のアッテネータと同じですが、フットプリントは共用できるように作っています。
写真4 10+10dBのアッテネータ用基板 部品面とハンダ面
この基板にBNCコネクタとトグルスイッチ、抵抗を付けたところが写真5になります。そのハンダ面が写真6になります。フットプリントは共用できるように作っていますが、私としてはBNCしか作っていません。
写真5 部品をハンダ付けした様子
写真6 そのハンダ面の様子
固定値用の基板が写真7になります。部品面とハンダ面になります。
写真7 10dB固定値のアッテネータ 基板の部品面とハンダ面
この基板にBNCコネクタと抵抗を付けたところが写真8になります。そのハンダ面が写真9になります。
写真8 部品をハンダ付けした様子
写真9 そのハンダ面の様子
なお、基板に余りがあります。興味のある方はメール(私のコール@kha.biglobe.ne.jp)で、お知らせ下さい。アナログな方式で恐縮ですが、メールで住所を返信しますので、切手を貼った返送用の封筒を入れて送って下さい。いわゆるSASEです。基板代として一枚110円分の切手を入れて下さい。第39回の基板と同時でも結構です。キットではありませんので、部品は御自分で集めて下さい。北海道ハムフェアで10dB用の抵抗入りを頒布しました。この余りが多少ありますので、同様に一枚120円分の切手でお願いします。
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