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今度は海外レピータも対応 ~IC-705のDVレピータモニター機能解説 Part2~

JK3AZL 高岡奈瑞

dmonitorがなくても遠くのレピータがモニターできる「DVレピータモニター機能」の人気が高まっていますが、IC-705 Version1.32以後のファームでは海外レピータのモニターまでもが可能になりました。今回の記事では、国内レピータと海外レピータとの違いを含め、実際に海外レピータをモニターする方法について解説します。

なおIC-705のDVレピータモニター機能とはインターネットを介してエリアCQ先のレピータをモニターする機能ですが、DVレピータモニター機能の基本とIC-705のファームアップやWLAN接続方法などについては、以前の記事を参照して下さい。


ファームアップで海外レピータもモニター可能になった、DVレピータモニター機能。

《目次》
・国内と海外のD-STARネットワークの違い
・国内と海外のDVレピータモニターの違い
・実際のモニター方法
・海外のレピータ接続先IPアドレス情報はどこで取得するか?
・便利な裏技

国内と海外のD-STARネットワークの違い

D-STARシステムはJARL(日本アマチュア無線連盟)によって世界規格として制定されましたが、システム誕生から20年近くが経過し、国内外でさまざまな進化を続けた結果、日本のD-STARレピータから交信できない海外レピータも増えているのが現状です。また海外では複数のレピータやノードをReflectorで接続するケースも多く、Reflector接続されているレピータ間は「山かけ」や「ゲート越え」を意識しないで通信するため、国内のように[RX-CS]キーを押す習慣がないと言われています。そのため「日本から海外にCQを出したが応答してもらえない(=RX-CSされない)」といった話もよく聞きます。


JARL D-STAR委員会JE3HCZ 藤堂氏の資料より。

国内と海外のDVレピータモニターの違い

国内のD-STARレピータは、JARL D-STAR委員会が開発したD-STARレピータプログラムの拡張プログラムであるxchageやmulti_forwardによって、インターネット経由でD-STAR網への接続が可能になりました。これによって、JARLが開発したdmonitor、自作アプリなどからインターネット経由でD-STARレピータに接続できるようになりました。さらに2022年、JARLに申請して許可を得ることで、multi_forward及びhole_punchdサーバへの接続が可能となり、国内のD-STARレピータのモニターが可能になりました。

一方海外の多くのD-STARレピータは、AA4RC(Robin Cutshaw氏)が作成したDPlus と呼ばれるソフトウェアによってリンクしています。そのため国内と同じ方法では海外レピータへの接続はできません。しかしインターネット経由の接続にDPlus方式も追加されたことで、海外のD-STARレピータのモニターも可能になりました。

◎国内レピータのモニター
各レピータに接続するには、接続するためのIPアドレス情報が必要です。国内の場合は、IC-705をWLAN接続することで、サーバから各レピータの接続先情報(コールサイン+IPアドレス)を自動取得します。[TO]に指定したレピータが接続可能な場合は、レピータ名の横に[MONI]アイコンが表示されます。


国内レピータの接続先情報はサーバから自動取得している。

◎海外レピータのモニター
海外のレピータは国内と異なり、サーバから「接続先IPアドレスリスト」を自動取得することができません。しかしIC-705のVer.1.32以後のファームでは、「接続先IPアドレスリスト」をCSV型式のファイルとして作成しmicroSDカードの所定のフォルダに入れておくことで、海外レピータもモニターできるよう進化しました。


海外レピータの接続先情報はSDカード内にCSV型式で保存しておく。

CSV型式の接続先IPアドレスリストは「Call sign」と「IP/Domain」の2項目で構成され、Call signはレピータの識別符号を含めない最大7文字の文字列が、IP/Domainは最大64文字までが有効となっています。

実際のモニター方法

◎国内のD-STARレピータ
IC-705をWi-Fi接続+DR(またはターミナルモード)状態
→サーバから「接続先IPアドレスリスト」を自動取得
→接続可能なレピータには[MONI]アイコンを表示
→マルチファンクション操作で[RPT MONI]を「OFF」から「ON」
→レピータモニター開始


[TO]側の接続先の国内レピータをモニターしている様子。

なお2023年1月現在、下記サイトの「multi_forward & hole_punchd 稼働状態」で、国内でモニターできるDVレピータや接続中の局が確認できます。
http://log.d-star.info/usr/usr_menu.php

◎海外のD-STARレピータ
・接続先IPアドレスリストを作成 (またはWEBからサンプルファイル取得)
 →microSDカードの所定のフォルダ(RptMoni)に保存
 →microSDカードをIC-705に挿入しておく
 →MENUの[DVレピータモニター設定]の[接続先IPアドレスリスト(海外)]でファイルを指定
・IC-705をWi-Fi接続
・DR(またはターミナルモード)状態で[TO]に海外レピータを選択
 →接続先IPアドレスリスト(海外)に接続情報が含まれる場合[MONI]アイコン表示
 →マルチファンクション操作で[RPT MONI]を「OFF」から「ON」
 →レピータモニター開始


接続先IPアドレスリストを設定した様子。


海外レピータをモニターしている様子。


海外レピータをモニターした時の受信履歴。

海外のレピータ接続先IPアドレス情報はどこで取得するのか?

アイコムのWEBサイトでIC-705のレピータリストをダウンロードすると、レピータリストやメモリファイルの他、海外レピータ用接続先リストのサンプルデータも含まれているため、慣れないうちはこれを利用するのも良いでしょう。ただし固定ではないIPアドレスは頻繁に変わるため、接続したいレピータのIPアドレスは最新に変更しておく必要があります。

海外レピータの接続先情報は、レピータの管理団体からIPアドレスを開示してもらう他、DPlusを利用しているPi-STARやDoozyなどのツールやサイトから入手することも可能です。Doozyの場合、更新処理を行うと、ドキュメントフォルダのDoozyフォルダ内にある各hostsファイルが更新されます。


Doozyの各hostsファイルを更新できる。

また2023年1月現在、PI-STARの下記URLから接続情報を入手することが可能です。
http://www.pistar.uk/downloads/USTrust_Hosts.txt

便利な裏技

◎Reflectorのモニター
海外レピータのモニターを「DPlus方式に対応させて実現」しているということは、DPlusやDExtra、XLXのReflectorもモニターだけならできそうです。実際に「接続先IPアドレスリスト」にReflectorの接続先も入れておき、レピータリストにReflectorを追加しDR設定したところ、問題なくモニターできました。


Reflectorを指定してモニターしている様子。

◎microSDカード延長アダプタ
海外レピータをモニターする場合、接続先IPアドレスリストを最新状態にするため頻繁にmicroSDカードの付け外しをしますが、IC-705のSDカードスロットがやや奥まった位置にあるため、カードの出し入れが面倒に感じます。そんな時はmicroSDカードの延長アダプタを利用すると便利です。延長アダプタは1,000円程度で購入できるため、ひとつ持っておくと便利かもしれません。


左図はmicroSDカードの延長アダプタ。右図はIC-705に取り付けた様子。

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