HW Lab
2026年6月1日掲載

ラジオや懐中電灯に使う乾電池は、筆者の場合、多くはいわゆる100均と称するお店で購入しています。近くにそのショップがあることも一つの理由ですが、大きくはやっぱり値段でしょう。数年前、単三アルカリ電池は4本で100円でした。マンガン電池は6本も購入できました。最近では円安が進み、世の中全体の物価高もあり、2本で100円になりました。それでもブランドものの電池と比較すると値段では100均ブランドが経済的です。
では、気になる性能はどうなのでしょう。「安かろう、悪かろう」では済まされません。そこでHW Labでは、その性能を実験で確かめます。
乾電池に負荷を接続し、電流を流して何時間で使えなくなるかを測定してみます。まずは、この記事で実験結果を示して完結とする予定でしたが、意外と電池は長持ちすることが分かり、この原稿を書いている段階ではまだ結果が出ていません。そこで、前編は実験装置の紹介とし、後編で各ブランドの電池の性能を示すことにします。
今回の実験で使用する電池は一般に乾電池(一次電池)と呼ばれているもので、充電をせずに使用する電池です。電流を流しているうちに電圧が低下して使えなくなればそれで終りとなる電池です。その辺のお店ですぐに手に入るいろいろなブランドのアルカリ電池とマンガン電池で性能を調べます。
日本産業規格の「JIS C8500:2017 一次電池通則」や各電池メーカーのサイトには電池の性能とはどのようなものであるかが記されています。多くの項目がありますが、代表的なものを列記しました。
(1) 電圧(開路電圧・負荷時電圧)
JIS(日本産業規格)では開路電圧の測定が規定されています。一般的なアルカリ電池やマンガン電池では1.5Vです。
(2) 容量(持続時間・エネルギー量)
放電電流×放電時間で決まります。アルカリ乾電池はマンガンより容量が大きく、いわゆる長持ちすることで知られています。
(3) 放電特性(負荷に対する電圧の変化)
定電流放電での電圧低下カーブ。
(4) 液漏れ・変形の有無(安全性)
JISでは漏液・変形の試験項目が規定されています。
(5) 保存特性(保存寿命・使用推奨期限)
保存後の放電性能です。使用推奨期限はメーカーがパッケージに記載していることが多いようです。
(6) 寸法・外観
単1~単5などのサイズの規格。
(7) 環境条件への耐性(温度特性)
低温では化学反応が弱まり性能低下します。
今回の実験では、上記項目「(2) 容量」のうち、その持続時間について調べます。測定には電圧計が必要です。JISでは「測定機器の確度は、0.25%以下で、精度は、有効数字丸め幅の50%以下とする。測定機器の入力抵抗は、1MΩ以上とする。」との記載があります。
全く無視するものではありませんが、現実的なことを考え、できるだけ内部抵抗の高い手持ちのデジタルマルチメーター(DMM)で測定します。したがって測定結果は、その電池の持つ絶対値ではなく、あくまでもいろいろなブランドの電池との比較値としてご理解ください。
通常の乾電池の電圧は1.5Vです。購入したばかりの乾電池の電圧は1.5Vを少し超えているものもあります。この新品の電池を、例えばテレビのリモコンに長く使っていると、そのうち電池がなくなり、リモコンが動作しなくなります。このとき電池の電圧を測ると1Vぐらいに低下しています。電池が安定した動作を供給しなくなる状態の電圧を「終止電圧」と呼び、1.5Vの電池ではその終止電圧は0.9Vとされています。
実験では、図1に示すように1.5Vの電池(被測定乾電池)に15Ωの負荷(R)を接続し、SWで回路をON/OFFしながら電流を断続的に回路に流します。電池が終止電圧の0.9Vになるまでの時間を測定します。これを電子回路で自動的に行います。

図1. 実験の概念図
電池の電圧は、電池の表面に記載されている通り1.5Vです。購入したばかりの電池の電圧は図2のDMMに示すように1.5Vを少し超えています。これを図2(右)に示す回路で、電池に負荷を加えて電流を流し、電池を強制的に消耗させます。
電池の負荷は15Ωの抵抗とし、回路には約0.1A(100mA)を流すようにしました。もっと低い抵抗にすると回路には大きな電流が流れ、電池の消耗も短くなり実験も早く済むように思いましたが、こうすることで電池本体の温度も上昇することからとりあえず100mAとしました。

図2. 左:新品の電池の電圧は1.5Vを超えている 右:電池に負荷を接続して電流を流す
実験の概念図をブロック図にしたものが図3です。回路は三つのパートから構成されています。
(1) ON/OFF制御回路
ON/OFF制御回路はNE555で構成されています。NE555の出力(OUTPUT)デューティー比は50%としています。OUTPUTのHレベルとLレベルのインターバルは約20~30秒となるように定数を選びました。OUTPUTがHレベルとなると出力に接続したトランジスターがオンとなり、そのコレクターに接続したリレーが動作します。このリレーに電池と抵抗を図2(右)のように接続します。回路にはDC12Vのリレーを使っていますが、5VのリレーでもOKです。その場合はVccの電圧を5Vにしてください。
(2) 被測定電池
1.5Vの被測定電池には15Ωの抵抗を接続して回路を作ります。その回路をリレーの接点でON/OFFさせます。15Ωの抵抗ですから回路が繋がっている状態では約100mAの電流が流れることになります。
(3) 終止電圧検出回路
被測定電池の終止電圧を0.9Vとして実験を進めます。したがって電池の両端の電圧が0.9V以下になるとコンパレーターLM393で構成した比較回路が動作し、出力はHレベルとなります。終止電圧が0.9Vになるまでずっと回路のそばに付いていることも非現実的ですからここは自動化します。
大手通販ショップで見つけた電子カウンターを使います。カウンターの「加」のスイッチを押すごとにカウンターはアップします。回路的には「加」のスイッチのホット側をGNDレベルにするとカウンターはアップします。これを電子回路で自動化します。
図3のブロック図を回路図にしたものが図4です。ON/OFF制御回路は使用するリレーの都合でVccを12Vとしています。終止電圧検出回路や表示回路は5Vで動作するため、面倒ですが78L05のIC2(三端子レギュレーター)にて12Vから5Vに減圧して電源を供給しています。
12Vの電圧を印加するとIC1で構成した無安定マルチバイブレータ―が動作します。無安定マルチバイブレータ―ですから、3番ピンにはHレベルとLレベルの信号が交互に出力されます。そのインターバルは約20秒です。VR1とVR2の半固定抵抗にてその時間を可変できます。
被測定電池の回路は、他の回路とはリレーにて切り離しています。回路には15Ωの抵抗を直列に接続し、約100mAの電流を流して電池の容量を消費させています。
Vccに12Vが印加されるとIC1の3番ピンの出力がHレベルになる毎にカウンターが1つアップします。VR3とR5、VR4で基準電圧の0.9Vを作っています。この0.9Vと被測定電池の電圧とをIC3のコンパレーターにて比較し、被測定電池の電圧が基準電圧の0.9Vを下回ればIC3の1番ピンがHレベルの信号を出力します。この信号でQ2のコレクターがGNDレベルになり、ここでカウンター動作がストップします。
図5は、完成した回路にて電池の性能を確認しているところです。電池に電流が流れる時間を約20秒としています。その後20秒間は、なにも電流が流れず次の20秒でまた電流が流れます。このインターバルを電子カウンターで計測しています。
最終的に乾電池が終止電圧までに費やす時間T(秒)は「T=20秒×カウンターの数字」で計算することができます。次号後編では数種類の乾電池の性能を比較するようにします。

図5. 完成した自動測定装置で電池の容量を確認しているようす
日本産業規格「JIS C8500:2017 一次電池通則」
パナソニック 乾電池エボルタ
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