新・エレクトロニクス工作室
2024年10月15日掲載
第10回にLA1600を使ったIF部のテストボードを作製しました。それを使ってIF部の実験を行い、第20回の50MHz AMトランシーバに繋げました。このトランシーバは上手く動作したのですが、少々気になっていたのがこのIF部です。IF部に使っているLA1600では、内部で一度455kHzに変換する事になります。特にダブルスーパーが必要となる受信部でもないので、何とかシングルスーパーで済ませたいと考えていました。そのためシングルスーパー用のIF部を試したかったのですが、ようやく実験ができました。
最初に考えたのが3端子のラジオ用のICでした。これには各種あるのですが、代表的なのがLA1050でしょう。他のICも、ほぼ同様と言われています。入力に2~3MHzのセラミック発振子をラダー型フィルタにしようと試しました。しかし実験してみると、どうも中波までのICのようです。2MHzになると感度が下がってしまいます。3MHzになると更に下がり、とても使えそうにありません。IFの周波数があまり低いとイメージ妨害が気になりますので、もっと高くしたいのです。せめて2~3MHzと思ったのですが・・・。455kHzに一気に下げる方法もあるのですが、あまり気が進みませんでした。
その頃にサイテックの内田さんからメールがあり、LA1201の話題が出てきました。元は初歩のラジオにあったアイテック電子の千葉さんの記事です。このICは455kHzのAMと10.7MHzのFMをターゲットにしています。このICを上手く使う事で、10MHz付近のIFをそのままAM検波する事ができます。これは思っていた機能にピッタリです。入手した記憶は全く無かったのですが、探してみると写真1のように何個か出て来ました。一体どれほど部品を貯め込んでいるのかと・・・。
写真1 見つかったLA1201
そこで、まずこのICを使って写真2のようなAM検波用IF部のテストボードを作ってみました。少々IC名が消えかけているのですが、間違いなくLA1201です。このICはネットで探すと今でも入手できそうです。古いICなのですが、このように試しました。入手が容易な新しいデバイスを使う事も大切なのですが、手持ちにあるものを使う事も大切です。このバランスは難しい問題です。
写真2 作製したAM検波用IF部のテストボード
初歩のラジオ1981年1月号にある、アイテック電子の千葉さんの回路が元にあります。IC内部にある3段のアンプを外部の配線で接続すると、図1のような回路となります。入出力はジャンピングワイヤーを使って、動作の実験ができれば良いのです。使い方としては、第8回のAF部&電源部テストボード、第11回のSi5351Aを使ったVFO実験ボード2、第12回のRF部テストボードと共に使う事を前提にしました。もちろん入力には10.7MHzなどのフィルタを入れるのが一般的ですが、外付けになります。この場合はAM用のフィルタになりますので、6~10kHz程度でしょう。
回路としてIFの周波数は決めていません。図1の右側にあるコイルを交換する事でIF周波数を変えてテストする事ができます。一般的には10.7MHzあたりのコイルを使う事になるとは思います。低い周波数としては455kHzも使えます。
最初に図2のような実装図を作製しました。ハンダ面が図3になります。このハンダ面は部品側(上側)から見た透視図になります。基板には秋月電子のD基板を使用しました。一般的なユニバーサル基板ではなく、部品面にシールドメッシュが付いたものです。アースは部品面のシールドメッシュにハンダ付けします。図2の緑点のところです。
図4は図3を左右反転させたもので、ハンダ面から見た図になります。ハンダ付けの最中や確認用には、この方が見やすいと思います。但し、文字も反転していますので、見難い部分があります。
図4 実装図のハンダ面(ハンダ面から見た図)
この先にある写真4との比較用
これらの図面を元にハンダ付けしたところが写真3になります。右上にあるように、コイルとコンデンサはソケットで受けるようになっています。そのためにソケットを使っていますが、10MHz付近と決めてしまうのであればハンダ付けする方が良いのでしょう。丸ピン用のICソケット「丸ピンICソケット(1P)」を秋月電子で購入して使っています。
写真3 ハンダ付けをした様子
このハンダ面が写真4になります。この写真4は図4と一致します。
写真4 そのハンダ面
動作チェックを行い、異常が無い事を確認します。同じサイズのD基板を写真5のようにネジ止めしました。単なる台ですが、これだけでツールとして使いやすくなります。良く見えませんが、ゴム足も付けています。写真5をよく見ると解りますが、同調用コンデンサを付けていません。これはコイルがコンデンサ内蔵タイプのものだったためです。内蔵していれば、もちろん不要です。
写真5 同じサイズのD基板を下側にネジ止め
写真6のように接続して動作確認をしました。右上の部分が、このLA1201テストボードになります。少々見難いのですが、入力には10.7MHzのAM用フィルタを入れています。これで50MHzのAM受信機になります。使ってみると、結構良い感じです。AMの受信機としてLA1600を使った時よりもクセの少ない印象で、充分な感度がありそうです。私としては50MHzのAM受信機ですので、わざわざトリプルスーパーにはしたくなかった理由がここにあります。
写真6 50MHz AM受信機として動作確認
実際に、どの程度の周波数で使えるのかを基板単体で測ってみました。あまり定量的には測れなかったのですが、455kHzは充分に使えました。10.7MHzも充分な感度でした。21MHzにすると感度が下がるようです。50MHzにしてみるとガクンと感度が低下し、全く使えそうもない印象です。コイルのQとか回路のQもありますので、何とも言えない部分はありますが、10.7MHzというのは既に限界に近いのかもしれません。
これは後から気が付いたのですが、LA1600を使っても周波数変換をしない使い方ができるのではと気が付きました。ネットで調べるとこのような実験をされた方も居られるようです。これもテーマとしては面白そうです。
これでシングルスーパーの受信機の目途が付きました。次回は、このテストボードを使った実験からの新作トランシーバを予定しています。
参考文献: 初歩のラジオ1981年1月号
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