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Topics from Around the World

簡易マルチバンドHFアンテナ

レポーター: Michael J. Toia/K6MT  月刊FB NEWS編集部抄訳

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屋外での運用には無線機のほかバッテリーやマイク、パドルなど思いのほかいろいろなものを持ち出す必要があります。バックパックを背負って野山での運用は気持ちの良いものですが、さて持ち運びとなると一仕事です。電波をよく飛ばすにはフルサイズのアンテナがベストと分かっていても持ち運びには苦労します。最近、ポータブル運用にIC-705がよく使われています。それに加え専用のオートマチックアンテナチューナーAH-705も販売されHFのポータブル運用もたいへん楽になりました。今回イギリスのアマチュア無線雑誌RadComの2021年2月号に超簡単なHFポータブルアンテナの記事が掲載されていましたので紹介します。


はじめに

HF帯で長年に渡るフィールド運用の経験で超簡単なHFアンテナを考案しましたのでご紹介します。身近に入手できる材料で製作します。特にHF帯でうまく機能し、適度に指向性もあります。図1にそのアンテナの製作、設置例を示します。準備には、約15mの並行線ケーブル(以下並行線、スピーカーケーブルでも問題ありません)、ナイロン製の釣り糸または他の軽量なロープ、約50~100gの小さなおもり(釣り用のおもり)、それに地面に突き刺すことができる硬い棒(スパイク)が何本か必要です(古いドライバーが理想的ですが、テントペグでも問題ありません)。さらに、マニュアル式かあるいはオートマチックアンテナチューナー(ATU)が必要です。屋外でのアンテナの設置用に大きな樹木があれば問題ありませんが、なければ7m程度のポールが必要です。

準備

15mの並行線を準備します。2つに折り曲げて中央を見つけます。片方の端からその中間点に到達するまで並行線を割き、2本のワイヤーにします。並行線のもう片側は、そのまま並行線にしておきます。次に写真1に示すように、2本のワイヤーで並行線を割いた中央に8の字の結びを作ります。この結びによりそれ以上並行線が割けることがないようにします。並行線のまま残した反対側の端を約100mm割き、2本のワイヤーにします。それぞれのワイヤーの被覆を約20mm剥ぎ取り、銅線をあらかじめはんだメッキしておきます。これらはんだメッキしたワイヤーは、後ほどアンテナチューナーに接続します。

これで、並行線で作るセンター給電ダイポールアンテナができました。準備した16mの並行線で2本のワイヤーに割かなかった残りの7.5mがダイポールの給電線です。スピーカーケーブルなどその他撚りのない2本の並行線であるなら、給電線として特性インピーダンスが70Ω付近です。HF周波数等の低い周波数帯で使用するならあまり損失はありません。

次は、図1と写真2に示すように、ダイポールのエレメントとなる両端のワイヤーにそれぞれで「もやい結び」でループを作ります。ループはもやい結びで任意のサイズに作ることができます。ループは、エレメントの先端をどこかに固定するときに使います。ナイロン紐の一方の端をもやい結びのループに通し、巻き取って10m程度の長さとして、その先端におもりを取り付けます。紐の長さは、エレメントの先端を括り付ける樹木や支柱の高さにある程度依存します。括り付けるポイントが高ければもちろん長くする必要があります。詳しくは次の項目で説明します。


設置

<ご注意> 送電線の近くには、このアンテナを絶対に設置しないようにしてください。

また、電話線の近くに設置することも避けてください。電話線は、受信機のノイズレベルに影響を来すブロードバンド信号を伝送している場合があります。

運用する近くに樹木がある場合は、図2を参照してください。希望するビーム方向に背を向け、ナイロン製の紐に取り付けられたおもりを地上約5m~10mの樹木の枝に投げます。ナイロン紐が樹木の枝に引っかかると、紐を引っ張りダイポールエレメントの端を地面から5、6mまで引き上げます。ナイロン製の紐を木の幹や低木の枝に結び付けて解けないようにします。余っているナイロン紐は束ねてつまずきの危険がないようにしておきます。

ダイポールの中央(中央の結び目)を地面に向けて引っ張り、ダイポールの傾斜した半分に適度な張力がかかるようにします。1つのスパイク(ドライバーなどの支柱)をダイポールの中央部分の地面に押し込み、ダイポールの中央部分をそのスパイクに結びます。これは、ダイポールのエレメントを地面に電気的に接続しようとしているのではありません。ダイポールのもう一方の側のエレメントを木から遠ざけて地面に置くだけにします。必要に応じて地面に別のスパイクを置き、それにエレメントを括り付けます。

周りに樹木がなくポールを使用する場合は、図3を参照してください。ナイロン紐の一方の端をポールに結びます。2本のスパイクを約5~8m離して地面に打ち込み、ダイポールのエレメントとナイロン紐の端をこれらに結びます。ポールを伸ばし垂直に立ててから、ダイポールのエレメントとナイロンラインを使用してポールに固定します。別のスパイクを使用して、ダイポールの中心をスパイクの周りに結びポールを直立させます。

樹木を使うかポールを使うか、いずれの方法でも給電線はダイポールに対して直角に張ります。2本のはんだメッキしたワイヤーをATUの平衡出力端に接続します。(ワイヤーの接続はアンテナチューナー端子のどちらに接続しても問題ありません) ATUと無線機は、同軸ケーブルで接続します。


図1 アンテナの製作方法。寸法は記載されたほどクリチカルなものではありません。


図2 周囲の木をエレメントのサポートに使った設置例


図3 周囲に木がない場合の設置例

実運用

私はこの方法で何年も運用してきました。ここで少し私の経歴をお話しします。私は米陸軍シグナル研究所のフィールド通信開発グループでアンテナの基本設計を学びました。それ以来、数十年に渡り優れたサービスを行い、NVIS(近垂直放射空間波)HF DF調査をサポートするフィールドビーコンステーションをサポートしてきました。もちろんアマチュア無線のポータブル運用に対してもいろいろサポートしてきたことは言うまでもありません。

今回のアンテナの水平面の輻射パターンは、傾斜したエレメントに対して垂直で、地面に広がっているような「ピーナツ」形状です。図4は、NEC4というアプリを使い図2の設置における7MHz帯における輻射パターンをシミュレーションしたものです。実線はアンテナを側面から見た垂直面の輻射パターンでエレメントの端を括り付けた樹木はこの右側にあります。破線はアンテナを正面から見た垂直面の輻射パターンになります。

このアンテナを使って西の方角約300kmの局と7MHzのCWでQSOを開始しました。ダイポールは南北に張っています。相手局から送られた自局のシグナルレポートはかなり悪かったため、ビームを動かす間相手局にはしばらく待ってもらうようにしましたが、ビームを動かすと双方の信号レベルはアップしました。HFでは、この種の変動は偶然だけで発生することがよくあります。


図4 NEC4のアプリでシミュレーションした輻射パターン(7MHz帯)

結論

この記事を記憶に留めていただければ幸いです。このアンテナは持ち運びにもそれほどかさばらないし大して重くもないのでポータブル運用には最適のアンテナです。私のこのアンテナのアイデアから自由に発展させてください。エレメントの長いダイポールは、短いものより低い周波数で効率よく運用できます。このエレメントの長さのままでもアンテナチューナーに接続するといくつかのアマチュアバンドでマッチングが取れるはずです。市街地でスペースの限られたところでは、このアンテナの性能に驚かれると思います。また、このアンテナを使って屋外で運用するとノイズレベルが大幅に低下するのが分かります。

<資料参考>
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Underwriter%27s_knot
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Bowline
© Radio Society of Great Britain, 2021. Reproduced with their kind permission.

今回の記事は、RSGB(The Radio Society of Great Britain)の機関誌RadComの2021年2月号に掲載された記事をRSGBならびに筆者の許可を得て月刊FB NEWS編集部が抄訳したものです。掲載の許可ならびに資料のご提供に関し、誌面をお借りしまして感謝を申しあげます。 (月刊FB NEWS編集部)

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