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特別寄稿

第二部
バイコニカル・アンテナの製作

JH3OUI 中谷 充宏


製作に準備する材料

今回のアンテナ製作に準備した材料を一例として表3に示します。


表3 製作に必要な材料の一例

製作に使用した工具類

バイコニカル・アンテナは下の5つのパートに分けて製作しました。
(1)エレメントに使う銅板のカット
(2)カットした銅板を円錐形に仕上げる
(3)上下エレメントの合体と給電線の取り付け
(4)アンテナのマストに使う異径ジョイントと塩ビパイプの加工
(5)アンテナエレメント部の防水対策

それぞれの工程には専用の工具があれば作業がはかどります。表4に示したような簡単な工具も揃えました。


表4 アンテナの製作に必要な工具類の一例

バイコニカル・アンテナの製作

(1) エレメントに使う銅板のカット
エレメントとなる円錐部は銅板で製作します。製作には0.3mm厚の銅板を使いましたが、もう少し薄い方が加工しやすいかもしれません。参考ですが、ホームセンターで0.1mm厚の銅板も見かけました。この0.1mm厚の銅板には2種類あります。一つは銅板の表面には何の細工も施していない普通の銅板。もう一つが、銅板の表面に保護紙が貼付されたものです。

後者の銅板を使う場合は、内側はハンダ付けを行うため、保護紙の貼付されていない面とします。エレメントの本来の意味とは異なりますが、保護紙を残すと、銅板そのものの厚さに加え保護紙の厚さも加わり、若干ですがエレメントの強度アップにつながります。

垂直偏波のバイコニカル・アンテナですから上下のエレメントとなる円錐部を2個製作します。基本は2個とも同じ形状ですが、上下エレメントでセミリジッドケーブルを通すための穴の大きさが異なります。それ以外は同じです。
(注)穴はエレメントを円錐に組み立ててから空けます。

エレメントを製作する銅板の寸法は図6、図7を参照してください。図6の展開図を銅板の半径が72mmとなるように印刷時のプリンタの倍率を調整すれば、印刷したものがエレメントの型紙として利用できます。


図6 エレメントの展開図


図7 上下エレメントの製作時の詳細

(2) カットした銅板を円錐形に仕上げる
図6、図7でカットした銅板を菅笠のように円錐形に仕上げます。銅板の継ぎ目は内側でハンダ付けをするため、保護紙が貼付された銅板を使用する場合は、保護紙はエレメントの外側にします。

エレメントの製作では、円錐の頂点の加工が電気性能に大きく影響します。頂点がとがるように加工することがポイントです。円錐の形を固めると内側の継ぎ目の部分にハンダ付けをして完成させますが、ハンダを流し込み過ぎると、完成後、同軸ケーブルを通す穴を空けにくくなります。

次にセミリジッドケーブルを通す穴を空けます。穴はドリルで少し小さめに空けて、あとはヤスリ等でセミリジッドケーブルの径にピッタリ合うように調整します。穴が大きすぎるとハンダが穴の隙間から外に流れ出てきれいな仕上がりになりません(図8)。


図8 完成した円錐形のエレメント

(3) 上下エレメントの合体と給電線の取り付け
完成した上下各エレメントの頂点を向かい合わせて組み立てます(図9)。このとき両エレメントをショートさせずにいかにその間隔を詰めて組み立てられるかが、性能を左右します。今回の製作で使用したセミリジッドケーブルは、タキテック製のEXSR-141T-50-CU-CWです。外径が3.58Φ、芯線径が0.91Φのものです。長さは都合上50cmとしましたが、ロスとの兼ね合い、あるいは設置状況に応じてケーブルの長さは調整してください。

組み立てのコツとして、まず下部エレメントにセミリジッドケーブルを挿入し、セミリジッドケーブルの外部金属部と下部エレメントをエレメントの内側でしっかりハンダ付けします。上部エレメントをセミリジッドケーブルの芯線にハンダ付けする前に両エレメントの頂点と頂点の間にはコピー用紙程度の厚さの紙を挟みます。その後、上部エレメントと芯線をハンダ付けします。ハンダ付け終了後、頂点間に挟んだ紙を取り外せば、両エレメントは互いにショートせず、かつ間隔を詰めて組み立てができます。製作途中での実体験ですが、頂点間の距離は、0.5mmを超えないことがポイントの一つです。さらに、頂点間の横ズレも禁物です。

セミリジッドケーブルも3.5Φともなれば硬さがあり、ハンダ付けが終わるとアンテナと給電線は一体物であるように感じます。セミリジッドケーブルの外皮は金属管ですから細かく曲げる事はできません。設置には注意が必要です。

両エレメントの強度を確保するため、それぞれのエレメントは樹脂やその他絶縁物で予めしっかりと固定しておくことも重要です。固定には万能接着剤を用いました。


図9 上下エレメントを合体

(4) アンテナのマストに使う異径ジョイントと塩ビパイプの加工
図10右側のイラストのアンテナマストを製作します。製作には水道工事に使う塩ビパイプと異径ジョイントを使いました。


図10 上下エレメントの組み立て

(5) アンテナエレメント部の防水対策
最後に防水対策を施します。図10右側のイラストのように、アンテナ上部の天板と下部エレメントの下に底板を取り付けます。さらにアンテナの周囲をアクリル板で巻きます。接合面は接着剤で固め、防水対策を施します。

CDケースを使って防水対策をするのも一つのアイデアです。試しに1台作ってみました。CDケースは半透明の樹脂でできています。そのままであれば表面が滑らかなため塗料がのりません。サンドペーパー等で表面をざらざらにすると図11のように塗装が可能です。手元にある材料等でアイデアを活かして試してみてください。


図11 CDケースを使った防水対策の一例

今回はバイコニカル・アンテナの製作でしたが、また別のSHF帯アンテナの製作にもチャレンジしたいと思います。





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