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特集4

IC-905を使った5600MHz、10GHzの通信実験報告(続)

月刊FBニュース編集部


(左)大阪側から生駒山地を望む  (右)奈良側から生駒山地を望む

2022年11月17日、アイコム株式会社は今春発売予定のIC-905を使い、大阪-奈良間で5600MHz帯および10GHz帯での通信実験を行い成功裏に終わったことはすでに本誌2022年12月号のニュースで報告した。

通信実験の概要は、そのニュース記事にも記載されているが、実験は大阪市平野区にあるアイコム本社の6階建ての屋上と奈良県にある同社ならやま研究所、またその付近の京都府木津川市とを結ぶ2点間約26kmで行われた。一般的にUHF以上の高い周波数では電波の持つ直進性から見通し通信が主流となる。今回の通信実験では2点間の中間には標高約500mのなだらかな山が連なり見通しが遮られている。多くの先人たちの実験結果からみると、これくらいの距離と障害物であれば中間に連なる山々が存在しても山岳回折による交信が可能と予想していたが、実際に通信ができたことは、今後の更なる実験の弾みにもなったようである。

さて、実験を行った2点間のロケーションを再度説明しておきたい。実験の起点となる大阪側はアイコム本社の屋上(標高7.6m 建物の高さ約30m)とし、奈良側はルーバー局(移動局)とした。当初はルーバー局の候補は4地点を考えていたそうだが最終的には下の地図で示す2地点となった。


通信実験を行った2点間のロケーション

地図画像: 地図データ(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/)をもとに月刊FB NEWS編集部作成

また、2点間の断面を国土地理院の地図データで見ると下のような断面図となる。中間にそびえる生駒山地はヒマラヤのような地形にも見えるが、これは左右の距離を大きく縮小しているからである。

2点間の地形断面図
地図データ(国土地理院)https://www.gsi.go.jpをもとに月刊FB NEWS編集部作成

アイコム本社から生駒山地の頂上を見る仰角は概ね下の計算で表すように2.1°となる。同様に奈良県側から見た仰角は、1.1°とほぼ水平である。


仰角の計算

今回、両局が使用した5.6GHz帯のパラボラアンテナの仕様を下の表に記した。これから見るとアンテナの半値幅は、約6度との記載がある。計算から山を見上げる角度が2度と極端に低いとしても半値幅が6度であることを考えると微妙な仰角の調整は必要かもしれない。


2局の間に山の障害物が存在しても通信ができたことは、山頂における電波の回折によるものである。回折現象を英語ではKnife-edge effectと表現することから、北アルプスや南アルプスのような山頂が岩肌で尖ったところに電波が当たって発生するものと思い込んでいたが、生駒山地のようななだらかな山頂でもこの現象が発生することを初めて知った。山岳回折のイメージをイラストにしたものを下に示す。


今回の実験における山岳回折のイメージ図

<参考にした資料・情報>
国土地理院(電子国土Web) https://www.gsi.go.jp/

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