2014年11月号

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第10話 トラブル発生!~無線機を活用しよう~ サミー編

無線機の扱いにも慣れ、その日もあーちゃんとエリーと交信を行ったサミーですが、表情は明るくありません。
 「ハワイのライフセーバーのお兄さん、今なにしてるのかな・・・」

サミーは1年前にハワイで出会ったライフセーバーのことを忘れられずにいました。職場の男の人も、街で出会う男の人も、電波でお話しした男の人も、ライフセーバーには適いません。ことあるごとに思い出し、サミーは切なく胸を痛めていました。
 「お兄さんともう一度お話したいなぁ・・・」

そもそもサミーがアマチュア無線の免許を取ったきっかけは、遠く離れたライフセーバーと日本からお話をするためでした。これまでシンプレックス(同じ周波数で通信する方法)での交信は何度も経験しましたが、シンプレックスでは海外まで電波が届きません。
ハワイのライフセーバーと交信するため、サミーはMasaco先輩に相談してみることにしました。

M 「それなら、『レピータ』を使って『ゲート越え』通信をすれば簡単よ(^^)」
「ゲート越え」とは、自分のアクセスしている近所のレピータからインターネットを経由して遠隔地のレピータに接続し、その遠隔地(たとえばハワイ)のレピータを使って、遠く離れた相手との交信を行う方法です。

 「その、『レピータ』って何ですか?」
M 「直接電波が届かないくらい遠くにいる相手局と交信する時に、電波を中継してくれる無人の無線局のことよ。1つのレピータを使って交信する方法を『山かけ』、途中インターネットを経由して2つのレピータを使って交信する方法を『ゲート越え』と言うの。D-STARの通信ではよく使われる言葉だから、覚えておいたほうがいいかもね」

 「じゃぁ、関ハムやハムフェアで記念局を運用した時は、『山かけ』だったってことですか?」
M 「そのとおり!」
 「なるほど~。今度エリーやあーちゃんにこのことを教えてあげよっと♪ エリーは悔しがるだろうなぁ・・・( 艸`*)」
M 「サミー、悪い顔になってるよ・・・。それより、ゲート越えの通信を行うには、あらかじめJARLの管理サーバーに登録を行うことが必要なの。インターネットから簡単に出来ちゃうから、今サクッとやっちゃいましょう!」

サミーは自分のスマホからJARLのホームページにアクセスし、登録手続き(D-STAR利用申込み)を行いました。

M 「後日JARLからメールが届いたら登録完了よ」
 「すっごく簡単ですね! しかも無料☆」
M 「ID-51の設定方法も教えておくね。登録完了したらすぐに交信したいでしょ?(#^v^#)」
 「Of courseですっ」

サミーはMasaco先輩から、無線機の設定方法を手取り足取り教えてもらいました。
 「ちょっと難しそうだけど、やってみますっ!(でも忘れちゃいそう~;;)」
M 「カーチャンクして、ちゃんと『UR?』って表示されたら、その人のコールサインを指定して呼び出せばOK」
 「Oops!!!」
M 「わっ、ビックリした。 どうしたの?」
 「私、お兄さんのコールサインを知りません (´;ω;`)」
M 「それは困ったなぁ・・・。CQを出して、それに応答してくれることを祈るしかないわね」
 「うう、そんなぁ・・・」

それから数日後、仕事が終わって自室でくつろいでいるところ、JARLから登録完了の返信がありました。
 「わーい!待ってました!」

ベッドから飛び起きてID-51を用意すると、Masaco先輩に教えてもらったことを思い出しながら、自力でレピータの設定をしました。
 「これで大丈夫かなぁ」

まずはハワイのレピータにカーチャンクを行ってみました。カーチャンクとは、使いたいレピータに向けて電波を送信し、レピータから帰ってくる電波を受信してアクセスできるかどうかを確認することです。PTTボタンを短押しして数秒後、無線機には「RPT?」が表示されました。これは、レピータにきちんと繋がっていないか、あるいはレピータが使用中かのどちらか、という意味です。

やきもきしながら数分待ち、もう一度カーチャンクを行ってみました。すると今度は「UR?」と表示されました。これはレピータにきちんと繋がったことを意味します。サミーはすぐにCQを出しました。

 「CQ CQ CQ This is JP3KMI JP3KMI JP3KMI Standing by」
すると、間もなく応答がありました。
 「×♪○△♯■&!¥」

 (えええ―――(゚Д゚;) 何語―――?!)

自分の発音が悪かったのかな、と思い、もう一度英語で話しかけてみましたが、返ってきた言葉はやはりほとんど聞き取ることができません。心が折れそうになるサミーでしたが、気持ちを奮い立たせて一生懸命話しかけました。

 「すみません、あなたはハワイのハムですか?」
 「◇◎$'α♪× Italiana ¥●&%」
 (イタリアって言った?!(゚Д゚;))
 「そちらはハワイではないのですか?私はハワイに向けて発信しているはずなのですがっ?!」
 「@*>●☆=※!? Hahahahahawwwww」

相手局のおじさんは何故か突如爆笑し始めました。何がなんやら理解不能のサミーは、ポカンとするばかりです。
サミーが言葉を失っている間に、謎のおじさんとの交信は終了していました。そしてすぐに、別の局が呼んできました。おそるおそる応答すると、

 「況を検索 (♪♫♡」
 (やっぱり謎語!!(゚Д゚;))
 「´¢ (地名を英字ã アーッ!!Hahahahahawwwww」

その次に呼ばれた局も、さらにその次も、意味不明の言葉で話しかけてきました。
 「Oh, my God!!」

サミーは無線機のスイッチを切りました。

 「うわぁ、それは怖かっただろうな。かわいそうに・・・」
サミーはそのことをあーちゃんとエリーに女子会で報告しました。すっかり怖気づいてしまったサミーは、あれからCQを出せずにいたのでした。

 「サミー、どんな風に設定したか教えてくれる? もしかしたら何か間違ってたのかも」
 「ちゃんとMasaso先輩に教わった通りにやったはずなんだけどなぁ。でもさ、ゲート越えだよ? エリーやったことあるの?」
 「もっちろん!!」
 (チッ)

 「サミー、URにイタリアのレピータのコールサインが入ってるよ」
 「What!?」
 「そりゃイタリア語で呼ばれるわ~(笑)」
エリーはちゃちゃっとハワイのレピータに設定し直し、サミーにID-51を返してあげました。

 「これでCQを出してみて。ちゃんとハワイに繋がるはずだよ」
 「う~ん、CQかぁ・・・。今はちょっと、勇気が出ないなぁ(>_<)」
 「コールサインが分かればいいのにね。何か手がかりはない?」
 「写真ならいっぱいあるんだけど・・・」

ライフセーバーに出会った日、サミーは一緒に写真を何枚か撮っていました。スマホに保存されているそれを2人に見せます。
 「へぇ、なかなかのイケメンじゃん!」
 「だよねだよねっ♥」
 「あれ?これは――」

エリーはサミーのスマホを手に取ると、一枚の写真を拡大表示させました。
ライフセーバーとサミーの後ろに写っている車のリアガラスに、アルファベットと数字を組み合わせたステッカーが貼ってあります。
 「これ、もしかしたらコールサインじゃない?」
 「Really?!」

サミーもよく見ると、確かにそれはコールサインでした。
 「やったぁ!!これでお兄さんとお話できるっ\(^o^)/」
 「これで無事に交信ができそうだね♪」
 「よかったね、サミー」
 「ふたりともThank you! さっそく呼んでみるね」

サミーはコールサイン指定で直接ライフセーバーを呼び出しました。しかし、応答がありません。サミーは心の中で何度も「繋がりますように」と祈りました。あーちゃんとエリーもドキドキしながらサミーの交信を見守ります。
しばらくコールを続けると、ついに応答がありました。

「君、日本に住んでる女の子だよね。彼から以前君の話を聴いたことがあるから、もしかしたらそうかもと思って出てみたんだ。彼なら今出かけてるんじゃないかな。明日またこの時間に呼び出してくれるかい?彼に応答するように伝えておくよ!」
たまたまハワイのレピータをワッチしていたライフセーバーのお友達が代わりに応答してくれたのでした。

ライフセーバーのお友達との交信を終えると、サミーは喜びのあまり、涙ぐみながら2人に抱きつきました。
 「ふたりのおかげでっ、わたしっ、 ◇◎$'△♯■~」
 「サミー、何言ってるかわかんないよ~(*^o^*)」
 「付き合うことになったら紹介してよねっ☆」

翌日、サミーは勇気を振り絞ってもう一度ハワイのレピータからライフセーバーを呼び出しました。
「もしも出てくれなかったら・・・」呼び出しながら、そんな不安が胸をよぎりました。そして間もなく。

 「やぁ、久しぶり。元気にしてた?」
久々にライフセーバーの声を聴いたサミーは天にも昇る気持ちです。
「アマチュア無線にチャレンジして本当によかった!」と心から思ったサミーなのでした。

 

次回・・・
ナゾのチャラ男の登場で、3人娘の仲は崩壊寸前?!
「第11話 3人娘、また会う日まで 前編」
お楽しみに☆

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