新製品インプレッション
CMF250 (第一電波工業株式会社)
~コモンモードフィルターを使ってみた~
2025年6月16日掲載
ダイヤモンドアンテナでおなじみの第一電波工業株式会社から、コモンモードフィルターCMF250が発売となりました。
CMF250の外観(第一電波工業(株)Webサイトより)
CMF250の特性図と仕様(第一電波工業(株)CMF250取扱説明書より)
今までハイパワー局用のCMF2000やCMF5000が販売されていましたが、そこまでのハイパワー仕様を要求する方は少数派です。それにお値段も・・・ hi 今回は、私流というかアパマンハムならではの使い方を提案していきたいと思います。まずはちょっとだけお勉強を・・・。
アマチュア無線におけるコモンモードノイズは、無線通信の品質を大きく左右する要因の一つであり、その対策としてコモンモードフィルター(コモンモードチョークコイル)は非常に重要な役割を果たします。
アマチュア無線において、コモンモードノイズは主に以下のメカニズムで発生し、様々な影響を及ぼします。
(1)発生原理
・アンテナの不平衡給電:
アンテナが完全な平衡状態にない場合(例: 不平衡型アンテナへの同軸ケーブル接続)、同軸ケーブルの外部導体(シールド)にも高周波電流が流れ出します。この電流がコモンモード電流です。
・アンバランスな伝送路:
同軸ケーブルの芯線と外部導体(シールド)の間は、本来信号電流(ノーマルモード電流)が逆相で流れる設計になっています。しかし、アンテナ給電点の不平衡や、ケーブルの不均一性、周囲の導体からの誘導などにより、シールドに同相の高周波電流が誘起されることがあります。
・高周波の回り込み:
無線機からの送信高周波電力が、アンテナだけでなく、同軸ケーブルの外部、シャック内の電源ライン、アース線、マイクコード、PCのケーブルなどに回り込み、これらが高周波的に「アンテナ」として動作してコモンモード電流を発生させます。
・接地環境:
アースの取り方が不十分であったり、高周波的に理想的なアースが取れていなかったりすると、コモンモード電流が大地へ流れ込みにくくなり、シャック内での高周波的な電位の変動を引き起こします。
(2)アマチュア無線における影響:
・TVI/BCI(テレビ・ラジオへの妨害):
コモンモード電流が家庭内の電源線やアンテナ線に回り込むと、テレビやラジオなどにノイズ(インターフェア)が発生し、映像の乱れや音声ノイズの原因となります。コモンモード電流は減衰することなく遠方まで伝播するため、広範囲に障害が起きることがあります。
・いわゆる回り込み:
無線機自身にコモンモード電流が回り込むことで、送信時に受信回路にノイズが入り込み、受信感度の低下や、特にデジタルモード(FT8、RTTYなど)でのデコード率の悪化を引き起こします。
・受信ノイズフロアの上昇:
受信時に外部からのコモンモードノイズが無線機に侵入すると、受信ノイズフロアが上昇し、微弱な信号がノイズに埋もれて聞こえなくなります。特に都市部での「都市型ノイズ」対策として重要です。
・SWRの悪化:
アンテナ給電点や同軸ケーブルにコモンモード電流が流れると、アンテナシステムの整合が乱れ、SWR(定在波比)が悪化することがあります。これにより、アンテナから送出されるエネルギーが低下したり、SWR悪化による無線機の保護回路が動作したりする可能性があります。
・人体への高周波被曝:
コモンモード電流が無線機の筐体や周辺の金属物に流れることで、高周波電力が放射され、人体に不要な高周波被曝をもたらす可能性があります。
・周辺機器への影響:
PC、周辺機器、オーディオ機器など、シャック内の他の電子機器にコモンモード電流が誘導され、誤動作やノイズを発生させることがあります。照明器具のチラつきなども、コモンモード電流の影響であることが考えられます。
コモンモードノイズとその伝わり方(第一電波工業(株)CMF250取扱説明書より)
(3)アマチュア無線向けコモンモードフィルターの原理と効果
アマチュア無線で用いられるコモンモードフィルターは、基本的に汎用のコモンモードフィルターと同じ動作原理ですが、扱う周波数帯や電力、環境に合わせて設計・使用されます。
●原理(再確認とアマチュア無線への特化)
・磁性体コアの利用:
フェライトなどの磁性体コア(トロイダルコアが一般的)に、同軸ケーブル(芯線と外部導体)や、電源ライン(プラスとマイナス)、アース線などを通すか、巻き付けます。
・同相電流への高インピーダンス:
コモンモード電流は、ケーブルの芯線と外部導体(あるいは2本の線)に同相で流れます。この同相電流がコアを貫通すると、それぞれの電流によって発生する磁束がコア内で強め合い、大きなインダクタンス(交流電流の流れにくさ)を生み出します。このインダクタンスにより、高周波のコモンモード電流は強く抑制されます。
・逆相電流への低インピーダンス:
信号電流(ノーマルモード電流)は、芯線と外部導体(あるいは2本の線)に逆相で流れます。この逆相電流がコアを貫通すると、それぞれの電流によって発生する磁束がコア内で互いに打ち消し合い、インダクタンスはほとんど発生しません。そのため、信号電流はほとんど減衰せずに通過します。
アマチュア無線においては、送信出力が大きいため、コアの飽和を防ぐことや、広帯域での効果を考慮した設計が重要になります。
●効果
アマチュア無線に特化したコモンモードフィルターの効果は以下の通りです。
なぜコモンモードノイズが抑制できるのか? (第一電波工業(株)CMF250取扱説明書より)
(4)導入のポイント
・設置場所:
アンテナの給電点直下、同軸ケーブルが無線機に入る直前、電源ラインの無線機側、アース線、PCなどの周辺機器の接続ケーブルなど、ノイズの発生源や侵入経路になりやすい箇所に複数設置することが有効です。
・適切なコア材の選択:
使用する周波数帯に最も効果的なフェライトコアの材質(例: #43材、#31材など)を選定することが重要です。
・耐電力:
送信出力に応じて、コアの飽和を防ぐため、十分な耐電力を持つコモンモードフィルターを選びます。ハイパワー運用では、大型のコアを複数使用したり、複数のコモンモードチョークコイルを直列に接続したりすることもあります。
・自作も可能:
トロイダルコアと細い同軸ケーブルを使って自作することもできます。巻き方や巻数を工夫することで、特定の周波数帯に特化した特性を持たせることも可能です。
コモンモードフィルターは、アマチュア無線において安定した通信環境を構築し、電波障害を防止するために欠かせないアイテムです。ノイズに悩まされている場合は、積極的に導入を検討する価値があります。
CMF250の使用法(第一電波工業(株)CMF250取扱説明書より)
堅苦しいお話はこの辺にして、今度は具体的にどう使うか? を考えてみたいと思います。
私の使い方(特にHF帯)ですが、次のようにしています。
・無線機のアンテナ端子付近、ならびにワイヤー系ATUの入力端子付近に装着
・ATUの制御ケーブルのATU付近と電源付近にもコモンモードフィルターを装着
今回ご紹介するCMF250は前者に使用するのが適しています。私のところは100W固定局ですので、CMF250を2個、使用する形になります。屋外側は、防水効果を狙って、ATUと合わせてプラスチックのボックスに入れて使用しました。
収納ボックスを流用しました(アイリスオーヤマ(株)Webサイトより)
ATU設置当初は、コモンモードフィルターを入れていませんでしたが、インターフェアや回り込みはありませんでした。しかし、コモンモードフィルターを入れたところ、ノイズレベルが少し下がりました。これだけでも導入したメリットがありましたね。さらにインターフェアや回り込みについても、さらに安心することができ、精神衛生上、よかったと思ってます(これが一番大きいかもhi)。
ストレスがないのは精神衛生上グッドです
コモンモードフィルターは、「転ばぬ先の杖」的なイメージが強いです。しかし、何か問題を起こせば以後の運用ができなくなる可能性のあるアパマンハムにとっては、とても有益だと思います。今後はモービル運用でも使用してみたいと思います。(以前、CWを送信すると、符号に合わせてワイパーが誤動作した経験あり。まるでマンガの世界hi)
転ばぬ先の杖hi
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