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Masaco、大人の社会科見学!

第2話 シャープミュージアム

みなさまこんにちは。筆者のエリーです。1月号の「Masaco、大人の社会科見学!」のコーナー、楽しんでいただけましたでしょうか。第2話では日本を代表するあの超有名企業「SHARP」(シャープ株式会社)のミュージアムを訪れた際の様子をご紹介します。

月刊FB NEWSではお馴染みの「海外運用の先駆者達」の筆者荒川さんには、2013年の創刊号から現在に至るまで長期に渡りご協力をいただいています。今回の取材は、その荒川さんのご紹介で実現しました。

荒川さん(以下、敬称略):エリーさん、新コーナーを始めたそうですね。訪問先にもし困ったら、私の伝手でシャープミュージアムをご案内できますので、いつでも言ってくださいね。

エリー:「海外運用の先駆者達」のコーナーを拝読していますので、荒川さんが昔シャープにお勤めだったことはよく知っています! ちょうど次の訪問先を決めるのに悩んでいたところなので、是非お願い致します。(ラッキー!)

荒川:年に数回、学生さんが団体で見学に来られたときには、説明員としてボランティアで参加しているんです。昔懐かしい家電が並んでいるので、きっと楽しんでいただけると思いますよ。

というわけで、2月某日、奈良県天理市にあるシャープミュージアムにお邪魔しました。詳しく案内をしてくださったのは女性スタッフの藤原さんです。ミュージアムには数多くの展示があり、創業の歴史から製品の技術進化の過程、あまり世に出ていない貴重な製品、そしてIoTなどの最新技術まで、しっかりと見ごたえのあるミュージアムです。Masacoさんもつい熱中していまい、この日の取材は3時間強にも及びました…! 本記事ではその中から抜粋して、藤原さんや荒川さんとのお喋りに花が咲き、楽しそうなMasacoさんの様子をお届けいたします!


左から、シャープOBの藤林(JO3QVT)さん、同じく荒川(JA3AER)さん、Masacoさん、スタッフの藤原さん。
本日は宜しくお願いいたします!

シャープの創業者、早川徳次氏とシャープペンシル

シャープの創業者である早川氏は、明治に生まれて間もなく両親を亡くし、養子として育てられました。とても貧しい幼少時代を過ごし、わずか8歳で金属加工の仕事を始めたり、関東大震災で大切な家族と工場を全て失ったりするなど、数々の苦難を乗り越えてきたそうです。しかし、過酷な過去を必死に生き抜いた創業者の辛く苦しい人生があったからこそ、いつの時代も不屈の精神力で最先端の技術・製品開発を行ってきた、というわけなのです。

早川氏が、海外製の繰り出し式鉛筆を頑丈な金属軸を用いて改良したものを「早川式繰出鉛筆」と名付け、それが後に「シャープペンシル」として販売されました。幼いころから培ってきた金属加工のノウハウが投影されています。そんなシャープペンシルですが、筆からやっと鉛筆に持ち替えた頃であった発売当初(大正時代)の日本では、すぐに取り扱ってもらえなかったようです。「こんなもの売れませんよ、もっと良いものでないと…」と問屋に言われた早川氏は、取り上げてもらえるよう、様々な付加価値をつけたシャープペンシルの試作品を開発しました。その数、36種類…! 売れない、と言われて諦めるどころか倍返しにしてしまう、逆境に屈しない精神がうかがえます。従来のものよりも壊れにくく高品質なシャープペンシルは海外での需要が高まり、やがて日本国内でもその良さが認知されるようになっていきました。


様々な付加価値のつけられたシャープペンシル。
ハサミや方位を示すコンパス、万年カレンダー、体温計(!?)などが付いています。


こちらはアメリカ、ニュージャージー州の古美術店で発見されミュージアムに寄贈された、
輸出モデルのシャープペンシル。レトロでオシャレですね♪

日本初のラジオ

さて、本記事をお読みのアマチュア無線家のみなさまは、日本で初めてラジオを製作したのはシャープだった、という事実をご存知でしょうか。

日本でラジオ放送が始まったのが1925年。その少し前、偶然ラジオの試験放送を聞いた早川氏は、これからはラジオの時代だ! と直感的に思ったそうです。輸入ラジオを手に入れた早川氏は、分解して中を見てみるとラジオが金属加工された部品で構成されていることに驚きました。幼いころから働きに出ていたため、ラジオに関する知識は全くなかったそうですが、「部品を金属で加工する技術はある。もしかしたら自分でも作れるかもしれない。」との思いから製作に着手しました。その結果、検波器に鉱石を使用した「鉱石ラジオ」の製作に日本で初めて成功しました。また、ラジオを聴くだけでなく組み立てる面白さを日本に広く普及したいとの思いから、ラジオキットの販売も行いました。後に開発したパソコンにおいてもキット販売を行い、アマチュア無線家などにも喜ばれたそうです。

藤原さん(以下、敬称略):実は私もその昔、アマチュア無線家になりたかったんです。アマチュア無線家の方が、英語で世界中の局と会話をしているのを見て、とてもかっこいいなと思いまして。でも、結局免許取得には至りませんでした。

Masaco:そうだったんですね! では…今からどうですか♡

荒川:今からでももちろん無線家を目指せますよ。

藤原:国家試験は難しいと聞きますが…大先輩の荒川さんに教えていただいちゃいましょうかね♪

エリー:Masacoさん、すっかりハムの人ですね! (笑)

シャープでは「良い製品を作るには良い部品から」という信条を基に、ラジオの部品の製造・販売・輸出も行っていたそうです。


早川式バリコン。金属が決して接触しないよう精密に加工する技術は、早川氏が幼少期から培ったものです。

藤原:Masacoさん、突然ですがクイズコーナーです! 早川のアイディアでラジオの大量生産ができるようになりました。さて、そのアイディアとは?

A 手先の器用な人をたくさん雇った。
B 生産を流れ作業にした。
C たくさんラジオを組み立てた人に特別ボーナスを支給した。

Masaco:ええと、シャープは大阪の会社でしょ…関西人やったら「C」かな…と一瞬思ったけど「B」!

藤原:正解です! 「間欠式ベルトコンベア方式」というものを早川自らが考案しまして、部品の組み込みに必要な時間を正確に計測し、部品を組み込むベストなタイミングでコンベアを停止させるようにしました。

この「間欠式ベルトコンベア方式」を採用したことにより、わずか1分ほどで1台のラジオが完成したそうです。今では当たり前の話ですが、これによってラジオの大量生産が可能となったことは大変大きな功績ですね。


シャープミュージアムでは、突然クイズコーナーが始まります。

ラジオの次はテレビ、それから電子レンジもシャープが一番乗り!

ラジオの次はテレビ! ということで早川氏が早くもテレビについて考えを巡らせ研究をスタートしたのは、戦前にラジオが普及し始めた頃からだったそうです。ところがその研究は第2次世界大戦で中断され、戦後もアメリカに研究を禁止されたために国産テレビ第1号として製品化に至ったのは1953年でした。

荒川:僕が入社してすぐの頃、よくテレビの修理にお客様のご自宅へ行きましたよ。初任給が高卒で5,400円の時代に、最初のテレビが175,000円しましたので、テレビのあるお宅はまだ少なく、だいたいの住所を聞いておくと、大きなアンテナのある、大きな邸宅を目印に簡単にたどり着くことができたものです。


こちらはシャープ初のカラーテレビ。重さはなんと78 kg!
シャーシも変圧器も重く、真空管を使用しているため部品の運搬や修理がとても大変だったとのこと。

日本で最初の電子レンジは、高島屋のレストランで使用されました。しかし「いつ出来上がったのかわからない」というクレームが来てしまったため、自転車のベルからヒントを得て、出来上がったら“チン”と音がなるように改良されました。電子レンジの「チンする」はこのクレームの一件からきていたのですね! 周波数はこの頃から今と同じ2.4GHzだそうです。また、ムラ焼けを防ぐためにターンテーブルを付けたのもシャープのアイディアということです。

藤林さん(以下、敬称略):私の隣の部署では電子レンジでピーナッツを温めて、それをひたすら食べて仕上がりを見る、ということをしていました(笑)

Masaco:わ~ピーナッツばかりだとしんどいですね…どんな製品にも私たちが想像しないような開発裏話があるものなんですね。


第1号電子レンジを見て思わず「めっちゃ大きい~~!」と、Masacoさん。

ちょっと不思議(?)な家電たち

それでは、シャープミュージアムでMasacoさんが見つけたちょっと不思議(?)な家電をいくつかご紹介します!


計算機を信用できない! という人のためのそろばんと計算機が一体となっている「ソロカル」(手前)と、
目の不自由な方も使用できる世界初の“喋る”電卓。(奥)


ひげドラ!? 髭剃りとドライヤーが一体となっています。出張や旅行に気軽に持って行けそうですね。


ラジオのラ、テレビのテ、カセットのカ、そしてコンピューターを全部まとめちゃおう!
機能盛りだくさんのラテカピューターもありました。

何かと何かを合体させて多機能にしてしまうシャープさん。ユニークかつ多岐にわたる技術力をお持ちなのですね~。

宇宙までカバーするシャープ製品

日本の人工衛星に搭載されているほとんどが、シャープ製の太陽電池を使っているそうです。宇宙空間に存在する放射線を浴びても壊れない、高品質で信頼性の高い宇宙用太陽電池はJAXAから唯一認定されているものとのこと。そしてなんと、展示の中にアポロ4号が打ち上げられた時の熱防止板の破片もありました! 大気圏に突入して焦げて墨になってしまった表面部分は、実は意図的なものだそうで、全体が蜂の巣構造になっているため摩擦熱から中の機器を保護する仕組みとなっています。


太陽電池の展示。青い光がとても綺麗でした♪


アポロ4号の破片。宇宙のロマンを感じてしまいました。

環境に配慮した製品づくり

環境先進企業を目指している、というシャープは、使い終わった家電製品のプラスチックのリサイクルも率先して進めてきました。その他、工業廃液処理において化学薬品を使わない環境に優しい方法も生み出したそうです。これは広島県の半導体製造工場の排水処理の例ですが、マイクロナノバブルという直径1万分の1ミリの小さい泡を用いて工場排水中に含まれる酸素を増やし、微生物の活動を活性化することによってアルカリ性だった排水を酸性へと変化させます。さらに、土地柄消費が多い牡蠣の殻をその酸性水で溶かすことによって中和し、排水を綺麗な水へと浄化する仕組みです。処理後の水で実際に魚の飼育をして、安全性も証明されています。排水も牡蠣殻も両方まとめて処理できる非常に画期的な技術だということです。

そんなシャープの環境技術が素晴らしいと耳にしたとある国の皇太子様は、こちらのミュージアムを訪れたことがあり、展示を見てシャープの環境に対する数々の取り組みに感銘を受けられたそうですよ。


工場排水が処理されていく過程の説明を受けるMasacoさん

Masacoさんのスマホは…

取材中に気づいたのですが、Masacoさんの持っているスマホはシャープ製だったのです!

Masaco:さすが液晶技術で世界の最先端を走り続けるシャープさん、画面表示が鮮やかで本当に綺麗です! 歌手という仕事柄、写真を撮る機会が多いのですが、レコーディング中の様子やライブ後のメンバーとの写真はもちろん、FB NEWSの取材で全国各地にお邪魔した時のご当地グルメなどなど…このスマホで撮影していつもSNSに投稿しています。ということで、私がスマホを選ぶときの基準は“写真が綺麗に撮影できるかどうか”なんですけど、ダントツでシャープ製が良かったんです!

藤原:そうでしたか、ありがとうございます。液晶事業本部が発足したのは平成3年なのですが、以来研究に研究を重ね、薄型、軽量、ハイコントラストを実現し、常に進化し続けている当社の液晶技術は、他メーカーと一線を画すると自負しています。そしてそのAQUOSスマートフォンですが、内蔵のセンサーにもこだわりをもって開発しました。


Masacoさんお気に入りのシャープ製スマートフォン

日本の携帯電話に初めてカメラを搭載して、“写メール”を普及させたのもシャープだそうです。今では手のひらに収まる筐体で、写真撮影、WEB閲覧、アプリゲームなどたくさんのことができるようになりましたが、このミュージアムで見てきた巨大なテレビやパソコンがベースとなっていると思うと感慨深いです。たった数十年ですが、技術の進歩って本当にすごい! ご紹介しきれない面白い展示がたくさんありますので、この記事をご覧になったみなさま、是非シャープミュージアムへ遊びにいってみてくださいね!

最後になりましたが、今回の取材を実現してくださった荒川さん、ミュージアムでしか聞くことのできない数々の歴史や開発裏話を教えてくださったスタッフの藤原さん、藤林さん、月刊FB NEWSに快くご協力いただきましたスタッフの皆様、本当にありがとうございました!


たくさんの発見とユニークな技術との出会いがあります!
みなさん、シャープミュージアムへ遊びにいってみてくださいね!

■シャープミュージアム
〒632-8567 奈良県天理市櫟本町2613-1
TEL. 0743-65-0011 FAX. 0743-65-3883
メール tenrimt@list.sharp.co.jp
【開館時間】平日9:30~16:30
【休館日】土・日・祝日及び会社休日

その他詳細については下記URL参照。https://corporate.jp.sharp/showroom/tenri/index.html

(第2話 おわり)

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