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車内シャックの構築と運用

その3 DC-DC昇圧コンバーターの設置

月刊FB NEWS編集長 JS3CTQ 稲葉浩之

DC昇圧の必要性

乗用車に搭載されているエンジン始動用バッテリーの標準電圧は12Vです。一方、無線機が必要とする標準電圧は13.8Vで、ほとんどの無線機は13.8Vを印加した際に定格出力がでる仕様となっています。12Vの印加でも多くの無線機は動作しますが、たとえば出力50W機の場合であれば30W程度しか出ないのが一般的です。(※機種により大差あり)

出力低下だけならまだ我慢できても、バッテリー - 無線機間のDCケーブルが長い場合や、DCケーブルの途中にフィルターとかリレーが入っている場合、もしくはDCケーブルの長期間の使用でヒューズとヒューズホルダーの接触抵抗が大きくなっている場合などは、送信時の電圧降下によって、12Vが一時的に11V以下までドロップすることがあり、その場合送信したとたんに無線機の電源が落ちてしまうケースもあります。

これらの問題を回避するには、DC-DC昇圧コンバーター(DC-DCアップバーター)を使用して、DC12VをDC13.8Vに昇圧し、無線機に標準電圧の13.8Vを供給する方法があります。筆者の場合、自家用車にDC-DC昇圧コンバーターを取り付け、運用時の無線機には常時13.8Vを供給しています。これにより必要に応じてフルパワー50Wでも運用可能です。今回はこのDC-DC昇圧コンバーターの設置についてご説明いたします。

DC-DC昇圧コンバーター

主にトラックなど大型車両で使用するDC24V→DC13.8VのDC-DC(降圧)コンバーターは市販品も多く、選択肢が多いのですが、DC12V→DC13.8VのDC-DC昇圧コンバーターは種類が少なく、選択肢はあまり多くありません。それでも何種類かは見つけることができると思いますので、ご興味のある方はネット検索してみて下さい。

ではどのようなDC-DC昇圧コンバーターを用意する必要があるかですが、まずは必要な電流を安定して取り出せることです。たとえば無線機の出力を最大50Wで送信する場合は、余裕を見て最大出力電流が20A以上のDC-DC昇圧コンバーターの導入をご検討下さい。無線機の出力が10Wの場合は、最大出力電流が10Aあれば十分だと思います。ご使用になる無線機の最大電流値は、取扱説明書でご確認下さい。定格一杯一杯ではなく、できるだけ余裕を見てご用意ください。

次にインバーターと同様に輻射ノイズを出さない、もしくは極力少ないものが良いですが、これは実際に導入してみないと解らないのが正直なところです。筆者は、以前はMFJエンタープライズのMFJ-4416Bを使用しており、今はJA7UQ鹿間さんが以前に頒布されていたEV-30Cを使用しています。幸いにもどちらも運用に支障になるノイズは発生していません。
※ 現行品はMFJ-4416Cです。

ではなぜ変更したか興味をお持ちの方もおられると思いますのでご説明すると、MFJ-4416Bは新品で購入後、定格内の使用にもかかわらずなぜか頻繁に内蔵のヒューズが飛びました。原因不明でした。これはおかしいと思って、米国のMFJに修理に出しました。その間、移動運用に降圧コンバーターが無いと困るため、EV-30Cを代わりに導入しました。その後2ヶ月くらいしてMFJ-4416Bが米国から修理完了(実際には新品交換)で返ってきましたが、代わりのEV-30Cをすでに車両にガッチリと設置したことで、修理完了で返ってきたMFJ-4416と積み替えるのが面倒となったためです。移動運用にはそのままEV-30Cを使い続け、MFJ-4416Bは、(連載その1で掲載した)簡易アイソレーター(セルスター/IS-330)の電圧降下を補償するための昇圧に使用しました。ちなみにMFJ-4416Bは、修理後一度もヒューズは飛んでいませんので、完全に直っている(不具合が解消した)状態です。


図1 構成

DC-DC昇圧コンバーターの配線

さて、サブバッテリーと昇圧コンバーターの接続ですが、できるだけ太く短いケーブルで接続するのがベターです。どうせ昇圧するのだから途中で電圧降下しても問題ないのでは、というご意見もあろうかと思いますが、下記の理由などでロスは減らした方が良いに越したことはありません。ただできるだけ太いとはいっても引き回しが大変な極太ケーブルを用意する必要はなく、5.5SQ程度で問題ないと思います。筆者の使用ケーブルについては、上図をご参照下さい。万一、昇圧コンバーターに不具合が発生して昇圧できなくなった場合でも運用を継続したい(電圧降下による電源断は避けたい)ので、少し太めのケーブルを使用しています。

なお、1泊での移動運用など長時間運用する場合は、図1の破線内に示したように別途ディープサイクルバッテリーを搭載して出発します。車内常設のサブバッテリーと、このディープサイクルバッテリーの切り替えは、手動でDCコネクタを差し替えて対応しています。このコネクタはできるだけ低ロスのものがベターです。また無線機を2台以上同時に運用する場合に備え、許容電流が30A以上のものを推奨します。安価なものは、抜き差しを繰り返すうちに接触抵抗が高くなることがありここで熱を発生しますし、大電流を長時間流し続けると最悪コネクタが溶けることもありますのでご注意ください。筆者は最大100Aまで流せるJP-100Aを使用しています。ただし最近見かけなくなりましたので、JP-100Aと互換性のあるTK-100A、もしくは、互換はありませんが入手容易なアンダーソンコネクタなどが良いかもしれません。


写真1 JP-100Aコネクタ (日本製だがメーカー不詳)

昇圧コンバーターの設置場所は車両のリアスペースにあった小物入れです。フタを取り外して設置しました。ただし、このような空気の循環が良くない場所に設置する場合は、運用を続けるうちに昇圧コンバーターの筐体が高温になるというリスクがありますので、強くおすすめするもの(設置状態)ではありませんが、できるだけスマートに設置したい、運用時間はいつも比較的短時間という条件であれば、参考にされて下さい。また、必要に応じて、冷却ファンを追加したり、放熱板を取り付けたりするなど、冷却対策を講じて下さい。


写真2 EV-30C回り。DC電圧計で入力電圧と出力電圧を常時監視している。
(出力電圧は2つの電圧計がそれぞれ13.7Vと14.0Vを示しているが、この状態でIC-705本体は13.9Vを示すので、概ね13.8-13.9V程度と思われる)

なお、EV-30Cには、無線機のSEND信号に同期させて送信時のみ昇圧させ、受信時はスルーにすることでバッテリーの寿命を延ばす機能も装備されていますが、筆者はCWフルブレークイン運用も行うため、その制御ジャックをショートさせて、常時昇圧回路を動作させています。(MFJ-4416B/Cにも同じ機能あり)

バッテリー電圧に要注意

昇圧コンバーターへの入力電圧(バッテリー電圧)の監視は特に重要です。運用開始時の数値と比較することでバッテリーの減り具合が相対的にわかります。ディープサイクルバッテリーを使用の場合は、その性格上ある程度深放電させても大丈夫と思われますが、エンジン始動用バッテリーの深放電は寿命を縮めるそうですのでご注意ください。当方は無線機の電源を落とし、昇圧コンバーターに負荷をかけていない状況※で、概ね11.5Vを切ったらサブバッテリーでの運用を終了することにしています。ただし、ディープサイクルバッテリーで運用中は11.0Vを切るまで運用します。

※この状況でもインバーター(前号参照)を経由してパソコンなどが動作しているため、バッテリーは無負荷ではありません。なお、バッテリーの正確な端子間電圧を計測するには、バッテリーの使用停止後、無負荷で1時間程度は放置する必要があると言われていますので、上に記載の数値(電圧)は目安でしかありません。もし、サブバッテリーではなく(自動車のセルモーターに繋がった)メインバッテリーで運用する場合は、電圧計の表示が12.0Vを切ったら、(エンジン停止状態での)運用は中止する、あるいはエンジンを始動してオルタネーターを動作させるなど早めに対策を講じて下さい。

次回は、無線機とパソコンのセッティングについてご説明いたします。

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次号は 12月1日(火) に公開予定

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