今更聞けない無線と回路設計の話
2026年4月1日掲載
ここまで解説すれば、察しの良い方なら「8ビットのADCなら表現できる最大振幅は256、これを0dBと置くのが[dBFS]という単位なので、8ビットのADCの量子化雑音は約−48[dBFS]の大きさをもっている」と解釈されたかもしれません。しかしそれは早合点で、もう一つ考慮すべき事があります。それは我々が扱う電気信号は交流だということです。交流信号は時間とともにその極性が反転します。つまりデジタル空間においてもマイナスの大きさを表現する必要があると言うことです。
一般にコンピュータを用いた数値演算(整数演算)においてマイナスの数を表現する際は、表3に示すような「2の補数」を用います。

表3 10進数と2の補数表現(ビット長4の場合)
我々が通常扱う数値の表現や四則演算のルールで正負の数を扱う場合、0(ゼロ)を挟んで負の数では足し算と引き算の関係が逆転したりしますが、補数表現では0を挟んでも演算方法に変更が発生しない為、計算機での演算処理が簡単になります。表3が示すように、2の補数を用いて負の数を表現する整数空間では正負で同じ大きさの空間が必要になります。従って負の数を表現する整数型データのビット長と振幅の関係は表4に示すようになります。

表4 負数を扱う整数型データのビット長と振幅の関係
ビット空間で表現できる振幅はPeak to Peakで見れば同じですが、実効値、最大値で見るとビット幅の半分、すなわち1ビット分小さい値になります。なお2の補数についてもWikipediaなどに詳しく解説されています。補数表現の詳細はそちらをご参照ください。
[dBFS]はデジタル空間の信号振幅を表現するデシベルです。振幅なのでアナログ領域の“電圧[dBµV]”に該当します。振幅の大きさをN、ビット空間で取り扱える最大振幅をNmaxとすると、m[dBFS]への換算は

(式5-1)
の関係なので、いわゆる「実効値」に該当する振幅を表現した値になります。従って5章冒頭で述べた「8ビットのADCなら・・・」のくだりは・・・
「8ビットのADCなら表現できる最大振幅Nmaxは絶対値で128、これを0dBと置くのが[dBFS]という単位なので、8ビットのADCの量子化雑音は約−42[dBFS]の大きさをもっている」
ということになります。
第18話では、一気通貫で作成したレベルダイヤグラム※1の「①音声入力」「②変調」「④復調」「⑤音声出力」の各区間の縦軸目盛についての解説の初回として、これらの区間のグラフの概要と縦軸の構成について解説したあと、デジタル振幅と電圧振幅の関係をつなぐために必要な基礎知識として、デジタル信号処理における数値の表現方法、ビット数と表現できる振幅の関係について解説しました。以下第18話の要点です。
デジタル空間での振幅とアナログ信号の振幅がどのように紐付けされるのかについてはADコンバータの回路構成次第ということになります。逆に言うとADコンバータの入出力の振幅関係が正しく理解出来ていないと、ADコンバータのビット数を正しく選択出来なかったり、AD変換で大きなSNR劣化を生じさせたりしてしまいます。第19話ではこのデジタル空間での振幅の大きさと電圧振幅の大きさがどのように紐付けされるのかについて解説します。
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