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新・エレクトロニクス工作室

第20回 50MHz AMトランシーバ

JE1UCI 冨川寿夫

2023年12月15日掲載

このトランシーバは、第8回の「AF部&電源部テストボード」、第10回の「IF部テストボード」、第11回の「Si5351Aを使ったVFO実験ボード2」、第12回の「RF部テストボード」、これらのまとめとなります。写真1のようにQRPのトランシーバを作製しました。元々このようなトランシーバを目指していたので、とりあえずのゴールになります。もちろん、これで完璧などとは全く思ってはいません。早速ですが2号機も考えています。


写真1 このように作製したハンディタイプ? の50MHz AMトランシーバ

構成

これまでの流れから、受信部は概ね想像可能と思います。図1のようなブロック図のトランシーバになります。局発にはSi5351Aを用い39.3~40.3MHzを1kHzステップで発振させます。これを使って50MHz帯を第一IFの10.7MHzにします。これをLA1600で10.7MHz-10.245MHz=455kHzにします。これが第二IFになります。455kHzには普通セラミックフィルタを使うのですが、これを使わずにコイルだけにしました。最初のクリスタルフィルタで全ての帯域が決まります。まあ手抜きと言えば、その通りでしょう。


図1 このトランシーバのブロック図(青:共通 黄:受信 橙:送信)

LA1600だけを使ったシングルスーパーとして、50MHzから455kHzに一気に下げてしまう方法もあります。恐らくそれでも充分とは思いますが昔々からの感覚があり、どうしてもイメージによる混信が気になってしまいます。その割にはセラミックフィルタを使わない手抜きをしていますので、自分でもどうかと思います。

送信部はSi5351A出力の50MHzを2SK241で増幅し、ファイナルの2SC1815をドライブしています。受信部と違って、テストボードを作らずにまとめました。そのため、後からまずい部分が出てきました。やはり近道はないという事なのでしょう。

回路

受信部はここまでの実験の結果ですし、良くある回路ですので基本的には説明も不要かと思います。図2が全回路となります。IFには10.7MHzで10kHz幅のクリスタルフィルタを使っています。これはテストボードでの実験でも使っていたフィルタで、昔々にジャンクで仕入れたものです。割と本格的なフィルタですが、そこまで必要もありません。セラミックフィルタでも、ラダー型で組んでも良いと思います。6~10kHz程度の幅であれば良いと思います。


図2 全体の回路図

送信部はLM386を使用して、トランスなしで2SC1815のコレクタ変調をしています。この回路は、基本的にFCZ研究所の大久保さんの回路です。電源電圧の半分しか使えませんが、出力10mW程度の超QRPとしてはちょうど良い回路と思います。まあ、受信部とのバランスは合っているのでしょう。

ところで、LM386の出力インピーダンスは8Ωですので、非常に小さいのです。LPFであればπ型にコンデンサを入れるのですが、インピーダンスが小さいためにLM386側にコンデンサを入れても効果はありません。これは考えてみれば当然の結果でした。そんな実験をしていてインピーダンス変換を思いつきました。これが図3の赤丸の部分ですが、このLCでインピーダンスを上げています。高周波では良く使用されますが、低周波で使ったのは初めてです。コンデンサには10μFを使っていますので、AF信号が地絡しそうですが大丈夫です。これはインピーダンス変換以外に、LPFも兼用させています。多少ですが帯域幅を考えたもので、2kHz以上ではかなり下がり高音域は出ません。


図3 LM386出力のインピーダンス変換回路(円の中)

試しに図4のように630Hzでスミスチャートを回すと、8Ωから70Ωまで上がります。8Ωに比べれば高いのですが、ファイナルのインピーダンスは2kΩ程度にはなりそうですので、これでもマッチングとしては全く不十分です。しかし、70Ωにしただけでも、相当な効果があります。私も630Hzでスミスチャートを回したのは初めてです。


図4 630Hzで回してみたスミスチャート

マッチングとしてはもっと大きいLを使って、インピーダンスを更に上げたいところです。しかし、小型コイルでは直流抵抗が高くなってしまいます。それでは直流電圧が下がってしまいます。使用した写真2の5.6mHは直流抵抗がデジタルテスターで6.6Ω程度でした。同じサイズで20mHと39mHがありましたが、当然ですが巻線が細くなります。数10Ω程度になりますので使うのは止めました。もちろんフェライトコアに手巻きをしても良いと思います。FT37#75に50回巻くと5.6mH程度になるはずです。数10mHのコイルを自在に作れると実験の幅が広がるのですが、AL値の高いコアの入手は困難のようです。


写真2 使用した5.6mHのコイル

このように計算と実験を繰り返し、まあまあの結果となりました。簡単に700Hzでシミュレーションを行ったのが図5になります。矢印は回路の位置と電圧をつなげています。8Ωの出力電圧は、LCのインピーダンス変換によって上昇している事が解ります。このように完全にマッチングしなくても、相当な効果があります。周波数特性も右図のようにピークがあります。図4と同様に630Hz付近と思われます。AFのLPFとしては効き過ぎのようですし、LCの値については検討の余地が大いにあります。


図5 動作シミュレーション(赤:LM386出力 緑:インピーダンス変換後 青:DC4.5V)

作製

図6のような実装図を書いてから作製しました。ハンダ面が図7になります。基板はサンハヤトのICB-96DSEを使いました。部品面にグランドが付いた基板になります。これをカットして使用しています。従って、アースにする時には部品面のグランドにハンダ付けします。そのポイントが図6の緑の点になります。このような基板は、アース側を引き回す必要がないため、高周波での作製が簡単です。


図6 実装図


図7 実装図のハンダ面

Si5351Aの部分は秋月電子のモジュールを使っています。実装図もそのとおりに作っています。これはここまでの実験と同様です。

マイクアンプとコンプレッサ兼用でTA2011Sを使っているのですが、最初は直接LM386に入れていました。ところが、どうしても変調度が思ったようになりません。そこで後から追加したため、基板内に入りませんでした。別基板を基板上に載せるという、目も当てられない作り方になってしまいました。後から追加したTA2011S基板の実装図が図8になります。ハンダ面が図9になります。この基板も部品面にグランドが付いた基板になります。


図8 TA2011S基板の実装図


図9 TA2011S基板のハンダ面

TA2011Sの基板は、メッキ線でメインの基板に固定しています。これは不細工になってしまった部分です。この基板を写真3のようにメインの基板上にハンダ付けして載せています。


写真3 メインの基板にメッキ線で固定したTA2001Sの基板

なおスピーカはaitendoで入手した超小型をネジ止めしました。写真3の上側に写っているのがスピーカです。超小型ですので低音はほぼ出ません。高音域に偏ってしまう感じですが、仕方ないのでしょう。

写真4のようにざっと組んで動作の確認を行いました。ここで受信と送信はもちろん、切り替えの様子もチェックしました。切り替えた瞬間に「バツッ」と大きな音がでるような失態があってはなりません。もちろん、全くノイズが出ないという事ではありませんが、許容の範囲なのでしょう。これは極めて主観的な感覚になります。


写真4 動作チェックの実施

写真5は、アルミ板に載せるレイアウトを考えている様子です。電池ボックスとの間隔等を考えておきます。当然ですが、ツマミと電池が近すぎると使い難くなります。


写真5 アルミ板上でレイアウト検討

LPFは写真6のようにBNCコネクタの直付けとしています。送受共にLPFを通ってしまいますが、レイアウト的な作りやすさを優先しました。一般的に受信側にLPFを入れる必要はないのですが、受信時の不要輻射が高い周波数で発生しないようする意味もあります。


写真6 LPFはBNCコネクタの裏に取り付け

送受の切り替えには2回路のトグルスイッチを用いています。電源の切り替えとアンテナの切り替えです。アンテナ側は極細の同軸を使って配線を行いますが、この部分で外側導体は意識的に接地させていません。写真7のように外側導体をハンダ付けするランドをトグルスイッチに貼り付けています。この場合、接地させない意味はあまり無いと思います。


写真7 同軸の外皮側はトグルスイッチにランドを貼って処理

写真8のようにケースには入れず、基板全体が見えるようにしました。これはハムフェア等で自作機の展示という事を考えました。自作トランシーバですので、このような作り方もあって良いと思います。ケースのレイアウトと基板のレイアウトを同時に考える必要がありません。簡単な作り方になりますし、押し込むような無理をする必要がありません。なお、写真では解りませんが、基板とアルミLアングルの距離が近いためメンテ時の取り外しが面倒になります。そこで、Lアングルを固定するナットにはカレイナットを用いて、脱着が容易な構造にしています。


写真8 このように基板全体が見えるハンディトランシーバ

写真9は裏側からで、このように銘板を付けています。少々ネジだらけなのが気になります。基板はアルミ板にネジ止めし、左手で持って操作するようにしています。つまり左手の親指でトグルスイッチを操作し、送受の切り替えをします。


写真9 裏側には銘板を貼った

ソフト

電源ON時は、定番の周波数付近の50.65MHzでスタートします。ロータリーエンコーダは、クリック付きで1回転25ステップを使っています。ソフトでは1ステップで1kHz可変しますので、1回転で25kHzになります。VFOの可変範囲は50~51MHzですので、1MHz幅を移動するのに40回転となり少々面倒です。

受信の5Vを3.3kΩと4.7kΩで分圧し、CPUのATtiny861Aの7ピンに加える事で送受の切り替えを検知します。ATtiny861Aは送受の周波数設定を切り替えます。CPUを使っているのですから本来はCPUのピンにスタンバイスイッチを接続し、最初にソフトが切り替えを検知するのが良いと思います。周波数の設定と送信電圧と受信電圧のタイミングを全てソフトでコントロールできますので、切り替え時のノイズ等のコントロールも可能になります。今回はスペースの都合もあって、超簡易的な切り替えとしました。

明らかに下手くそなソフトですが、参考のために一式を「ここ」にZIPファイルで置いておきます。トランシーバにするために、第11回の「Si5351Aを使ったVFO実験ボード2」からは進化させています。当然ですが、私の都合で作っています。LCDの上側に出て来るのは私のコールサインですので、気分を害されないようお願いします。

測定

スプリアスですが、図10はLPFを付けていない状態をバラックの状態で測定しました。12dBのアッテネータを入れていますので、出力は10mW程度です。法令的にはスプリアスは50μW以下ですが、さすがにクリアできません。LPFを付けると図11のように-46dBmですのでアッテネータの分を戻すと-34dBmになります。0.4μWになりますので充分に法令内です。


図10 LPFなしの状態でのスプリアス(12dBアッテネータあり)


図11 LPFを付けると法令内となる(12dBアッテネータあり)

受信時の不要輻射は法令で4nWと決められています。4nWは-54dBmになります。図12のように240MHz付近に-68.86dBmの漏れがありますが、充分に法令内です。


図12 受信時の不要輻射も充分に法令内

なお、マイク直付けの構造にしましたので、疑似音声を接続する事ができません。従って占有周波数帯幅の測定ができません。LM386出力のインピーダンス変換が強力なLPFになっていますので問題は無いとは思います。しかし、このようなケースでの測定も考えなくては、とは思っています。

使用感

受信感度は結構良いようです。しかしチューニングを回すと、結構スプリアスが受信されてしまいます。恐らく、Si5351Aの内部で作られるスプリアスと思われます。もう少しソフトを考えて、周波数の作り方を変えた方が良いのでしょう。更に問題なのはクリスタルフィルタのインピーダンスが合っていない事で、少々10kHzの帯域内で波打つ感じになってしまいました。これはテストボードで試したはずなのですが、完全にツメが甘かった部分です。まあ、抵抗を使って調整する事も可能でしょう。

このトランシーバを持ってデモを札幌と名古屋のミーティングで行おうとしたのですが、AFアンプが発振して受信できるような状態ではありませんでした。最初は古い006P電池を使ったのが原因と思っていました。ところが、新しい電池でも上手く受信できません。そこでようやく本格的に調査をしたのですが、LA1600の電源にハンダのルーズがありました。これで受信できないようなトラブルはない・・・ はずです。

まあ、トランシーバの消費電流を考えて006P電池で十分とは思ったのですが、少なくとも電圧の表示くらいは付ければ良かったと思いました。CPUのA/D変換端子は空いていますし、ソフト的にも余裕があります。これは失敗でした。このようなトランシーバを作ると何らかの不満が出て来るのが普通です。その不満を元に完成度を上げるのが自作なのでしょう。

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