新製品インプレッション
144MHz 高利得7/8λモービルアンテナ
EL2ER (第一電波工業株式会社)
2024年11月1日掲載
先月発売された144MHz帯用アンテナEL2ER(以下本製品)を入手したので、早速使ってみました。最初に、以下の記事は筆者の場合の事例であり、再現性は担保しかねますので、ご了承下さい。
諸元は以下の通りです。
・全長 : 約1.8m
・重量 : 470g
・周波数 : 144MHz帯
・利得 : 3.6dBi(理論値)
・動作形式: 7/8λ C-Load
・耐入力 : 150W(FM)
本製品は昭和50年代に発売されていたDP-EL2の復刻版といえる物ですが、リニューアルにあたり、基部は他の現行モデル同様のデザインに変更されています。併せて中の給電部も改良されています。
本製品は全長1.8mと長いので、写真1のように2分割された状態で出荷されています。
写真1. 本製品を袋から出した状態
分割されたエレメントはスパイラルチューブ2本で束ねられています。粘着テープ等と違って再利用が可能です。テープの糊が残ったのを除去する手間もありません。
組立は、上部エレメントの尖っていない側を、中間部の位相キャパシタに目一杯差し込んで、イモネジで締めるだけです。イモネジを締める工具(L型六角レンチ)は付属しています。
写真2. 組立用の付属工具
工場からの輸送時の振動などでイモネジが外れて梱包袋の中で転がっている可能性もあるため、そういった場合は、開梱のときイモネジを紛失しないよう注意が必要です。
他のアンテナとの比較のため、本製品を一旦車載基台から外したところ、位相キャパシタがすっぽり抜けてしまいました。走行中の振動で下部エレメント側のイモネジが緩んだようです。よって、組立時に各部のイモネジを増し締めすることをお勧めします。
写真3. 抜けてしまった位相キャパシタと上部エレメント
写真4. 自動車に取付けた本製品
本製品はモービルホイップです。自動車に取付けるのが本来の使い方ですが、実際に取付けて走行する場合、堅固な場所に取り付けた大型の基台が必要です。また、アンテナのトップは法令の高さ制限(登録車で3.8m)を超えないよう注意が必要です。
今回は第一電波工業の基台K416を日産ラティオのトランクに取付けました。HFのアンテナが載る基台であれば問題ありません。写真4の状態で公道を数十km走行しましたが、アンテナのネジを締め直して以後は、基台や車体を含めて特に不具合は発生していません。
写真5. 今回使用したアンテナ基台
「回転ホイップ対応」とあるので、本製品を引っ張ると簡単に倒せます。高さ制限のある場所への進入に便利でしょう。本製品を倒して走行する場合はエレメントを固定して下さい。
写真6. 本製品を倒した状態
本製品はラジアルが必要なので、何等かの方法でラジアルを用意するか、車体等に接地します。
基台のイモネジを車体にめり込ませて接地するのが一般的ですが、めり込んだ部分の塗装が剥げることで車体が錆びてしまうので、実行を躊躇される方は多いと思います。筆者の場合、写真7のようにトランクの内側に2m程度の編組線を這わせてアルミテープで固定し、基台に接続する方法でラジアルとしました。基台と車体は直流的に導通していませんがSWR≒1まで下がります。
写真7. 今回使用したラジアル
本製品はラジアルが無くてもSWRが下がると聞き、試してみたところ、ラジアルが無い場合や、ラジアル無しでマグネット基台に付けた場合でもSWR≦1.3でした。
筆者のQTHは山間部で、自宅周辺で144MHz帯はあまり聞こえないので、近所の高所まで移動して運用を行いました。運用時は写真4の状態で、写真7のラジアルを接続しています。
無線機を接続して受信してみると、第一電波工業AZ807M(144MHz帯は半波長ノンラジアル動作)と比較して、おおよそS2の違いがありました。交信相手の方にお願いして、アンテナの違いによるSメーターの振れを尋ねた場合も同様でした。
S2の違いがあれば、スケルチがかろうじて開く程度の弱い信号が、内容をコピーできる強度になると思います。
令和の今日(こんにち)モービルアンテナとして使うには様々な制約を受けがちな本製品ですが、環境が許せばその高い性能を享受できるアンテナです。移動先で据え付けて運用する場合にも便利に使えるでしょう。
新製品インプレッション バックナンバー
アマチュア無線関連機関/団体
各総合通信局/総合通信事務所
アマチュア無線機器メーカー(JAIA会員)
©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.