2014年12月号
連載記事
第11話 3人娘、また会う日まで 前編
某日、あーちゃん、サミー、エリーの3人は仲良く海に向かっていました。目的は、マリンショーを見学するためです。ハワイ育ちのサミーは大のマリン好きです。マリンショーが開催されるという情報を聞きつけたサミーは、あーちゃんとエリーに一緒に行こうと声をかけたのでした。
エ 「今まで山では何回も交信したことがあるけど、そういえば海では一回もないよね!海でのQSO、楽しいだろうな♪」
ということで、今日も3人は愛用のID-51をそれぞれ持ってきました。
会場に到着した3人ですが、サミーは目新しいクルーザーやボートに夢中、エリーは最寄りのレピータをワッチするのに夢中になっているので、あーちゃんは少し退屈してしまいました。
あ 「せめてイケメンでも歩いていればなぁ~」
そんなことを考えていた時でした。
男 「キミたちが持っているのは、もしかしてトランシーバー?」
サ エ (うわぁ・・・めんどくさそうなのが来た・・・)
エリーとサミーが露骨に嫌な顔をする隣で、あーちゃんは
あ (キャー!超タ・イ・プ♡)
目を輝かせていました。
サ 「まぁ、そうですけど・・・」
男 「もしかしてキミたち、ハムってやつ? もち、食べ物じゃないほうのね☆」
エ 「まぁ、そうですけど・・・」
男 「オレのオヤジもハムってやつなんだぜ!」
あ 「ウッソ~?!すっご~い!偶然ですねぇ☆」
サミーとエリーはあーちゃんの脇を小突きながら小声で
サ エ 「ちょっと、あーちゃん!相手にしちゃダメでしょ!」
と言いましたが、2人に放置されてへそを曲げていたあーちゃんは、わざと2人の忠告を無視しました。
男 「よかったらさぁ、連絡先教えてよ☆ オレん家の無線機とかボートとか色々すげぇの見せてやっからさ~」
あ 「OK♪」
サ 「私はハワイに彼氏がいるから、そういうのはちょっと・・・」
エ 「私、携帯電話は持っていません。連絡手段は無線機のみです」
サミーとエリーは丁重にお断りしましたが、結局あーちゃんは、彼と連絡先を交換してしまったのでした。
それからしばらくして、恒例の女子会でのこと。その日のあーちゃんは、いかにも話を聴いて欲しそうな表情を浮かべていました。何となく嫌な予感がして、サミーとエリーはあえてあーちゃんに話題を振らずにいたのですが。
あ 「ってかさ~、きいてきいて!マリンショーで出会った人いたでしょ? あの人と付き合うことになったんだ~♡」
サ 「Oh, No…」
エ 「マジか~」
サミーは頭を抱え、エリーは眉間を押さえました。2人の反応に、あーちゃんはムッとしました。
あ 「ちょっとぉ、腑に落ちないんだけど、そのリアクション」
サ 「あんな男、止めといたほうがいいよ~。私の経験上、あのタイプの男はロクでもないよ」
あ 「そ、そんなことない!!」
あ 「彼、すごいんだから! お父さんはIT系のベンチャー企業の社長さんで、秒単位で何億円も稼ぐらしいし、お母さんは女優さんが使うような化粧品を色んな人に売るお仕事してて、すっごいお金持ちなんだよ! それに何より、かっこいいし♪」
サ 「それっていかがわしさMax」
エ 「恋は盲目って言うけど、酷すぎる・・・」
あーちゃんが彼の良さをどれだけ力説しても、サミーとエリーは呆れかえるばかりです。あーちゃんも徐々に自分の判断に少し自信が無くなってきましたが、ここまで来ると後には引けません。
サ 「あーちゃん、悪いことは言わないから、今すぐに別れな。ね?」
エ 「あんな人と付き合ってちゃ、その内イタい目みることになるよ」
あ 「ふたりの分からず屋!!!もういい!!!」
あーちゃんはテーブルに千円札を叩き付けると、店を飛び出してしまいました。
サミーとエリーは顔を見合わせて、やれやれと溜息をつきました。
数日後、あーちゃんは、彼の招待で彼の別荘に遊びに行きました。いきなり別荘なんて、と一度はとまどったあーちゃんですが、
男 「別荘にはドデカいHF機ってのと、ドデカいアンテナがあるんだぜ!」
と言われ、好奇心を抑えらず、ついつい乗せられてしまったのでした。
別荘には確かに、ハムフェアで見たような、高級なHF機が何台も置かれていました。HF機とは海外などの遠距離と交信するトランシーバーのことです。そして、屋外には見上げるほど高いタワーにアンテナが載っていました。あーちゃんは大興奮で何枚も写真を撮りまくりました。
あ (エリーに見せたら大喜びするだろうな)
と思って写真を送信しようとしましたが、喧嘩中だったことを思い出し、やっぱり止めてしまいました。
あれから、あーちゃんはサミーとエリーと連絡を取っていませんでした。2人はこれまでどんな時でもあーちゃんの味方だったので、あれほど猛反対されたのは初めてのことでした。あーちゃんは2人の話に聞く耳を持たずに店を飛び出してしまったことを少し反省していましたが、なかなか謝ることができないでいました。
男 「そういやさぁ、今度金色の無線機も買うってオヤジが言ってたな」
あ 「もしかしてIC-7850のこと?あれ100万円以上もするんだよ?!」
男 「そうそう、それ!まぁ、オレのオヤジにかかったら安いもんよ」
彼はさらに鼻を高くして、ふんぞり返って言いました。
あ (サミーとエリーは反対するけど・・・やっぱりステキ☆)
あーちゃんはそんな彼にますます首ったけになりました。
男 「裏の海岸に、オヤジのクルーザーがとめてあるからさ、今から乗りにいかね?」
彼は親指で背後をくいっと指さしながら言いました
あ 「船の運転免許持ってるの? それに、ちょっと寒くない?」
男 「持ってるに決まってるっしょ。オレにとって、船はトモダチみたいなもんなんだぜ☆ それに、船にもすごい無線機が積んでるあるからさ!」
あ 「すごい無線機・・・?!」
あーちゃんは大喜びで彼の後をついていきました。
船着き場に着くと、あーちゃんは促されるままにクルーザーに乗り込みました。
あ 「わ~これがマリン用トランシーバーかぁ♪ 初めて見た」
船内には、トランシーバーの他にレーダーやプロッターなどの航海機器が設置されていました。初めて見る航海機器に舞い上がりながら船内を散策していると、突如エンジン音が鳴り始めました。彼が勝手にクルーザーを発進させてしまったのです。船着き場はぐんぐん遠ざかっていきます。あーちゃんは愕然としました。
あ 「ちょっと、勝手に動かさないでよ~!」
男 「そんなビビんなって。絶対楽しいからさぁ。まぁオレの腕に任せなよ」
船に乗ったことがほとんどないあーちゃんは、不安でたまらなくなりました。何事もなく帰ってこれますように、と祈りました。
ふと気が付くと、エンジン音がやんでいました。不思議に思って操縦席に近寄ると、彼が冷や汗をわんさかかきながら、慌てふためいています。
あ 「ねぇ、どうしたの?」
男 「エ、エエ、エンジンが止まった~!!」
あ 「ええ?!そんなぁ、どうにかしてよ~(;O;)」
男 「今やってるからちょっと黙ってろよ!」
彼の態度にあーちゃんは少しがっかりしました。彼は半べそをかいて船の中を行ったり来たりしていますが、一向にエンジンが復活する兆しはありません。
あ 「ねぇ、ボートはお友達なんでしょ?!」
あーちゃんは少しイライラし始めていました。
男 「このボートはパパのなんだよ~。エンジンの直し方なんて分かるわけねぇだろぉ」
ついに彼は泣きべそをかき始めました。
あ (本当は海なんてそんなに興味ないし、珍しい無線機が見たかっただけなのに。こんなところまで連れてこられて、おまけにエンジントラブルなんて、サイテーサイアク!しかも彼がこんなにヘタレだったとは・・・!)
あ 「チッ、しょうがない。こうなったら救助を呼ぼう」
あーちゃんはスマホを取り出すと、110番へ連絡しようとしました。なんとそこへ、彼が飛びかかってきたのです。
男 「ちょ待てよ!誰かに連絡なんてしたら、無断でクルーザーを持ち出したことがパパにバレちゃうだろ!」
あ 「このバカッ、離せ、って、あ―――ッッッ!」
あーちゃんのスマホは、ぽちゃんと水しぶきをたてて、そのまま海の藻屑と化してしまいました。
あ 「私のスマホがあぁあぁぁ。まだ機種代金払い終わってないのにぃぃ(T_T)」
あーちゃんは彼の胸倉をつかむと、激しく揺さぶりました。
あ 「どうやって助けを呼ぶ気!?あんた、マリン用トランシーバーの使い方分かるの?!」
男 「オレは無線の免許持ってねぇもん、一般ピーポーだもん」
あ 「このままあんたと2人きりで海を漂流なんて、絶対イヤだからね!!!」
男 「パパ~~~!助けて~~~!」
あ (こんなことになるなら、サミーとエリーの言うことをちゃんと聞けばよかった!)
あーちゃんは泣きわめく彼を突き放すと、途方にくれて、がっくりと膝を折りました。
次回・・・
あーちゃん絶体絶命の大ピンチ! 今こそ、3人娘の友情が試される―――!
「第12話 3人娘、また会う日まで 後編」
お楽しみに☆