今更聞けない無線と回路設計の話
2026年8月3日掲載
図1に話を戻します。DACにおける信号劣化は、デジタル側の量子化雑音
とアナログ回路部分で発生する雑音
の二乗和が主因になります。さらにアナログ回路部分で発生する雑音
は等価熱雑音
(足し算される雑音成分)と位相雑音
として伝送信号にかけ算されるサンプリングクロックジッタの電圧換算値
にわかれます。DACによってはフルスケール出力で歪みが生じるものもあり、その場合は非線形歪みによる等価雑音IM も加算されることになります。内部回路との対応関係を図5(第21話の図5の再掲)に示します。
これらの雑音がいつもの「一気通貫で作成したレベルダイヤグラム」※2にどのように反映されているか図6で確認していきます。等価熱雑音(電力)
は、増幅回路で付加される増幅器雑音
、その他の回路雑音
から構成されます。
は主にR-2Rラダー回路の電流雑音が主体となります。図6のレベルダイヤグラム上においては等価熱雑音(電力)
の大きさをNFで30dBと規定しています。(図6のセルM79) NF=30dBとは「当該回路の付加雑音が回路の入力端で熱雑音電力(電力密度)の1000倍あります」という意味です(図7)※4。
熱雑音電力密度
はボルツマン定数K=1.38×1023[J/K]、環境温度T=298K (=25℃)とすると

(式3-1)
回路の動作帯域幅BはレベルダイヤグラムのセルM78から10kHz、従って

(式3-2)

(式3-3)
TIAも出力反転増幅器も基本的に電圧利得を持っていないので、回路の伝達利得Gは1倍(0dB)として、DACの等価熱雑音
の大きさは

(式3-4)
導出された等価熱雑音
はセルM62でL列にて導出された量子化雑音
と実効値和をとりますが、NFから導出した雑音量は「電力」なので、回路インピーダンスを50Ω(DAC出力端子は50Ωで終端する想定)としてセルM66で[dBµV]に換算しています。もしDACの後段回路がhigh Z回路の場合は「開放端電圧」となるので、この値に6dBを加えます。
サンプリングクロックのジッタ雑音
は、ExcelシートのセルM72に100dBcの位相雑音として計上されています。位相雑音は伝送信号に対して乗算されるので、伝送信号に重畳するときには、信号レベルに関係なくこの値がSNRとして保存されます。DAC出力端子における信号振幅SはセルM59からS =108dBµV、従って伝送信号に重畳するジッタ雑音電圧
は、

(式3-5)
この値と、(式3-4)で導出しセルM66でdBµVに換算した等価熱雑音
、およびL列にて導出された量子化雑音
の実効値和をセルM62で計算しています。
最後に非線形歪みによる劣化ですが、今回のモデル事例では、DACは0dBFSまで線形性が確保されていて、歪みの影響は無視できる想定としています(セルM73~75、セルM80)。
第22話では、アナログ劣化を伝送信号に積み上げ計算する方法について解説し、アナログ回路の劣化が加わる最初の回路ブロックである変調部のアナログ回路部分について、いつもの「一気通貫で作成したレベルダイヤグラム」上での計算内容を具体例として解説しました。劣化の積み上げ方についてイメージを掴んでいただけたなら幸いです。以下、第22話の要点です。
今回は直交変調器まで解説するつもりでしたが、書き始めると色々書くことが多くて書き切れませんでした。第23話では、直交変調器の劣化計算について解説します。
今更聞けない無線と回路設計の話 バックナンバー
アマチュア無線関連機関/団体
各総合通信局/総合通信事務所
アマチュア無線機器メーカー(JAIA会員)
©2026 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.