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特別寄稿

第一部
バイコニカル・アンテナの概要と性能テスト

JH3OUI 中谷 充宏


バイコニカル・アンテナとは

SHF帯は、波長がたいへん短いことに加え使用する電波の性質上、ゲインのあるパラボラアンテナで運用されているシーンの写真をよく見かけます。私はSHF帯にはなじみがなく入門者です。いきなりパラボラアンテナの製作もハードルが高く、またピンポイントで交信する相手もいないことから、無指向性のバイコニカル・アンテナに焦点を当てました。

バイコニカルは英語では、Biconicalと綴ります。「2つ」という意味のbiと「円錐形」というconicalを組み合わせた単語です。その形状は、図1に示したように、それぞれの円錐形の頂点を向き合わせて、アンテナとしています。

形状の基本は、ダイポールアンテナです。バイコニカル・アンテナでは、ダイポールのエレメント部分はワイヤーのように線ではなく、図1のように面積や体積を持たせた形にしているところが特長です。こうすることで、周波数の一定範囲内でアンテナの入力インピーダンスが一定となるため、広帯域化を図ることができます。SHF帯のように帯域の広い周波数帯では有効です。


図1 厚紙を使って製作した水平偏波バイコニカル・アンテナの模型

また、アンテナの特性としては、一般的にフェージングなどに強いともいわれています。固定局どうしの通信ではなく移動中の局との通信に有効かもしれません。

製作する上での気になる接続用の同軸ケーブル

製作する上で気になったのが、同軸ケーブルのロスです。アンテナとその直下に取り付けるトランスバータとの接続には同軸ケーブルを使いますが、扱う周波数が5.7GHzであることから、たとえ50cm程度の短い同軸ケーブルであっても大きなロスを生じる可能性があります。友人からテフロン同軸ケーブルとセミリジッドケーブルのロスを調べたデータを入手したので表1に示します。SHF帯のアマチュアバンドに特化したデータですが、予想どおりどちらのケーブルも周波数が高くなるにつれてロスが大きくなっていることが分かります。


表1 テフロン同軸とセミリジッドのSHF帯におけるロス

上記以外の同軸ケーブルには、RFの測定で使う非常にロスの低い高性能なものもありますが、高価で手が出ません。これだけ周波数が高いと50cmぐらいの同軸ケーブルであっても、ロスが思う以上にあることが解ります。表1のデータからアンテナとトランスバータとを接続するケーブルのロスが思う以上に大きく、無視できないことが分かったため、ロスをできるだけ低減させることを念頭に置き、外部導体が金属管でできているセミリジッドケーブルを使うことにしましました。アンテナの製作のパートで後述しますが、アンテナエレメントと接続のセミリジッドケーブルとを一体物にして仕上げています。

バイコニカル・アンテナの外観

図2は、完成した垂直偏波のバイコニカル・アンテナです。図1で示した模型の円錐形とは少し異なりますが、基本の円錐形エレメントは同じです。アンテナは、試作ですので長期間太陽光にさらしたときの紫外線による樹脂の劣化は何ら考慮していませんが、簡易的な防水や耐風を確保するための構造は付加しました。


図2 完成したバイコニカル・アンテナ(垂直偏波)

製作したバイコニカル・アンテナの性能

入手したLiteVNAを、給電線のセミリジッドケーブルを経由して図2に示したバイコニカル・アンテナに接続しました。このアンテナを製作するにあたり、私は5.7GHzまで測定できる測定器といえば、このLiteVNAしか持っていないため、表示される数値を全面的に信頼するしかありません。製作は試行錯誤しましたが、図3、図4がその結果です。

(1) SWR特性
図3に示した表示から、周波数が5.77GHzのときのSWRは、1.459であることが読めます。表示される数値を全面的に信頼したいのですが、精度も気になりRFの回路設計用の高精度ネットワークアナライザを使った測定を第三者に依頼しました。

その結果が図4に示すグラフです。図4の右側のグラフはSWR特性です。5.7GHzのとき、SWRが1.40と表示されています。LiteVNAで測定した値が5.77GHzのとき、SWRは1.459でしたから、ほぼ同じ数値です。これでLiteVNAが表示するデータも信頼できそうです。


図3 完成したバイコニカル・アンテナに接続したLiteVNAのスクリーン

(2) リターンロス
図4の左側のグラフは、リターンロスを表しています。進行波電力に対する反射波電力の比です。周波数は大きく異なりますが、2.4GHz帯から10GHz帯まで進行波電力に対して-15dB~-16dBのほぼ一定の反射波電力となっていることが分かります。


図4 高精度のネットワークアナライザにて性能試験

(3) 垂直面指向特性
広帯域のアンテナとしてディスコーン・アンテナが知られています。ディスコーン・アンテナの場合、コーン部(円錐部)の角度を広くすると広帯域化が図れますが、その反面、垂直面指向性の打ち上げ角は、水平よりもやや下方向になります。バイコニカル・アンテナの場合は、上下が同じ円錐形のエレメントであることから、垂直面指向性はほぼ水平方向です。これをシールドルーム内で簡易的な方法で測定してみました。図5がその指向特性です。非常に荒い測定データですが、バイコニカル・アンテナから輻射された電波は、地面に対して水平方向に向いていることが分かります。


図5 簡易測定によるバイコニカル・アンテナの垂直面指向特性

(4) 電気性能のまとめ
図4のグラフおよび図5が示す内容をまとめると表2のようになります。図4に示したグラフから周波数は2.4GHzから10GHzと大きく変化しているのに対し、リターンロスもSWR特性もほとんど変化がないということです。図5に示した垂直面の指向特性に対しても同様です。

今回試作したアンテナは、これらデータから製作の目標とした5.7GHz以外に、その上下のバンドにもそのまま使えそうです。


表2 測定データのまとめ





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