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第27回 【災害備蓄にも最適】移動運用で食べるメニューを作ってみた

JP3DOI 正木潤一

ツイッターを眺めていると、山の上といった移動運用先での食事の様子をよく見かけます。コンビニのお弁当で済ませる方もいれば、コッヘルでお湯を沸かしてカップ麺を作る方、なかなか手の込んだ調理をされるかたも居て、見ているだけで楽しいですね。移動運用にはアウトドア要素もありますから、自然の中での食事を楽しめるのもアマチュア無線の醍醐味だと思います。


<移動運用先での素敵な食事の例(写真提供:JM1LTA局)>

せっかく自然の中に出かけて行くのですから、無線以外の楽しみとしてグルメ要素もあったほうがいいですね。本格的なアウトドア料理が理想的ですが、野外調理は相応の準備や片付けが必要で、運用場所によっては火を使うことが憚(はばか)られることもあります。当局の場合、昼食用におにぎりやお弁当を買っても、結局食べることなく無駄にしたことや、逆に行く途中で買いそびれたことがありました。

保存が効いて、簡単に暖かい食事を摂れる『食事セット』を用意しておけば食事には困らず、食べなかったとしても持って帰れば無駄になりません。今回は、移動運用時にそのまま持ち出せて、災害時の非常食にもなる『移動運用糧食』を作ってみました。

メニューを考える

・軍用の携帯食料『レーション』を参考にする
携行できて保存の効く食べ物といえば、軍用食『レーション』でしょう。兵士の活動に必要なエネルギーを得られる食事セット(糧食)です。レーションは『ミリ飯』と呼ばれて一般的に認知されてきていています。特に米軍のMRE(Meal, Ready-to-Eat)は一般人でも手に入りやすいことから有名です。最近では世界のレーションを紹介する動画やサイトがたくさんあります。軍隊で支給されている物ですが、なぜか日本で民間人が手に入れることができます。今回、『移動運用糧食』のメニューを決めるのに際して、各国のレーションを参考にしました。


<各国のレーション。日本(左上)、フランス(右上)、ロシア(中央)、イギリス(左下)、アメリカ(右下)。>

・レーションの内容
a.主食
主にお腹を満たしてエネルギー源となる炭水化物です。レーションにはクラッカーやビスケット、長期保存パン、トルティーヤなどが入っています。中にはレトルトのライスもあります。クラッカーに塗るピーナッツバターやクリームチーズ、ジャムなどが付属します。
なお、自衛隊のレーションにはご飯に加えてビスケットや乾パンもメニューに含まれています(自衛隊の駐屯地にて展示されています)。


<アメリカ軍のレーションに付属する“チーズ・スプレッド”。クラッカーに塗る。>


<ロシア軍のレーションの牛肉入りおかゆ“カーシャ”。付属の簡易コンロで温めると牛脂が溶け出してすごく美味しい。>

b.副食
レトルトや缶詰に入ったシチューや煮込み料理、カレーなどで、主食に合うおかずが入っています。


<アメリカ軍のチキン・シチュー(左)、イギリス軍の豆カレー(右)。>

・エナジーバー
手軽に素早くエネルギーを得るための物です。移動中に片手で持って食べられるチョコバーやキャラメルバーなどが入っています。市販品がそのまま入れられることが多いようです。


<フランス軍のレーション(3食セット)には5種類のエナジーバーが入っている。>

・スナック類(トレイルミックスや菓子類)
主食を温めている間に口にしたりするお菓子類です。トレイルミックスとは、アーモンドやピーナッツなどのナッツ類と、レーズンやドライフルーツの詰め合わせです。腹持ちの良いナッツ類とエネルギー源となる糖分を含むドライフルーツの組み合わせは、小腹が空いた時につまむのに向いています。


<アメリカ軍のプレッツェル風スナック(左)、イギリス軍のマンゴーケーキ(右)。>

・ドリンク類
粉末ジュースやインスタントコーヒーなどです。粉末ジュースは発汗で失われる電解質を摂るためのスポーツドリンクのようなものです。


<500mlの水で粉末を溶かして飲むスポーツドリンク。>


<イギリス軍のレーションの飲み物。インスタントコーヒーに加えてティーバッグの紅茶も付いてくる。スティックシュガーと粉末クリーム付き。>

・加熱キット
レーションには、主食や副食を温めて食べられるように加熱アイテムが同梱されています。温めたほうがより美味しく、栄養も吸収され易いそうです。熱源として火を使うタイプと、化学反応で熱を発生させるタイプがあります。

1つは簡易コンロと固形燃料を使うタイプです。缶詰の缶やメスティンを使ってお湯を沸かしたりレトルトパックを温めたりします。


<フランス軍のレーションに付いている簡易コンロ。金属板を曲げて組み立てて、固形燃料を載せて火をつける。>

もう1つは、水を加えると熱が発生する「加熱剤」を使うタイプです。レトルトパウチと一緒に加熱袋に入れて、蒸気で食品を温める仕組みです。直火ほどの熱量はありませんが、火を使わないので煙が出ず、安全なので使う場所を選びません。


<アメリカ軍の加熱キット。袋に水を注ぐと熱が発生し、一緒に入れた食品パックが温まる。>

・アクセサリーパック
国によっては、食べ物とは別に好みによって使う調味料などが入った小袋が標準で付いてきます。中にはティッシュ、手拭き、マッチ、塩・胡椒、チューインガム(歯磨き代わり)、コーヒーに入れる砂糖やクリームなどが入っています。


<アメリカ軍のレーションに必ず入っている”アクセサリーパック”。>

・食器類
基本的に、レーションはレトルトパックや缶詰から直接スプーンで食べることが想定されています。たいていのレーションには長いスプーンが付属しています。ただ、これは国によって異なり、例えばロシア軍のレーションにはスプーンと共にナイフも付属していますが、フランス軍のレーションにはスプーンも何も付属していません。


<自衛隊のレーションには先割れスプーンと紙皿が付いている。>(自衛隊の駐屯地にて展示されています)

『移動運用糧食』のメニュー

というわけで、レーションを参考にして『移動運用糧食』の内容を決めました。内容物は市販品に限られますが、コストは考えずにできるだけ美味しく食べられるものを選びました。また、すべてのメニューに後述の『加熱キット』と『アクセサリーパック』を付けます。メニューは大きく分けて3種類(I型~III型)あります。災害時の避難先で連日食べることになってもなるべく飽きが来ないように、メニューに加えてバリエーションも持たせています。

なお、すべてのメニューには、ビスケット、ジャム、ミックスナッツ、チョコレートバー、そして、紙カップ、先割れスプーン、ウェットティッシュ(2枚)、粉末スポーツドリンク(500ml用)を同梱します。

・「I型」 ~マカロニパスタとスープ/シチュー~
フリーズドライのマカロニパスタとレトルトのスープ/シチューです。フリーズドライのパスタに水を注ぎ、それを加熱パックで温めることで美味しく食べられます。クラッカーとの相性も抜群です。
加熱パックの発熱量の関係でスープやシチューは具の小さいものを選びました。
 バリエーション
 パスタ: ペペロンチーノ、ペスカトーレ、カルボナーラなど 
 スープ: ビーフシチュー、きのこスープ、ポタージュスープなど


<『I型』メニューのバリエーションの1つ『カルボナーラと子羊の煮込み』。>

・「II型」 ~丼物/カレーライス~
アルファ化米(白米)のパックに水を注ぎ、ヒーターで温めることで調理します。それに温めたレトルトの具材をかけて食べます(紙皿付き)。箱のスペースに余裕があるので、缶詰も同梱しました。
 バリエーション
 丼物: 中華丼、牛丼、親子丼、すき焼き丼など
 カレー: ビーフカレー、チキンカレー、キーマカレーなど

レトルト食品は内容量が少なめのものを選びます。しっかり温まる量の目安としては180g以内と思われます。アルファ化米は手軽に食べられる半面少しクセがあるので、丼もので食べるのがお勧めです。


<『II型』メニューのバリエーションの1つ。『和風出汁とキノコのポークカレー』。>

・「III型」 ~カップ麺とかやくご飯~
ミニカップ麺と、アルファ化米のかやくご飯です。冬場に向いているメニューです。カップ麺の調理に使う専用の湯煎パックがもう1枚付いてきます。
 バリエーション
 カップ麺: サッポロ一番、チキンラーメン、どん兵衛など
 かやくご飯: 炊き込みご飯、青菜ご飯、ゆかりご飯など


<『III型』メニューのバリエーションの1つ。『梅じゃこご飯とチキンラーメン』。>

・加熱キット
レーションと同じように、レトルトパックを温めたりお湯を作ったりできるキットです。水を加えると熱が発生する市販の発熱剤を使います。モーリアンヒートパックは、レトルト食品などを温められる発熱材で、自衛隊でも採用されています。


<まとめ買いしたモーリアンヒートパック(日本製)の発熱剤(左)、その使い方(右)。>

実は、純正の加熱袋は大きくて嵩張るうえ、発熱材5個に1枚しか同梱されていません(加熱袋は繰り返し使えるため)。そのため、今回のように1食分に1つの加熱キットを同梱する用途には向いていないので、発熱材だけを発注して加熱袋は市販のジッパー付きビニール袋を使うことにしました。加熱袋には、蒸気を逃がす為の穴(6mm径)を2か所開けておきます。


<耐熱温度が100℃のジッパー付きビニール袋を加熱袋に使う。立てて置けるマチ付きタイプ。>

この加熱用袋1枚と、発熱材1個、湯沸用アルミパック1枚、断熱用ボール紙1枚をセットにして糧食に同梱します。断熱用ボール紙は、発熱剤と加熱用袋の間に敷いてお互いが接しないようにするものです。水は100℃以上にはなりませんが、発熱剤自体はそれ以上の温度になり得るため、加熱用袋に直接触れると溶かしてしまう可能性があるためです。


<『加熱キット』。加熱袋(上)、湯沸パック(左)、加熱材(中央)、断熱用ボール紙(右)。>

実際にこれを使ってアルファ化米を調理し、さらにカップ麺用のお湯を作ってみました。加熱時間は20分間です。


<加熱キットを使った調理。内部が高温の蒸気で満たされている(右)、この状態で20分間待つ。>


<使用後の加熱キット。ボール紙を底に敷いたことによりビニール袋は溶けていない。>

湯沸用アルミパックは、本来はコーヒー豆などの保存に使われるものです。いっぱいにまで水を入れると150mlほど入ります。このアルミパックを加熱することで、熱いとまではいきませんが温かいお湯を作れます。後述の『アクセサリーパック』に入っているコーヒーやお茶を楽しめます。


<アルミパックで作ったお湯(左)、カップ麺に注いだところ(中)、お茶を淹れたところ(右)。>

このように、加熱キットで1食分の食事を温める必要な熱量が得られます。


<加熱キットでアルファ化米とミニカップ麺をおいしく調理することができる。>

・アクセサリーパック(標準同梱)
米軍のレーションのように、すべてのメニューに同梱するアクセサリーパックも用意しました。内容は、粉末タイプのコーヒーと緑茶、七味唐辛子×2、胡椒×2、キシリトールガム、ナプキン2枚です。インスタント食品はどうしても飽きが来るので、好みで辛味を加えて味覚に変化を付けることができます。


<アクセサリーパックの内容。>

・梱包箱
1食分のメニューがすべて収まるサイズの段ボール箱を発注しました。50枚で3000円ほどでした。できるだけコンパクトにしたいところですが、詰め合わせ方をいろいろ検討したものの、1食分にしては大きくて嵩張ってしまいました。


<上開きの箱。組み立てに接着は不要。>

せっかくなので、オリジナルのシールも発注し、箱に貼りました。


<特注のシールを貼ると良い感じ♪>

試作品の評価テスト(試食)

7月の中旬に京都の山奥に車で出かけ、バックパックにこの『移動運用糧食』を入れて気温32度の炎天下で山を半日歩いた後で試食してみました。


<試食したのはパスタとシチューの『I型』メニュー。>

手を洗えない状況を考えてウェットティッシュを2枚入れておいたのは正解でした。暑い中、長時間軽トラのハンドルを握っていた手は汗ばんでいて、荷台を上り下りするだけで手が汚れました。食べる前にキレイに手を拭けば衛生的です。食事後にも手を拭くことが出来るのでスッキリします。


<京都の山奥にある広場で実食した。>

まず、暑さでエナジーバーのチョコレートが溶けていました。食べられなくはありませんが、グチョグチョで生ぬるい食感は良くありません。調べてみたところ、たいていのチョコレート類は28度以下で保存するようにあるようです。軍用のレーションに入っているチョコレートは、溶けにくいものが使われているのかもしれません。


<暑さで溶けてしまうチョコレートの宿命。>

そして、クラッカーに付けるクリームも液状になっていました。これについては食感は気になりませんが、クラッカーの穴から滴りやすくなってしまいました。確かに「暑いところを避けて保管」と書かれています。


<暑さで滴り落ちてしまうほどクリームが液状化した。>


<食品の耐熱性も考慮しなくてはならない。>

主食と副食を温める準備です。メニューのバリエーションは『ペペロンチーノ』と『ビーフシチュー』。水を入れたフリーズドライの袋とレトルトパック、そして水をいっぱいに入れたアルミ製の湯沸パックを加熱袋に入れて発熱材で温めます。この日の外気は32度でしたが、出来るだけ熱を逃さないようにタオルを巻きました。


<加熱袋に食品を入れて水を注ぐと化学反応で蒸気が発生する。熱を逃さぬようタオルを巻く。>

今回使用した発熱剤は海外製ですが、日本製の『モーリアンヒートパック』より少し安い分、発熱量(化学反応の激しさ)が小さいように見えました。

この状態で食品が温まるまで20分間待つのですが、その間にエナジーバーをかじり、クラッカーを食べ、トレイルミックスにも手を伸ばしました。気を付けないと、メインディッシュが温まるよりも前に他の物を食べて腹が満たされてしまいます。それだけこの携行糧食の量は十分だということですが、よほど空腹でない限り主食が温まってからほかの物と一緒にバランスよく食べたほうがよいでしょう。

さて、20分が経過しました。パスタを見てみると、良い具合に柔らかく出来上がっています。本来はお湯を入れて3分で食べられる市販品ですが、このレーションでは水を入れて加熱パックで20分間置いて出来上がりました。出来合いのものなので、味も申し分ありません。少し物足りなければ、アクセサリーパックに入っている胡椒を入れて味を調整します。


<しっかりと柔らかくなったマカロニパスタ。胡椒を加えるとなかなか美味しい。>

ビーフシチューのレトルトのほうはどうでしょうか。空けてみると、湯気は立ち上がりませんがシチューの香りが漂います。口に運ぶと、決して「アツアツ」ではありませんが、温かくなっています。ただし大きめの具材はほとんど温まっていません。このレトルトビーフシチューは内容量が200gあります。どうやら、加熱パックでおいしく温められるレトルト食品の内容量は160gまでのようです。


<具の中まで温まらなかった。もっと具が小さければちゃんと温まりそう。>

さて、最後にコーヒー用のお湯は沸いたでしょうか。湯沸パックはなかなか熱くなっています。封を開けると見事に湯気が立ちのぼりました。150ml程度の水が見事にお湯になりました。アクセサリーパックに入っているスティックコーヒーを紙カップに入れ、お湯を注ぐと立派なホットコーヒーです。このスティックコーヒーは冷水でも溶けるタイプで、夏場はもちろん冷水でいただきたいところですが、冬場を想定してお湯で作ってみました。


<水を温めて淹れるホットコーヒー。寒い冬であればかなり美味しく飲めそう。>

というわけで、試作の糧食は成功したので、量産することにしました。

量産品の生産

この『移動運用糧食』ですが、合計で30セット作ることにしました。賞味期限のことがあるので、これ以上作ると使いきれないと思います。


<『アクセサリーパック』の中身は業務用を購入。>

これらをビニール袋に詰めて密封します。


<30セット分の『アクセサリーパック』。ビニール袋に入れ、熱シーラーで密封してある。>

『加熱キット』も作ります。


<量産した『加熱キット』。>

各メニューを箱に詰めていきます。メニュー(同梱食品)のパッケージによっては若干大きさや形が異なるので、適宜工夫して収めます。何度か試行錯誤してなんとか収まりました。


<メニューを箱に詰めた様子。>

コーヒーやお茶を飲むためのカップは丸いので、どうしても収まりが悪いです。もしこれを入れなければ、もっと小さな箱に収められます。しかし、「食事セット」としての自己完結性を高めるために、カップを同梱することにしました。いつでもどこでも温かいお茶やコーヒーを飲めるのは嬉しいものです。


<メニュー『I型』から『III型』までを12箱詰めたところ。これをあと18箱作る。>

さて、実際にこれを移動運用先で食べたいところでしたが、コロナ禍に加えて秋雨前線の停滞もあり、この記事の締め切りまでに移動運用に出かけることが出来ませんでした。


<LC-192(IC-705専用バッグ)に入れるとこんな感じ。IC-705のアクセサリやケーブル類などを入れるスペースを考えると、もっと小さい箱に収めたいところだ。>

最後に

今年は豪雨による浸水や土砂災害などが多く発生しました。地震や津波への備えも忘れずに必要です。こういった「食事セット」は災害時の食事としても有効です。今回作った『移動運用糧食』は、軍隊のレーションを参考にしているので、水さえあれば温かい食事を摂れる、自己完結性の高い食事セットです。

さて、今回は既製品を組み合わせるだけだったので、モノづくりの要素はありませんでした。しかし、決められた大きさの箱に入れたいものを如何に収めるかというチャレンジが楽しめました。ところで、我々が購入する無線機は、どれも梱包箱にきっちりと収められています。工場からユーザーの手元に届くまでに製品にダメージが加わらないよう、レイアウトがよく工夫されています。さらに、今では再生紙を利用したり梱包材自体を減らしたりと、環境への配慮も求められているので、梱包箱を設計するのも大変だと思います。どうしても無線機にばかり注目しがちですが、新しく買った無線機の箱を開封するワクワク感を届けてくれる梱包箱にも目を向けるキッカケとなりました。

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