今更聞けない無線と回路設計の話
2026年6月1日掲載
第19話の第2章において、量子化雑音の計算式(式2-2)に間違いがありました。お詫びして訂正致します(第19話の当該箇所については修正済)。
<誤>

(式2-2)
<正>

(式2-2)
(考え方)
NビットのADCがもつデジタル空間は、2Nなのに対して交流信号のサンプリングレンジは負の電圧をサンプリングする必要から、有効ビット数が半分の2N−1になります。この結果デジタル空間の最大値(フルスケール)が2N−1−1、最小値(ゼロスケール)が
、量子化雑音の平均値はその半分の
になります。
第20話は、第19話に続きデジタル・アナログ変換(DA変換)の原理と、DA変換の前後におけるレベルダイヤグラムの縦軸(デジタル振幅[dBFS]目盛とアナログ電圧[dBµV]目盛)の関係について解説します。
DAコンバータ(DAC)は、デジタル(バイナリ)コードを電圧(または電流)に変換するデバイスです。捉えようによってはデジタル制御の定電圧源(または電源装置)ともいえるデバイスです。ADコンバータと同様、いくつかの方式がありますが、スピーカやモータ駆動の為の電力供給用途にはPWM(Pulse With Modulation: パルス幅変調)方式、電圧精度を要求する用途にはR-2Rラダー回路を用いた方式が主流です。ここでは後者の方式について解説します。
図1はR-2Rラダー回路を用いたDACの原理回路です。ADCと同様、DACにも出力信号の最大振幅を定める基準電圧(VREF)端子が備わっています。DACではこの基準電圧でR-2Rラダー回路を駆動し、ラダーの各段をスイッチすることにより、入力のデジタル(バイナリ)コードに対応した電流を生成、後段のTIA(Trans Impedance Amplifire: インピーダンス変換増幅器 → 電流電圧変換増幅器)で電圧に変換して出力電圧
を得ます。
図2は図1からR-2Rラダー回路のみを切り出して示したものです。解像度NビットのDACにはN段のラダー回路が適用されます。R-2Rラダー回路はその名の通り、抵抗値がRと2Rの関係にある2種類の抵抗を組み合わせた梯子(ラダー)回路で、右端(終端)から見て直列抵抗R → 並列抵抗2Rの順に左端(電源端)に向かってN回繰り返されます。
図2の下部にラダーの基本回路を示します。ラダーの1区画は、終端側((3)-(4)側)にR[Ω]を接続した時、電源側((1)-(2)側)から回路網を見たインピーダンスがR[Ω]に、電源側((1)-(2)側)に2R[Ω]を接続したとき、終端側((3)-(4)側)から回路網を見たインピーダンスが2R[Ω]に見える4端子回路網になっています(簡単な計算なので計算式は省略します)。なお(1)(2)(3)(4)はそれぞれ黒丸に白抜き文字の①②③④を示します(以下同じ)。 このため図2の上側に示すように、この回路網は何段縦続接続しても終端にR[Ω]を接続すれば各段の(1)-(2)間(図2上の図において、(1N-2N)、(1N−1)-(2N−1)、(1N−2)-(2N−2)、・・・ (12)-(22)、(11)-(21)の各ノード間)から負荷側(右側)を見た抵抗値は全てR[Ω]になります。
従って回路の左端①-②間に電圧
[V]を印加すると、N段目ラダー回路の1N端子に流れ込む電流
は、ラダーの段数Nに関わらず、

(式1-1)
です。N段目ラダー回路に入った電流は、並列抵抗(2R[Ω])側と直列抵抗(R[Ω])側に分かれますが、直列抵抗側の(4N)-(3N)端子から右側の抵抗値は先に述べたとおりR[Ω]なので、分岐点Xから直列抵抗側の抵抗値も2R[Ω]となり、並列抵抗側と直列抵抗側に半分ずつの電流が流れることになります。言い換えると各段共通で(1)端子から流入した電流の半分が並列抵抗2Rに流れ、残り半分が(4)端子を介して後段のラダー回路の(1)端子に流入、後段ではその半分が並列抵抗に流れ、残り半分が(4)端子を介して後段の(1)端子に流入・・・ を繰り返します。従ってN段のR-2Rラダー回路において、電源から1段目(すなわちN段目)の並列抵抗に流れる電流
は

(式1-2)
電源から2段目(すなわちN −1段目)の並列抵抗に流れる電流
は

(式1-3)
と続き、電源からN段目(すなわち1段目)の並列抵抗に流れる電流
は

(式1-4)
となります。
従って、各段の並列抵抗側に流れる電流を入力されたバイナリコードに応じて取り出し、取り出した電流の総和を求めればバイナリコードに対応した電流値を得ることが出来ます。そしてこれを電圧に換算すればバイナリコードに対応した電圧出力を得ることが出来ます。このバイナリコードに応じて電流を取り出す回路が図1に示したアナログスイッチSW0~SWN-1です。このスイッチはラダーの並列抵抗とGND(図2で言う(2)端子)の間に挿入され、入力されたバイナリコードの値がゼロのビットはGNDに倒れ、1のビットは後段のTIA(Trans Impedance Amplifier)側に倒れます。
図3はTIAの動作原理を示すものです。TIAは直訳すると「インピーダンス変換増幅器」で、低インピーダンス信号(電流信号)を高インピーダンス信号(電圧信号)に変換する回路として広く使用されている回路です。図に示すようにオペアンプ反転増幅回路の入力抵抗をなくした構成になっています。

図3 TIA(Trans Impedance Amplifier)
オペアンプをこのような接続で使用すると、オペアンプの+端子がGNDに接続されているので、一般的な反転アンプと同様、オペアンプの-端子が0V(GNDと同電位 → 仮想接地)になるような出力電圧がOUT端子に出力されます。つまりTIAの入力端子は0ΩでGNDに短絡された回路のように見えるので、回路の入力電流
は入力信号(電源)をGNDに短絡したときに流れる電流と等しくなります。このときOUT端子には
にフィードバック抵抗Rf[Ω]をかけ算した大きさの負電圧が出力されます(式1-5)。

(式1-5)
つまりTIAは、入力端子に流れ込む電流を係数Rf倍で電圧に変換していることになります。
図1に戻って、このような回路をアナログスイッチの後段に接続するので、R-2Rラダー回路から見ると、後段のスイッチがGND側に倒れていてもTIA側に倒れていても、回路動作に変化は発生しません(どちらもGNDに繋がる)。そしてTIAの入力には、バイナリコードが1のビットの合計電流が流れ込むことになります。ここでDACの入力ビットの値を
~
(各ビットの値は0または1)とすると、TIAの入力電流
は

(式1-6)
~
とR-2Rラダーへの入力電流
には(式1-1)~(式1-3)の関係があるので

(式1-7)
の最大値
は
~
が全て1の時で

(式1-8)
の最小値
は
~
が全て0の時で

(式1-9)
となります。そしてフィードバック抵抗Rfの値をラダー回路の終端抵抗値と同じくR[Ω]とすると、TIAの出力電圧
は(式1-5)、(式1-7)より

(式1-10)
後段の反転増幅回路の電圧増幅度を1倍とすると

(式1-11)
の最大値
は
~
が全て1の時で

(式1-12)
の最小値
は
~
が全て0の時で

(式1-13)
となります。
≅
と見なせば、DACの出力電圧は0~
[V]の振幅になります。
次ページは「DAコンバータの入力データと出力振幅の関係」から
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