今更聞けない無線と回路設計の話
2026年10月1日掲載
最後に伝送信号
にも雑音が重畳している場合です。結論から先に言うと入力信号(伝送信号)
のSNRも保存されるので、出力信号
(出力スペクトル
)に含まれる雑音電力は入力信号とLO信号それぞれの雑音電力の和になります。すなわち伝送信号
のSNRを
[dB]、LO信号のSNRを
[dB]とすると出力信号
のSNR(
)[dB]は、

(式3-1)
となります。では図4に沿って詳しく見ていきましょう。入力端子に印加される伝送信号
とLO信号
の大きさ関係、ならびにLO信号の位相雑音
の大きさは図3と同じです。伝送信号
に重畳する雑音
はフロア雑音(熱雑音や増幅器の電流雑音が増幅されたもの)なので、伝送帯域内のスペクトルは概ね平坦なスペクトルと想定します。説明を簡単にするため、複数のスペクトルの集合体として取り扱うこと、および大きさは帯域の中心周波数のスペクトル
の大きさを代表レベルとして取り扱うことは、2項(図2、図3)の考え方と同じとします。入力の雑音スペクトル
の大きさは入力スペクトル
に対して−30dB。負荷インピーダンス
を1とおいて電圧振幅
に換算すると(式3-2)に示す値になります。

(式3-2)
この信号を振幅1で位相雑音が重畳されたLO信号とかけ算します(式3-3)。

(式3-3)
(式2-3)、(式3-2)で導出した振幅を代入して三角関数の積和の式を適用して(式3-4)を得ます。なお計算の経過については図4の計算式も参照ください。

(式3-4)
(式3-4)の第1項は
と
の積の和周波成分、第2項は
と
の積の差周波成分で(式1-3)と同じです。第3項と第4項は
と
の積の和周波成分と差周波成分で(式2-6)と同じです。新たに増えた項のうち第5項と第6項は
と
の積の和周波成分と差周波成分です。入力のフロア雑音、LOの位相雑音ともに線スペクトルの集合体なので、3,4,5,6項は雑音スペクトル毎に発生する結果、図4に示すように入力信号のスペクトル、LO信号スペクトル、それぞれと相似形のスペクトルが現れて両者が加算されることになります。最後の第7項、第8項は
と
の積の和周波成分と差周波成分です。この成分も雑音スペクトル毎に発生し、どちらも帯域をもったスペクトルなので、両スペクトルの帯域幅の和の帯域幅をもつスペクトルになります。但し係数を見ていただけば判るように非常に小さい値になるので、一般的な配分設計では無視してもあまり全体設計に影響しません。
以上、まとめると周波数変換回路においては、回路の変換利得にかかわらず伝送信号、LO信号のSNRがそれぞれ維持される形で出力信号に変換されます。出力される信号にはこれらの雑音電力の総和が重畳されるので、そのSNRは(式3-1)に示したようになります。
第24話では、周波数変換回路において、入力信号とLO信号それぞれに重畳する雑音がどのように出力に伝達されるのかについて解説しました。周波数変換は非線形動作でわかりにくく、劣化配分設計においても面倒な存在なので敬遠されがちです。今回の解説で少しでもすっきりして頂けると幸いです。以下、第24話の要点です。
第25話ではレベルダイヤグラムに戻って直交変調器からアップコンバータまでの雑音レベルの計算について見てみたいと思います。
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