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HW Lab

第7回 ハンドマイクがスタンドマイクに変身

JH3HWL 箭野佳照

2025年6月16日掲載


ハンドマイクでスタンドマイクを作ろう

固定機にハンドマイクを接続して運用しています。ローカル局とのラグチューには送信のたびにマイクを握るのも面倒で、スタンドマイクが欲しいところです。そこで、ハンドマイクを改造せず、外付けにインターフェースユニットを接続してスタンドマイクに変身させました。PTTロックスイッチ、TOT(Timeout Timer)、それに周波数のアップダウンを行う機能も付けました。

仕様を決める

スタンドマイクに使用するハンドマイクは、取り外すとこれまで通りのハンドマイクとして使えるようにします。元のハンドマイクには何ら変更を加えないことも仕様とします。今回ご紹介するのは、アイコムの固定機用の回路です。

(1) 外観
ハンドマイクをスタンドマイクに変身させますので、ハンドマイクを取り付けるスタンドが必要です。これは、携帯電話用のスタンドを利用します。ネット通販で「携帯用ホルダー」あるいは「スマホスタンド」といった用語で検索するといろいろな種類のものがヒットします。ご自分のシャックに合ったものを選んでください。

インターフェースの回路を組み込むケースは、スマホスタンドのベース部分に取付けますのでデザイン的にマッチするようなものがよいと思います。インターフェースユニットには、マイクコネクターやPTTスイッチ等の部品も取付けますので、使用する部品の大きさも考えたケースが必要です。この製作では図1に示すようなスマホスタンドとケースを選びました。


図1. (左)スタンドの高さは22cm、ベースは金属製。(右)ケースの大きさは100×65×33mm(樹脂製)

(2) 機能
スタンドマイクに持たせたい機能を下に列記します。これらの機能を電子回路で実現させます。

<機能一覧>
・使っているハンドマイクには改造を加えない
・ハンドマイクと無線機の間にインターフェースユニットを挿入するスタイルにする
・インターフェースユニットの中に電子回路を組み込む
・PTTは、一度押すとPTTロックとなり、3分間送信状態を保持する
・PTTロックを解除するスイッチを取付ける
・送信状態を知らせるランプを取り付ける
・PTTロックで連続送信を防ぐ3分タイマーを取り付ける(TOT機能)
・3分タイマーが動作することを知らせるアラートLEDを取り付ける
・簡単に取り外しができ、ハンドマイクとしてもすぐに使用できるようにする

(3) 電気仕様
・製作は、パーツショップで簡単に入手できる汎用部品とする
・インターフェースユニットに供給する電源は無線機のマイクコネクターから取り出す
・マイクコネクターやマイクプラグの配線はアイコム製マイクに合わせる
・マイクの周波数特性等には影響を与えないようにする
・アイコム以外の無線機にも使用できる回路とする(マイクのピン配置は変更が必要)

インターフェースの原理

アイコム製の無線機に取り付けられているマイクコネクターの入出力を図2に示します。今回の製作に必要なピンは①、⑦に接続されているマイクラインのほかに、図に示す②、③、⑤、⑥が必要になります。

特に⑤番ピンに接続されているPTTスイッチはハンドマイクの内部にメカニカルスイッチが組み込まれており、今回は半導体でオンオフするように電子回路を組みます。マイクコネクターの①番ピンから⑧番ピンの各ピンの仕様は製品の取扱説明書に記載されていますので必要に応じてご覧ください。


図2. インターフェースの原理図

インターフェースの回路図

インターフェースユニットに組み込む全回路図を図3に示します。


図3. 全回路図

回路の説明


(1) IC1で構成されるタイマー回路(PTTロックスイッチ)
IC1は、NE555で構成したタイマー回路です。SW1を押すと3番ピン(OUT)がHになります。HになることでQ1がオンとなりコレクターがLとなります。このLレベルがマイクプラグを通して無線機の5番ピン(⑤)に入力され無線機は送信状態となります。

このIC1で構成されるタイマーは、通称ワンショットマルチバイブレータ―と呼ばれます。SW1(PTTロックスイッチ)を押すと3番ピン(OUT)がHになります。H→Lに変わる時間をC1、R2、VR1で構成されるCRの時定数で可変できます。この回路では、SW1を押してから約3分後に強制的に送信から受信に戻るように下に示す定数で設定しています。C1、R2、VR1の定数からタイマーの時間を計算すると次のようになります。


(2) IC2で構成されるタイマー回路(3分アラート)
IC2で構成される回路も前述同様ワンショットマルチバイブレータ―です。この回路では、約2分45秒でLEDを点滅させ、まもなく3分が経過することを事前に知らせます。PTTロックスイッチを押し、ローカル局とラグチューに熱中するあまり、3分で送信から受信に強制的に切り替わり突然送信が解除され、受信に切り替わることを防ぐための機能です。LEDが点滅してもさらに送信状態を維持させたい場合は、PTTロックスイッチを再度押すことで、さらに3分間の延長が可能です。

この回路の時定数はIC1で構成されるタイマーのR2を470kΩとすることで少し短い時間としています。IC2のタイマーが動作し、IC2の3番ピン(OUT)がH→Lになると、PチャネルMOSFETがオンとなり、ドレインに8Vの電圧を生じます。その電圧で、IC3a、IC3bで構成されるマルチバイブレータ―が動作し、D2(アラートのLED)が点滅する仕組みです。点滅のスピードは、VR3で調整可能です。なおMOSFETのスイッチングは、本ウェブマガジン2021年7月号のFBのトレビアで詳しく説明されています。

製作

NE555のタイマー回路は図4に示す専用の基板を使いました。


図4. NE555用タイマー用基板(ワンショットマルチバイブレータ―用の部品を組み込んだ様子)

ケースはタカチの100×65×33mm(樹脂製)を使いました。ケースには8ピンマイクコネクターやPTTスイッチを取付ける穴、また基板を取付ける穴を開けます。(図5)


図5. ケースに必要な穴を開ける

図6はケースに完成した基板を組み込んだインターフェースユニットの外観と内部写真です。NE555用の基板はメイン基板からスペーサーで浮かし、その浮かしたスペースにQ1~Q4の半導体を取付けています。


図6. 完成したインターフェースユニット


図7. 完成したスタンドマイクの外観

機能の説明


図8. 機能の説明

調整

調整個所はVR1、VR2、VR3の三カ所あります。各調整個所の部品は図3に示した回路図を参照してください。


図9. 調整個所の説明

動作の確認

インターフェースユニットをトランシーバーに接続します。PTTロックスイッチを押します。トランシーバーが送信状態に保持されることを確認してください。

その送信状態の保持が続き、2分45秒ぐらいになるとアラートLEDが点滅することを確認してください。この時間は図3に示した回路図のVR6で調整します。

アラートLEDが点滅し、再度PTTロックスイッチを押します。さらに3分間送信状態が保持されることを確認します。

途中で送信状態を解除したい場合はPTTリリーススイッチを押します。送信状態を示すLEDが消灯し、無線機も送信状態から受信状態に戻ることを確認します。

PTTロックスイッチを押すと送信状態が3分間保持されますが、その時間は図3の回路図で示すVR1で調整します。

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