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広げよう“IOTA”の輪 ~ONE PIECE of IOTA~

その11 台風に魅入られたIOTAコンテスト (JO3LVG 桂さんより)

JP3AYQ 眞田真由美

こんにちは。JP3AYQ眞田真由美(Mami)です。ご縁あって月刊FBニュースにIOTA関連の記事を連載させて頂いております。今回で第11回目となり第4コーナーを回り、とうとうラストスパートとなりました。12回シリーズの連載も残すところ今回を含めてあと2回ですが、皆様にIOTA情報を楽しんで頂けましたら幸いです。少しでも多くの方に、IOTAの魅力や楽しみ方を知って頂けるように、色々な視点からIOTAチェイシングのノウハウ、体験談や苦労話・移動レポートなどIOTAの魅力たっぷりな情報を頂いて繋げて行きます。IOTAは世界の島々を電波で巡るアワードです。あなたも一緒に電波で島への旅に出かけませんか?はまると楽しいIOTAです!

さて、前回はJE6HCL佐治さんに「IOTAの出会いに感謝!」と題しまして、IOTAとの出会い、Homeアパマン&移動運用を組み合わせて楽しくIOTAチェイシングをされている様子や初めて離島へ渡ってIOTAコンテスト2017へ参加されました体験記などをレポート頂きました。楽しんで頂けましたでしょうか?

今月は視点を変えまして、IOTAのチェイシングはまだ未参加ですが、IOTAコンテスト(※1)参加のため台湾の離島IOTA(※2)へ3年連続で渡航されていますYL局、JO3LVG 桂さんに、今年のIOTAコンテスト2017へBV0LのメンバーとしてSHIAO LIUCHIU ISLAND(AS-155)へ渡られました体験記をレポートして頂きました。JAは太平洋に近く、離島へ渡りやすい環境です。桂さんが毎年行かれています、台湾にもIOTAがいくつかありますし、視点を大きくしてターゲットを太平洋の離島とすれば、お隣の韓国・中国~グアム・ハワイ・パラオetc・・・・もう∞となります。世界に羽ばたくJA YL局の台湾離島IOTAコンテスト体験記をどうぞお楽しみください。


JO3LVG 桂YL & HB9FPM Eva YL(HB9FPM&HB9JOEご夫妻来日歓迎会にて)

『台風に魅入られたIOTAコンテスト』

JO3LVG 桂 美代子

はじめまして、私はJO3LVG桂といいます。三年ほど前からパラオOC-009でT88MK、台湾・澎湖諸島AS-103でBV9A、金門島AS-102でBO0KS、小琉球島AS-155でBV0Lと運用してきました。IOTAの魅力等は前回までにいろいろと紹介されていますので、ここは多少番外編的な要素もありますが2つの台風と言うアクシデントに見舞われた今回の事を参加メンバーの感想も交えて紹介させて頂きます。

少しだけ自己紹介を。私は決してアクティブな無線家ではなく、まして熱心なDXerでもありません。どちらかと言えば無線を口実にイベントでアイボールを楽しんだり、アンテナを作ったり新しいモードやいろんな事に手を出してそれが出来るようになるまでのプロセスを楽しんでいるような、どう考えてもIOTAとは縁が無さそうな無線局です。

●海外IOTAペディションへ行くキッカケ
そんな私がなぜIOTAをと言うと、きっかけは友達に誘われてFCC試験(※3)を受けたのですが、最初の試験は西ハム(※4)会場でした。それがご縁で知り合った九州VEの方々が毎年パラオ(T8)で運用されているとの事でご一緒させて頂く事となりました。まともにCQも出した事も無い私が出来るのだろうかとの不安を抱えながらも、無線より素敵な南国の島での観光だけでも楽しみたいと言うのが正直な気持ちでした。

●2015年、2016年、台湾からのIOTAコンテスト参加お誘いと台湾局との交流
そんな時、友達の所にIOTAコンテストに参加しないかと台湾の局長さんからお誘いがあり、私としてはパラオの前哨戦として、私を含め4人で参加する事となりました。それが、2015年7月の澎湖諸島AS-103でのIOTAコンテスト(BV9A)で、初CQがBW/JO3LVGとBV9Aでした。

その翌年2016年の1月にはパラオOC-009でT88MKとして台湾とは別のメンバーでした。同行のみなさんに助けられながらもJAのみならずヨーロッパ、中東、オーストラリア等々700局あまりの交信を楽しむ事が出来、すっかり海外での運用にはまってしまいました。さらにその年7月のIOTAコンテスト2016では金門島AS-102(BO0KS)へ、前年の参加者に新しいメンバーも加わり、交流や観光もめいっぱい楽しみながらやってきました。

●台湾における免許取得について
台湾でのライセンスはNCC(國家傳播委員會National Communications Commission)の実施する試験に合格しても台湾のコールサインは取得できません。試験に合格して取得できるのは日本で言う従事者免許です。この試験は、国籍に関係なくパスポートがあれば受験することができますが、コールサインの取得条件は台湾での従事者免許を持っていて、なおかつ居留証を持っていれば無線局を開設できます。短期旅行客や出張者はこの居留証がないため、国家試験に合格しても台湾のコールサインが取得できないのです。

したがいまして、私たちは自国の無線資格の免許をもとに申請するゲストライセンス「BW/***(自国のコールサイン)」、私の場合はBW/JO3LVGでの運用となります。また、このゲストライセンスとは、正確には臨時運用許可書と言います。この許可書を所持している外国人は、台湾の個人局、クラブ局、臨時記念局などからの運用が可能になりますが、それぞれの無線局から運用できるかどうかは、その無線局の責任者が運用を認めるかどうかによります。
(注意)あくまでもゲストオペレーションが基本ですから、無線機を持ち込んでホテルから運用できるということではありません。

外国人臨時運用許可書の申請は、運用する個人の申し込みを受けて、CTARLがNCCに申請します。したがって、運用許可書は個人に発行されるものでなく、CTARLに対して「XXXXXの運用を許可する」というような書面が届くことになります。この際、台湾で免許されている無線局の署名が必要で、私たちはBV2NTさん達のお世話になりました。
※台湾で無線の運用を希望される場合は、CTARLか、現地のアマチュア局に相談してください。

申請には以下の5点が必要です。
1, パスポートのコピー
2, 有効なアマチュア無線局免許状のコピー(日本の場合、無線従事者免許証のコピーも)
3, 申請書類様式A http://www.ctarl.org.tw/bv5ya/tenta_a.doc
4, 申請書類様式B http://www.ctarl.org.tw/bv5ya/tenta_b.doc
5, NT$300(CTARLの手数料、日本円で約1,000円程度)

初回申請の場合は1週間から1か月程度の比較的短期間しか免許されませんが、二回目以降は3か月から半年程度免許されるようです。

●いよいよ日本から台湾のIOTA AS-155へ
今年のIOTAコンテスト2017運用地は台湾・屏東県の離島『小琉球』(AS-155)でした。コールサインはBV0Lです。


BV0Lチームの集合写真

参加者は集合写真の後列左から、ZL1JAP 有山安男、中国泉州からの方、BX4AF 鍾兆崇、JA3AQM 佐々木光四郎、BV2NT 李振東、BG5TLT 陳玟紋、中国泉州からの方、BX2AB 李振邦、JH3BDB 入江雅量、BG5TRH 魏春達、前列左から、JH3GCN 弓削清博、BV2KI 易永生、JO3LVG 桂美代子、JG3DOR 河端良治、JA1CTB 谷澤哲、JH3GVJ 寺杣光弘、JA3EIZ 小野佑路の総勢17名でした。

今回は先行したメンバーが7月27日に台北から陸路で高雄、東港からフェリーで小琉球へ、私たちは一日遅れの28日に関西空港から高雄へ飛び、小琉球には半日余り遅れて到着しました。到着した時にはすでにアンテナ設営もほぼ完了していました。


宿の屋上に設営されたアンテナ群、海に面した抜群のロケーション
アンテナは手前から14~50MHz、3.5~28MHz傾斜型Folded DP、
奥側は18~50MHzでこれは台風9号で倒れました。(涙)

●すばらしい設備にアクシデント、台風到来と大規模停電
7月28日夜に交代で少し交信しましたが、30分ほどでJAの1~0各エリアと交信出来、幸先の良いスタートにコンテストへの期待も膨らんでいました。しかし・・・29日には台風9号が台湾本島に上陸、お昼過ぎには大規模停電となってしまいました。刻々と迫るコンテスト開始時刻、一向に回復しない停電!!ようやく回復するも30日には次の台風10号が直撃!!暴風の中アンテナを下すはめになり、コンテストも途中棄権となってしまいました。以下は、そんな中でもコンテストに先陣をきって出て頂いたJA1CTB谷澤さんはじめ、参加メンバーからお聞きした感想をまとめてみました。

●コンテスト参加メンバーからの感想まとめ
『万全の準備から一転、嵐の中の突然の停電、それがいつまでたっても戻らず、ジリジリやれることもなく一日が経つ頃、このままコンテスト参加もなく帰ることを覚悟し始めたころ、突然回復!なんとコンテスト開始1時間を切っていました。慌ててコンテストにむけ慌ただしくヘッドセットをつけ、リグとアンテナをセットし直し、CQ de BV0L BV0L test …ところがN1MMのコンテストロガーが、コンテスト用に設定できていないままであったため、大慌て!出鼻をくじかれてしまいました。 やっとセッティングし直してスタートしたものの、コンディション不調もありサッパリ調子があがりませんでした。


(左)到着後テスト運用中、(右)コンテスト運用中のBW/JA1CTB局

そんな状況でしたが、半ば諦めていたコンテストができるということで、呼んできていただけることにいつもより数倍感謝しつつ、一所懸命にランニングしていました。

コンテストは、ノイズが意外と大きくて、受信が厳しかったです。去年の金門島では、まだドカンと開けたりして強い局を相手した時間が長かったけど、今年は開け方が弱くて、弱い局がチョロチョロっと呼んでくれただけで、修行のようでした。

アンテナはまあまあのビームを抜群のロケーションに上げたと思います。準備も早く進み、内心結構期待していたのですが、電離層のコンディションは、今年はガックリと落ちてしまって、14MHzでなんとか近隣中心にランニングするのが精一杯でした。21MHzも冴えなくて、JAにやっと飛んでいたぐらいかと思います。

そのため、SSBはほとんど出られず、CW中心でなんとかランニング続けていた感じです。期待していたJAからの大パイルアップは不発でしたし、北米も指折り数えるほどしかできずで、夜中ずっと呼ばれるはずのヨーロッパは、弱いオープンなためか、こちらの指示がビシッと伝わらず、なかなか1局に絞る事ができず、もたつきました。

ハイバンドがダメな分ローバンドが良いことを大いに期待しましたが、今回はサッパリでした。もしかするとアンテナが不調だったかもしれませんが、ローバンドは台風のため傾斜型Folded DP一本だけしか上げられず、それも強風でクルクル捻られまくって、ついには高SWRになる事態が頻発、どうしようもありませんでした。結果的には、ギリギリ参加し途中強風でリタイアとなりましたが、準備から強風の中での決死のアンテナ撤収まで、大いに楽しみました。冴えないコンディションと意外に大きなトロピカルノイズも、大した苦には感じないほど変化に富んだコンテストでした』との感想でした。


台風接近のため、あえなくコンテストは中断。リグとアンテナの撤収中

●台湾からのIOTAコンテスト2017参加のまとめ
とは言えコンテストにも十分に参加出来ず、フェリーが動き出すまでの3日間、島から出る事も出来なかった私たちが、何も出来ずにつまらなかったかと言えば、決してそんな事はありません。暗がりの中でもD-starやEchoLinkでは交信も出来て、興味を持たれた人には教え合ったり、また、他の国の非常通信についての情報交換等、有意義に過ごす事が出来ました。それに台風の最中にカメラを持ち出し荒れる海を撮ってみたり、お酒を片手に和気あいあいとアンテナの話からちょっとここでは書けないような事までいろいろ話をしたり、島内観光や挙句には写真大会まがいの事までと楽しく思い出に残る2017年IOTAコンテストでした。


(左)メンバーみんなでワイワイとお弁当を食べながら雑談中、(右)小琉球島観光も楽しみました


(左)霊山寺、(右)望海亭から見た景色

2つの台風のせいでコンテストどころかフェリーも止まり島から出る事も出来なくなってしまい、一部メンバーは帰国便の変更等に苦慮していましたが、私たちは帰国前に観光もしたいと思い日程に余裕を持たせていましたので事なきを得ました。最後に台風の時期は今回のように船や飛行機が運航停止することも有るので、可能ならスケジュールに余裕を持たせた方がいいでしょうね。来年も台湾とパラオを、すでに計画中です。少しでもIOTAチェイサーさん達にサービス出来たらいいなと思っています。

以上、今月はJO3LVG 桂さんに、IOTAコンテスト2017体験記をレポートして頂きました。それにしても海外運用にはハプニングが付き物ですね。BV0Lチームも大変だったと思います。台湾は親日国でもありますし、比較的日本から近いので、お気軽な海外運用も楽しめます。桂さんのように離島へ渡りましたら、IOTAでは台湾本島よりも珍しい島となりますので、コンディションさえ良ければ海外のIOTAチェイサーからたくさん呼んで頂けます。離島に宿泊施設や電源があるようでしたらコンテストに参加するのも、島は電波が良く飛ぶので楽しいのではないでしょうか?ぜひトライしてみて下さい。これを機会に桂さんも本格的にIOTAへ参入して頂けたら嬉しいです。JAのYL局もどんどんとIOTA移動へ出かけて頑張ってくれています。桂さんは3年連続で台湾の島からIOTAコンテストに参加してくれていますし、今シリーズ第3回目に登場頂きましたYL局、森本さんもAS-117などへたびたび移動してIOTAサービスをしてくれています。私Mamiも、ヘボながらもV6 IOTAへの挑戦を続けています。今後は、YL局も参入してもっともっとIOTAが盛り上がると嬉しいです。世界に羽ばたくJA YL局を代表して素敵なレポートありがとうございました。次は読者のみなさまが離島より電波を出して頂けるのを楽しみにしています。皆様のIOTAアワードへの参加をお待ちしております。よろしくお願いします。

来月は、とうとう12回連載の最終回となってしまいました。IOTAを最初にJAに紹介したメンバーのお一人であるJA3AER 荒川さんに、アンカーとしてIOTAの歴史を総まとめにした記事をご執筆頂く予定です。きっといつになったらご登場頂けるのか?と荒川さんの記事を心待ちにしていた局長さんも多いと思います。どうぞお楽しみに!

IOTA申請に関する情報は、IOTA CP JAのJA9IFF中嶋さんが日本語でHPを開設しています。ご質問・お問い合わせはお気軽に!
http://www001.upp.so-net.ne.jp/ja9iff/iota.html
☆IOTA WebのHPがリニューアルして変わりました。新たな登録方法はこちらから↓
http://www001.upp.so-net.ne.jp/ja9iff/web/manual2017_r1p2.pdf

(※1)IOTAコンテスト
RSGB IOTA Contest Committeeの主催。毎年7月末の週末に実施されます。
12時間と24時間参加を選択できるなど島運用に優しいプログラムです。
599+シリアルナンバー+IOTA番号と、長い交換レポートが特徴。
提出されたコンテストログは10年程遡ってそのままIOTA申請に利用できます。

(※2)台湾の離島IOTA
BV-IOTAの状況について
台湾本島とDXCC別エンティティのプラタス諸島を含む6つのIOTAで構成
(AS-020、AS-102、AS-103、AS-110、AS-113、AS-155)

(※3)FCC試験(米国アマチュア無線資格試験)
アメリカのアマチュア無線の資格試験は、アメリカ国内だけでなく、アメリカ以外の国でも行われており、アメリカ国民ではない方でも、受験し合格することでアメリカのアマチュア無線資格を得ることができます。(試験問題はすべて英語で出題)
試験は、日本各地でVEC(ボランティア試験官の団体)が行っています。私、MamiもAH0YLとしてVE活動に参加しております。私の参加チームは「ARRL VE神戸」です。受験に必要な手続き、必要書類や受験料などに関しては、こちらのWebサイトへ↓
http://www.ve-kobe.info/

(※4)西ハム(西日本ハムフェア)
毎年3月に福岡県にて行われますハムフェアです。私はまだ参加したことありませんが、毎年満員御礼の楽しいハムフェアだそうです。九州近辺の各局さま、一度覗きにいってみては如何でしょうか?来年は3月4日(日)の開催です。
http://www.jarl.com/nishiham/

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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