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今更聞けない無線と回路設計の話

【テーマ2】デシベルと無線工学
第24話 変調器出力振幅と信号劣化(4)

濱田 倫一

2026年10月1日掲載

3. 伝送信号にも雑音が重畳している場合

最後に伝送信号にも雑音が重畳している場合です。結論から先に言うと入力信号(伝送信号)のSNRも保存されるので、出力信号(出力スペクトル)に含まれる雑音電力は入力信号とLO信号それぞれの雑音電力の和になります。すなわち伝送信号のSNRを[dB]、LO信号のSNRを[dB]とすると出力信号のSNR()[dB]は、


(式3-1)

となります。では図4に沿って詳しく見ていきましょう。入力端子に印加される伝送信号とLO信号の大きさ関係、ならびにLO信号の位相雑音の大きさは図3と同じです。伝送信号に重畳する雑音はフロア雑音(熱雑音や増幅器の電流雑音が増幅されたもの)なので、伝送帯域内のスペクトルは概ね平坦なスペクトルと想定します。説明を簡単にするため、複数のスペクトルの集合体として取り扱うこと、および大きさは帯域の中心周波数のスペクトルの大きさを代表レベルとして取り扱うことは、2項(図2、図3)の考え方と同じとします。入力の雑音スペクトルの大きさは入力スペクトルに対して−30dB。負荷インピーダンスを1とおいて電圧振幅に換算すると(式3-2)に示す値になります。


(式3-2)

この信号を振幅1で位相雑音が重畳されたLO信号とかけ算します(式3-3)。


(式3-3)

(式2-3)、(式3-2)で導出した振幅を代入して三角関数の積和の式を適用して(式3-4)を得ます。なお計算の経過については図4の計算式も参照ください。


(式3-4)

(式3-4)の第1項はとの積の和周波成分、第2項はとの積の差周波成分で(式1-3)と同じです。第3項と第4項はとの積の和周波成分と差周波成分で(式2-6)と同じです。新たに増えた項のうち第5項と第6項はとの積の和周波成分と差周波成分です。入力のフロア雑音、LOの位相雑音ともに線スペクトルの集合体なので、3,4,5,6項は雑音スペクトル毎に発生する結果、図4に示すように入力信号のスペクトル、LO信号スペクトル、それぞれと相似形のスペクトルが現れて両者が加算されることになります。最後の第7項、第8項はとの積の和周波成分と差周波成分です。この成分も雑音スペクトル毎に発生し、どちらも帯域をもったスペクトルなので、両スペクトルの帯域幅の和の帯域幅をもつスペクトルになります。但し係数を見ていただけば判るように非常に小さい値になるので、一般的な配分設計では無視してもあまり全体設計に影響しません。


図4 LO信号と伝送信号の両方に雑音が重畳している場合

以上、まとめると周波数変換回路においては、回路の変換利得にかかわらず伝送信号、LO信号のSNRがそれぞれ維持される形で出力信号に変換されます。出力される信号にはこれらの雑音電力の総和が重畳されるので、そのSNRは(式3-1)に示したようになります。

4. 第24話のまとめ

第24話では、周波数変換回路において、入力信号とLO信号それぞれに重畳する雑音がどのように出力に伝達されるのかについて解説しました。周波数変換は非線形動作でわかりにくく、劣化配分設計においても面倒な存在なので敬遠されがちです。今回の解説で少しでもすっきりして頂けると幸いです。以下、第24話の要点です。

  • (1) 受信機復調部に周波数選択性や特殊な応答がない限り、伝送路における雑音電力の大きさは、伝送帯域内の雑音スペクトルの総和、すなわち伝送帯域内の積分値(面積)となる。
  • (2) 周波数変換回路の入力信号がノイズレスのシングルトーン(サイン波)の場合、LO信号の位相雑音スペクトルはそのまま相似形で出力信号に周波数変換される。
  • (3) 周波数変換回路のLO信号がノイズレスのシングルトーン(サイン波)の場合、入力信号に重畳された雑音スペクトルはそのまま相似形で出力信号に周波数変換される。
  • (4) (2)、(3)より、周波数変換回路においては入力信号に重畳するフロア雑音、LO信号に重畳する位相雑音がそれぞれSNRを維持した状態で周波数変換されて出力に現れる。従って出力の雑音電力はこれら雑音成分の和となる。両者を足し合わせた後のSNRは(式3-1)で導出される。
  • (5) 周波数変換回路の出力には、入力信号に含まれる雑音成分とLO信号の雑音成分の積も出力されるが、通常は信号のSNRに寄与するレベルに達しないため無視できる。

第25話ではレベルダイヤグラムに戻って直交変調器からアップコンバータまでの雑音レベルの計算について見てみたいと思います。

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